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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
初めてのVRMMOと始まりの大陸
20/237

20 旅は道連れ、世は情け*


「…そういえば、こんな終わりだったわね…」


 事前に予定を合わせて三人でログインすると特に飾り気の無い空間だった。それもその筈。前回は先輩が取り出した簡易テントというセーフゾーンでログアウトしたのだから。


「どこまで行ったんだっけ?」

「ダンジョン越えの途中」


 簡易テントの入り口を開いて外へと出ると、中とは打って変わって自然の中。皆が出た後のテントは先輩の操作によってアイテム欄へと仕舞われたので、改めて中央へと向かう。


「えっと…確かこっちから来たから向こうに行けばいいのかな…?」

「えぇ。合ってるわ」

「今日中に中央に着いておきたいなー」


 近くの水の音や何処かからの生き物の音を聞きながら森の中を進む。道中でも当然ながらエネミーは出るが苦戦する程のものは出ないからサクサクと戦闘が終わる。余裕すらある。やはり経験者の先輩がいるのが大きい。


 余裕を保ちながら進んでいる間の話題は自然に目的地の事になった。


「そういえば中央の街ってどんなところなの?」

「中央は、恐らくこの大陸では最もプレイヤーが集まっているとされる場所で、プレイヤーが経営するお店もかなりあるわ」

「へぇー」

「まぁ、そこそこ腕が上がるとお店をNPCに任せて他の大陸に移る人も多いのだけど」


 其れもそうか。プレイスタイルは人それぞれと言っても、先がどんどんと進んでいく中でずっと同じ場所に居れば置いて行かれるのは目に見えている。商売という点でも進んだ方が客を保ちやすい…かもしれない。


「そうなんだ…。ねぇ、そういえばお店ってどうすれば持てるの?」

「確か…開くお店に対応した〈技能スキル〉か手続きが必要だったと思う。その辺りはあまり詳しくは知らないけれど」


 対応するスキルか…。確かに、現実でも全くの素人が経営する場所より、その道の人が経営するところの方が信頼が出来る。実際の質は兎も角として選択時の要素にはなる。スキルが必要というのもそういう事なのだろう。


 商売の話をしている間にも、出口が近づいてきた証拠なのか、初めよりも幅が広い場所が少しずつではあるが多くなってきた。それでも道を分断するように川が流れていたりする時があるけども、関門と聞いていた割には思っていたより難しくない。精々、川に気を付けるぐらい。



――――――!



 そんな考えを切り裂くように何処かから悲鳴のような音が響いた。聞こえた音の質からしてプレイヤーで間違いないだろう。此処で危険要素は川だけの筈だけど今の感じからして川に落ちたとは思い辛い。もしかすると……


「今、何か聞こえなかった?」

「…えぇ」


 Akariたちにも当然ながら聞こえていたようで緊張が奔る。

 音の正体を探ろうと周囲を探してみたが、此れと言って何もなく平和だった。襲撃などが無いのなら早く抜けてしまおうと思って再び歩もうとした。すると後ろからまた何かが聞こえた。更に少しずつ音が大きくなっている。


「どいてどいてーーー!!!」


 後ろを見ると、二人の獣人が一人のエルフを引っ張りながらこちらに爆走していた。障害物があるにも関わらず其れを感じさせない獣人の足の速さを活かして一直線に。その後ろからは…


「何アレ…」

「猪」


 そう。三人のプレイヤーを追っていたのは紛れもなく猪だった。それも大きな。だけど猪の割には牙が発達し過ぎていると言いますか…



―――――――――――――――


マンモスボア / Lv 10 (レア)


―――――――――――――――



 レアって書いてあるのですが其れは。


「猪なのは見れば分かるけど!あんなの居たの此処!?」

「とりあえず私たちも逃げよう」


 此処は殆ど一本道。このままだと巻き込まれるのは火を見るよりも明らか。避けようにも周りは草木だから視界に入ってしまえば諸共絡め取られる可能性がある。現に猪は木を幾つか薙ぎ払いながら進んでいる。あの大猪のレベルを考えれば先輩ぐらいなら勝てそうだけど、あの勢いの大猪とぶつかればそんなの関係無く押し負けるだろう。ならもう走るしかない。


「なんでこうなるのさ!」

「戦うにしてもあの勢いだと轢かれるのがオチでしょ!」

「なら詠が弓で撃てばいいじゃん!それか魔法で!」


 成る程。この状況で弓を構えるのは厳しいけれど術系なら弓程構える必要が無いから使える。其れならと走りながら意識を大猪へと向けてスキルを起動する――――


「《ファイア》!」


 大猪の足下に発生した炎は足を伝って全身へと広がり大猪は悲鳴を上げる。…だけどこの攻撃によって大猪の怒りを買ってしまったようで、大猪は目を赤くしてさらに加速する。…しかも炎を纏いながら。


「余計危なくなってるよね!?」

「ごめん!」

「ああいうモンスターは弱点性質の攻撃を受けると一時的に能力が上昇するの」


 それ先に聞きたかったです!

