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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
其れは、紅く燃える強者の大陸
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175 其れは、紅く燃える強者の大陸

今回から紅の大陸です。


――――――――紅の大陸――――――――




 熱気に包まれながら降り立った場所は緑などが無い険しい場所だった。大地は荒れ果てており所々割れ目すら見える。その割れ目からはガスなのか薄い煙が出ている箇所もある。空を見上げようとしてみれば高い岩山が聳えていたり高い位置の崖が視界に入る。今迄の大陸で比べれば大樹程では無いが建物よりは明らかに高い。そして肝心の空は黒煙が陽の光を遮って薄暗くしていて怪しさを醸し出している。

 平穏とはかけ離れた不穏な景色。そんな景色が目の前に広がっていた。


「此処が紅の大陸…」

「暑いね…」

「なんだか…今迄とは随分と雰囲気が違うような…」

「アー…」


 今迄とは明らかに毛色が違う。同じゲームの中であり、非現実的な景色や住まう種族など同じ世界観ではあるけれど、まるで作り手自体が変わったかのように其処に含まれる要素の比率が変わっている。のんびりしていれば危険な雰囲気さえ感じる。


「このまま此処で居るのも危ないかもね」

「ですが近くに街はなさそうですよ?」

「それ以前に此処どういう場所なの?」


 此処で改めて自分たちの足下を見る。周りが荒れた大地であるのに対して自分たちが居る場所は何かの置き場のように炭化している木材や何かの欠片などが乱雑に放置されていた。着地を考慮したクッションにしては逆に怪我をしそうな中身であるが、只の溜まり場と考えるのは早計か。来たばかりだとどうしても大したことない物でも嫌な予感を感じる。


「…此れ」

「何かあった?」


 たんぽぽが乱雑な残骸の中に埋もれている何かを見つけた。其れは欠けてはいるが何かの生物の頭蓋骨だった。形からして人骨ではない。だけど破片にしても其れなりの大きさがあることは分かる。


「え、なんでそんなのが有るの!?」

「此処が墓場って事…?」

「其れはどうだろうね。その割には違和感があるけど」


 見つかった頭蓋骨だけでなく骨らしき物は意識して探してみれば幾つか見つかった。その大きさは様々で、枝のように細い骨が残骸に混ざっていたり、欠片が地面に埋まっていたりする。だけど墓場と言うよりは別の何かという雰囲気が漂っている。

 落ちている骨は拾い上げようとすると粉々に砕けて風に消えていく。アイテムとして回収する事は出来ない。


「…不吉」

「不吉ってそんな言葉で片付けていいのですか?」

「二人とも静かに」

「どうしました?」

「何か…聞こえない…?」


 自然の力がより強く感じられる環境なだけあって周囲には自然の活性とでも言えるような音が常に響いているが、其れに混じって違う音も聞こえる。その音は徐々に大きくなるだけでなく聞き取れる数も増えていく。


「この音、やばいんじゃない?!」

「一先ず隠れた方が良い」

「そうですねっ」


 正体は分からないが確実に近付いてきている事は確か。はっきりとした方向が判明しない以上、下手に逃げるのは鉢合わせする可能性があって逆に拙いと判断して私たちは近くの岩の裏に隠れて息を潜めた。

 私たちが隠れてから少しして音の正体が此の場所に姿を現した。


「…まぁエネミーよね…」

「…あれって小型の恐竜?…」

「…結構な数…」


 現れたのは、シルエットとしては蜥蜴に似ているが蜥蜴よりも荒々しく発達した両足を持つエネミー。野生味溢れるその姿は恐竜の類いに近い。そんなエネミーが争い合う事無く群れている。



――――――――――――――――――――――


ソルジャーラプトル / Lv 36

ソルジャーラプトル / Lv 36

ソルジャーラプトル / Lv 36

ソルジャーラプトル / Lv 36

ソルジャーラプトル / Lv 36

ソルジャーラプトル / Lv 36


――――――――――――――――――――――



「…如何にも弱肉強食の世界に生きてそうだね。放っておけば仲間割れするんじゃない?…」

「…恐らく其れはない…」

「…其れはどうしてです?…」


 その返答は無かった。いや、言う必要が無かったのか。代わりに其れが現れたのだから。其れはノシノシと大地を踏みしめてこの場へと姿を見せた。先の"ソルジャーラプトル"と似たような外見をしているが其れをより獰猛にしたような姿。先に現れたエネミーが成人男性ぐらいの高さしか無い事に対して頭一つ抜けて高い。見ただけで他を率いている存在だと認識出来るエネミー。 

 


――――――――――――――――――――――


ラプトルジェネラル / Lv 40


――――――――――――――――――――――



 そのエネミー"ラプトルジェネラル"が一度吠えると他のエネミーも躾けられたように集まって同じ行動をしていた。あのエネミーが束ねているとみて間違いない。


「…確かにあんな存在が居れば群れとして機能するか……」

「…どうする?流石に此れは厳しいよ…」


 此方はこの大陸に来たばかりで地形に関してもエネミーに関しても情報が無い。そんな状態でいきなり群れを相手取るのは厳しい。此処は静かに逃走するのが最善かもしれない。

 そう判断して足下や音に注意しながら皆にも逃走を促す。幸いにも自分たちの場所は先程よりは残骸が少なく地面自体も砂利などが少ないお陰で音を抑えやすい。此れならば静かに離れられる。だけど其れを察したのか、群れの中で"ラプトルジェネラル"だけが行動を取った。


「…止まって…」


 其れに気付いて先輩が制止をかける。しかし、"ラプトルジェネラル"は何かを探すように周囲を確認する。そして此方に気付く。


「…やばっ…」


 此方を見つけた後、"ラプトルジェネラル"は空に向かって一際強く吠えた。すると、周囲の"ソルジャーラプトル"が赤い闘気を纏いながら次々に動き始め、一斉に此方へと走り出した。先程の声で指示と同時に強化が為されたようで、"ソルジャーラプトル"の突進は薄い岩くらいなら平気で壊している。


「突進されるだけでもやばいよ!走って!」


 見つかった以上音を抑える事など関係無く私たちは走った。俊敏性に自信の無いメンバーは引っ張って逃げた。どんなに荒れた大地だろうと駆けた。だけど走る事に長けているエネミーである"ソルジャーラプトル"からはそう簡単に逃げ果せる事は出来ない。


「何時迄付いてくるの!?」

「でも纏っていたものは消えていますよ」


 エネミーに付与されていた強化は効果が切れたようで赤い闘気は何処にも無かった。だからと言って速度が落ちる訳ではないが。ただ追いかけてくる影の中には既にリーダーである"ラプトルジェネラル"の姿は無い。どうやら他より強力ではあるが速度に関しては他より劣るらしい。逃げている間に状況は変わり先程よりは少しでも勝率は上がっているだろう。だけど何時追い付いても不思議は無い。


「どうする?このまま走っててもキリが無いよ?」

「諦めって無いの?!」

「よし、飛ぶか」


 このまま直線上に逃げても相手が諦める時が来るのかは謎。其れよりも先に自分たちが捕まるのは確か。それ故に私たちは捕まるよりも先に上空へと逃げる事にした。走る事に長けていても壁を登ることは流石に出来ないだろう………出来たらどうしよう。




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