19 初めての野営*
無事五万文字到達。
「今日はもう少し進めます」
「誰に言ってるの?」
「いや、何でもない」
唐突に言った方がいい気がしたんです。
Akariが無事にスキルを獲得した後、私たちは一度ネクスに戻った。其れから食事をしながらこの後の事を決め、雑貨屋で少々の回復アイテムを購入して準備を進める。
何故改めて準備をしているかと言うと、話し合って街を出ようと言うことになったからである。其れも、ただ街を出るのではなくレベルもスキルもある程度増えたのでそろそろ大陸の中央にあるという大きな街へ移ろうということである。
「Akariさん、刀剣武器あるけれど欲しい?」
「え、くれるの!?というかあるならもっと早く欲しかった!」
Akariは先輩から武器を貰って新調するらしい。貰っていたのは今Akariが装備している大剣よりも少し攻撃力が高く、元から持っている【斬撃】性質の他に別の性質をも持つ刀とのこと。少しとは言ったけれど此処迄の店売りの武器の中に此れを越えるものは無かっただろう。ちなみにお古かと思ったけれど最近手に入れたらしい。
「これくらい準備すればいいですよね?」
「そうね」
「それじゃあ次行ってみよー」
準備が整ったと言うことで、私たちは街を出てフィールドを北北東に進む。どうやら今迄居た場所は全体から見て南西付近だったようで、中央は今向かっている方角にあるらしい。ただ、其処に行く迄にはダンジョンのような地形を横切ったりしなければ辿り着けないようで、初心者にとっての序盤の関門とも言われているとか。なのでそこそこのレベルとスキルがあった方が良いという。
フィールドを突き進んでいると、関門の前にエネミーの姿が視界に入った。
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ウルフ / Lv 4
ウルフ / Lv 4
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いきなり現れたと言っても此れまでに見た事のあるエネミーだ。数も少ないからあまり苦戦はしないだろう、等と思っている内にも剣の二人がウルフを翻弄しながら斬り伏せていてあっさりと戦闘は終わった。
「随分とあっさりね」
「どんとこい、超常生物」
またこの子は何を言っているのか。
その後もエネミーに絡まれたりとあったものの、周りの景色は少し変わり、中間地点に到着した。例の関門である。ダンジョンのように入る者を出迎えるような入り口がはっきりとある訳ではないが、微かな地形の変化や聞こえる音が注意力を煽ってくる。
「此処を越えればいいの?」
「そう、此処を通るのが一番の近道」
他を通るという選択肢は存在するようだけど、此処まで来たのだから、覚悟を決めて目の前の地形に足を踏み入れる。
踏み入れた地形について思った事は山道だった。山を登っている訳では無いけれど、通っている道は木々に囲まれており、足下も歩き辛いとまではいかないが石が多かったり傾斜になっているようにも感じる。
「なんていうか、遠足みたいだね」
「今時、日本でもこんな地形は少ないからね。都会に近いところでは特に」
「便利になるのはいいけど、全部そうすればいいってわけじゃないしねー」
まぁ便利になっているから出来た体験ではあるけどね。
見かける動物がエネミーだったりするけれど、現実ではあまり行かないハイキングの気持ちで足を進める。同じように先を目指すプレイヤーも居る事は居るから尚更雰囲気は近い。
「それにしても何か聞こえない?こっちかな?」
「あ、そっちは」
先輩が先頭を歩むAkariに何かを言おうとしているがAkariは止まらず、道を外れて草むらを抜ける。すると…そこに道はなかった。
「おぁっとぉぉぉ!?」
凄い変な声を上げながら飛び出した崖に必死に捕まっていた。
「ほら勝手に進むからでしょ。…ほら大丈夫?」
「うぇぇ……」
Akariを引き上げてから崖の下を覗き込むと、下には流れの速そうな川があった。言われてみれば水の流れるような音はBGMのようにずっと聞こえていた。自然過ぎて深く考えていなかったけど。恐らくAkariが反応したのも水音なのだろう。ちなみに現在地は崖ではあるが其処まで高くなかった。これなら万が一があっても…
「ちなみに川に落ちると遠くまで流されると思う」
前言撤回しよう。万が一も駄目そうです。
「あの流れを何とかできたりしないの?」
「ダンジョンギミックとして緩めたり止めたり出来ることもあるけれど、此処はそういうのではないから。
此れだと転生種族のウンディーネぐらいしか何ともできない。あれなら種族スキルで流れに関係なく泳げるから」
「じゃあ今落ちたら終わりかぁ…」
Akariが助かった事に安堵しながらも何かを考えているようだけど、今さらっと重要そうな言葉が流れていった。
"種族スキル"。転生種族については以前に先輩の種族で知ったけれど、種族スキルは初めて出た。先輩の言葉から考えると基本的に獲得すれば使える〈術技〉や〈技能〉とは違って、種族固有のスキルという事なのだろうか?だとすれば他の種族にも有ったりしそうである。…今度覚えていたら調べておこうかな。