 まさか炎が残って攻撃に転化されるなんて誰が予想出来るだろうか。此れまでの敵でそのような事は起きなかったのだから。


「…ッ、あそこ!」


 先輩が示した先には十字に道が分かれていた。


「あそこで何とかするからそのまま走って」

「わ、分かりました」


 すると先輩は私たちより先行して十字に分かれた道を右に回る。私たちは先輩の言う通りに曲がったりせずにそのまま素通りする。後ろから来ていた三人のプレイヤーも状況を知ってか知らずか真っ直ぐに通り抜けた。


「「「わぁぁぁぁぁぁ!!!」」」


 そして大猪が前を追って通りかかった時、突如として紅い光が奔った。


「Grrruuuuuuuu!」

「―――《ブラスト・ビート》!」

「Grrruuuu…gyru!?」


 刀剣から一直線に放たれた数多の炎の弾丸が見事に大猪の横腹に命中し、その衝撃で向かいの道へと吹き飛ばし、燃え上がる。


「先輩、大丈夫ですか?」

「…まだ」


 十字路まで戻ってくると先輩は戦闘態勢に入っていた。大猪はまだ倒れてはいないのだ。弱点を突いたとしても先輩は未だに攻撃力が低いので仕留めきれてはいないことを分かっているからだろう。


「Gruruuuuu!」

「まだなの!?」

「Akariとりあえず前はよろしくね」

「えー、まあやるけどね」


 Akariは前へ出て注意を引き、私が弓矢で援護する。先輩は今回援護に回るらしい。先程の攻撃といい、先輩は接近戦も魔法もどちらでも出来るようだ。


「行くよ…?」

「その前に保険…《フェアリー・オーラ》!」


 Akariがそう宣言するとその身体にオーラを纏い、服の色が少し緑に近い色になる。あれが先日言っていた一度だけダメージを無効化するスキルなのだろう。準備万端と言うことか。


 大猪が炎を振り払い、私たちに狙いを付け直したことで戦闘が始まる。


 私と先輩が後方から矢や魔法で牽制しながら、Akariが反撃を気にせずに先頭で斬りつける。完全と迄はいかないけれど上部より足を狙えば動きを妨害し易く、十字路の真ん中で戦っている為、躱すのも先程よりかは左右に良ければ良いからやりやすい。ただチクチクと妨害しているからか大猪の敵意は殆ど後ろの私たちに向けられている。前衛のAkariとしては遠慮無く側面に攻撃を入れられるようだけど、既にダメージ無効化を使ってしまっているので危なっかしい。


「あの…私たちも手伝います!」

「元は私らが連れて来たものだから」

「役に立てるか分からないけど頑張ります!」


 私たちが大猪と戦闘を行っている事に気付いた三人のプレイヤーも戦闘に加わった。三人は魔法をメインにしているようで、揃って杖を構えては火や電撃といった魔法を大猪に対して放っている。皆、威力としては其処まで高くはないけれど人数が増えるのはありがたい。ただ…


「先輩」

「…そうね。私も前衛に回るわ」


 同じことを思っていたのか、内容を言わなくても承諾してくれた。


 牽制を止めて駆けだした先輩はすぐさま別のスキルを発動させ、刀剣は黄色い閃光を纏う。先輩がよく使っている技〈スパークル・エッジ〉だ。正確無比に繰り出されたその技は大猪に隙を生ませ、その隙を逃さないために皆は一斉に攻撃した。


 人数が増え陣形も変わったお陰で、攻撃が飛んでくる回数も減り順調にHPを削っていく。そしてようやく大猪が光となって消滅した。これで脅威は去った。


「えっと、巻き込んですみませんでした」

「ほんと疲れた」

「ごめんなさい。えっと…私は"るる。"って言います。種族はエルフです」

「"わんたん"でっす。種族は猫人ぉ」

「私は"たんぽぽ"。種族は"兎人"です」

「私は"鬼"で"Akari"。それであっちが"詠"と"せんな"先輩」


 なんとも雑な紹介である。

 頭の上にうっすら見える表記からするに"るる。"って"。"までが名前なんだ?某隊長みたいな感じかな?…それだと完成形になるか。


「先輩って同じ学校の人とかですか?」

「そうそう」


 共に戦闘を乗り越えた縁もあって、気付けば世間話が始まっていた。此処エネミーが出る事を忘れてないだろうか。


「私たち、この先の街に向かっているんです」

「これが結構遠くてさー」

「え、中央に?私たちも向かってるところ。良かったら一緒に行く?」


 Akariが勝手に話を進めて街まで一緒に行くこととなった。まぁ多い方が無事に着ける可能性が上がるからいいのだけど。


 その後、予感があった通り出口は直ぐ其処にあり、私たちは無事に関門越えを成した。…だけどまだ街に着いた訳ではない。





ステータス

未所属

詠 / 狐人

Lv 12

―――

―――

HP: 120 (HP+150) / MP: 210 (MP+300)

STR(攻撃力):15 (STR+16)

VIT(耐久): 16 (VIT+10)

INT(知力): 40 (INT+20)

MND(精神力): 51 (MND+205)

DEX(器用さ): 31

AGI(素早さ): 62 (AGI+10)

LUK(運): 26


BP : 14


装備

「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)

「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)

「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)

「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)

「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)

「ノーマルブーツ」(AGI+10)

「霊宝珠のペンダント」(MP+300、INT+20、MND+200、全状態異常耐性+30%)




ステータス

未所属

Akari / 鬼

Lv 13

―――

―――

HP: 225 / MP: 126 

STR(攻撃力): 54 (STR+23)

VIT(耐久): 43 (VIT+20)

INT(知力): 24

MND(精神力): 26 (MND+10)

DEX(器用さ): 32

AGI(素早さ): 35 (AGI+10)

LUK(運): 15


装備

「銀の刀」(STR+23、MND+10)

「ノーマルシャツ」(VIT+10)

「ノーマルズボン」(VIT+10)

「ノーマルブーツ」(AGI+10)





ステータス

未所属

せんな / 天使

Lv 7

【道を切り拓く者】

―――


装備

「白紙の妖刀 "白月"」






関係ないけど藤岡探検隊に敬礼('◇')ゞ

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