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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
其れは、紅く燃える強者の大陸
200/237

閑話 アナザー・ユニット

気付けば200回という事で急遽用意した話。

前後の繋がりは特にありません。

久し振り、ノリと勢い、その他諸々、以上の要素によって出来ております。

 とある時間、一人の狐人が場違いと思えるような薄暗い空間の中に居た。


 其処は自然などのグラフィックも無ければ野性を思わせる演出も無い。有るのは電子的なエフェクトだけ。其処は『ゲーマーズ・ドライブ』の中に有りながらプレイヤーが訪れる事が出来ない侵入不可空間の一つ。言ってしまえば運営側が所持していながら公開していない空間。


「ふむ、以前に比べれば少しずつではあるが絆を紡ぐ者も増えているようじゃな」


 狐人はその空間に映し出されている幾つものモニターを介して電子世界に散らばる者たちのデータを閲覧していた。狐人からすれば興味があるのは世界を渡る者ではなくその者たちが出会う獣の方であろう。自身も手を出すことの出来る分野。


「…それにしても、タマゴも実装されておると聞いたがあまり見ぬのぉ。此れはどうにかせぬといかんか?」


 タマゴ、其れは食材の事では無くゲーム内でエネミーが生まれるアイテムとしてのタマゴである。手に入りさえすれば初心者でもエネミーを仲間にすることが出来るのだが確定で仲間に出来る為に調整として入手法は少し限られた状態にあるのだが、其れが実装を疑う程に表に出てこないのである。現在の従者持ちはプレイヤーの全体から見てもまだ一割にも満たない。繋がりを見たい狐人としては手を加えたい部分であった。


「しかし、下手に動くと面倒だからのぅ」


 基本的にイベントとして動いている身であるが、全てが全て運営発案ではない。大幅なシステム変更が無ければ自ら企画して反映させている部分もある。そもそも運営自体が盛り上がるのならと了承している部分があった。しかし度が過ぎれば当然ペナルティは与えられる。恐れているという訳ではないがそうなるのは面倒とは思っていた。


「さて、何処まで手を出せるじゃろうか…」


 そう考えながら狐人はモニターを眺める。其処には単なるデータではなく現在進行形で進んでいる世界の様子が映し出されており、其処には当然エネミーの行動もそのまま映されている。狐人は探していた。管理下に置くことは出来ないが把握はしておく為に従者となれる可能性を持ったエネミーを優先して映し出してタマゴを探していた。だがそう簡単には見つからない。


「ぐぬぅ…やはりそう簡単には見つからぬか。」


 軽く見ただけで見つかっているぐらいならプレイヤーがとっくに獲得しているだろう。その程度なら困りはしない。現に、現在従者を所持しているプレイヤーの殆どは出会いによるものだ。タマゴを見つけるより出会いに任せた方がまだ可能性は高い。実装が試験的という部分がまだ残っている事もあるが、やり過ぎでは無いかというぐらいに限定されていた。


「…なんじゃ、珍しいものが迷い込んで来たものじゃ」


 そんな時、その空間に来訪者が現れた。この空間に入れる者は限られており入ってくる者は必然的に同種以上の存在となる。現れたのは人型ではあるが人間では無く、縮小させたようなサイズの小さな妖精。姿からして『ゲーマーズ・ドライブ』の関係者である事は間違いない。


「お叱りと言った所か?」

「…何をしているの?」

「何、傍観者に徹していただけじゃ。最近役目が無いのでな」


 嘘は言っていなかった。色々と覗きはしていたが肝心の手段がまだ無かった為に手は出されていない。正確に言えばまだ未遂の状態。とはいえもう少し遅ければ何かはしていただろうが。

 しかし、妖精の方は其れについて咎めるような動きは無かった。そもそもそのような役目など無いのか、訊いておきながら其処まで興味がない様子であった。


「モニター…」

「あぁ、世界の様子をな」


 そう言うと妖精も其方へと興味を向けてモニターに映された電子世界を見た。其処には相変わらず従者となったエネミーの姿が映し出されている。かなり偏った光景であったが妖精は其処に映し出されている者たちを静かに見ていた。その様子だけでは何を考えているか察する事は出来ないが、とある光景だけ長く見ているようであった。其処には獣系の姿を持ったプレイヤーと鮮やかな色をした鳥型の従者が映っていた。


「…一つ訊くが、汝じゃろ。タマゴを世に出したのは」


 唐突な問いに対する返答は無かった。其程に魅入っているのか。いや違う。否定する必要が無いのだ。現在従者を持っているプレイヤーの中で唯一タマゴからエネミーを孵した者がおり、そのタマゴを与えたのが此処に居る妖精、アリーフェなのだ。


「まあ其れを持ち出した事を責めるつもりはない。寧ろ望ましいことじゃ」


 狐人からしてみれば責める要素は何処にもない。それどころかタマゴの入手率をどうにかしたい身からすれば、タマゴを与えた事のある妖精は探していたものに近いと言える。


「して、提案があるのじゃが」

「?」

「身構えずともよい。今タマゴについて悩んでいてな。少し助力をじゃな――――」


 狐人の提案という名の誘いに妖精は断ることは無かった。断る理由が無いというのもあるだろうが、了承したのは誘いの中に含まれていたとある話のところが多いだろう。


 こうして秘密裏にとある計画が立ち上げられたのだった。…恐らく運営側は気付いても普段のように放置しそうなので隠す必要性は低そうだが。






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