――――ちょっ…まっ…お前のせいだぞ…――――
――――いや…俺は止まったのにお前が…後ろから押すからだぞ!…――――
――――お前が…急に止まるからだろ!…――――
――――お前が!――――
――――お前が!――――
川には注意が必要と分かったところで、何かお手本のように上流から騒がしいものが流れてきた。彼らも別のところで落ちたのだろう。Akariも落ちていたらこうなっていたのか。
「アレ…何処まで行くの?」
「知らない。知人は以前此処で流されて下流にある別ダンジョンまで流されたって言ってた」
「まじですか」
「ちなみに此処から流された方がそのダンジョンへの近道だって」
「…まじですか」
仮に私たちがそのダンジョンに向かう事になったら、わざと流されたりすることも考えられるのか…。何なら正規ルートも現段階では知らない訳だからこのルートしか通れない。…出来ることなら遠慮したい。
とりあえず初めに歩いていた道に戻ろう。基本的に道沿いに行けば越えることが出来るらしいから。
「落ちないでよ」
「分かってるよ。
この川って、よっ、一体何処から来てるの?よっ」
「源泉は…、何だったかしら?」
「知らないのなら、別に関係なく進めるんだねっと」
道沿いに進んで結局川に行き着いた。目的地は川の向こうと言う事で、川から突き出た岩を足場に跳びながら進んでいく。川の流れは先程と変わりないが足場の岩は其れなりに大きいから踏み外すことはない。水で滑り易い事に気を付けて進む。こんなところでモンスターが出なくてよかった。出たら回避のしようがない。跳ぶ前だったら撃ち抜くけど。
そんなこんなである程度進んで、現実の時間も良い頃合いになった時、先輩が止まった。
「今日はこの辺りにしましょうか」
「え、でも此処だとログアウトするのは危なくないですか?」
「そうだよ、敵だって湧くし」
そう言うと先輩はウインドウを呼び出して何かを取り出したかと思えば、道の端まで行っては下を向きながら辺りを少し歩いた。何をしているんだろうとその行動を見守っていると、再び止まって何かを操作した。すると先程歩いた範囲の内側にテントが出現した。
「うわっ、何これ!?」
「簡易テント。指定した小さいエリアをセーフゾーンにすることが出来るの」
先程歩いていたのは此れを設置するためのエリアを指定していたらしい。セーフゾーンになった事でこの範囲の中でエネミーが湧くことは無く、敵に狙われることもないという。此れならエネミーに関しては安全である。
「ログアウトは此の中ですれば良い」
そう言うのでお言葉に甘えて簡易テントの中へと入った。中は外見での印象よりは広くなっている。皆が入ると先輩が入り口付近を閉じていた。此れで他のプレイヤーが入ってくる事は出来なくなったという。また出る時は其れを開けば良いと。
そんな訳で、フィールドとはいえ周りを気にする必要がなくなり、無事ログアウトすることが出来た。次回はまた越えるところから。
ステータス
未所属
詠 / 狐人
Lv 11
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―――
HP: 114 (HP+150) / MP: 202 (MP+300)
STR(攻撃力):14 (STR+16)
VIT(耐久): 14 (VIT+10)
INT(知力): 37 (INT+20)
MND(精神力): 47 (MND+205)
DEX(器用さ): 30
AGI(素早さ): 58 (AGI+10)
LUK(運): 24
BP : 12
装備
「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)
「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)
「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
「霊宝珠のペンダント」(MP+300、INT+20、MND+200、全状態異常耐性+30%)
ステータス
未所属
Akari / 鬼
Lv 12
―――
―――
HP: 218 / MP: 120
STR(攻撃力): 51 (STR+23)
VIT(耐久): 41 (VIT+20)
INT(知力): 23
MND(精神力): 25 (MND+10)
DEX(器用さ): 31
AGI(素早さ): 33 (AGI+10)
LUK(運): 15
装備
NEW「銀の刀」(STR+23、MND+10)
「ノーマルシャツ」(VIT+10)
「ノーマルズボン」(VIT+10)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
未所属
せんな / 天使
Lv 6
【道を切り拓く者】
―――
装備
「白紙の妖刀 "白月"」