18 初めての種族制限クエスト(Akari)*
「えっと…奥の方の…他とは違う家…」
詠と先輩と別れて私は静かな村の中で教えられた建物を目指す。何故そんな事をしているか、勿論新しいスキルの為である。まだまだ弱いから取れる物は取った方が良い(実用性は知らない)。
外にあまり住人が見当たらないけど、全員建物の中にでも居るのだろうか。
ところで、先輩はこの場所を"村"と称していたがどちらかというと"集落"の方が近い。まあそんなことはどうでもよく、私は一つの洞穴を見つけた。其処は入口がテープで簡易的に封鎖されていて、その横には村に入って此処までに見た建物の中では造りなどが異なっている物件が。恐らくこれが目的の家なのだろう。
コン コン
「すいませーん。誰か居ますかー?」
扉をノックをすると、中から老いた男性の声が聞こえた。
そういえば音声付きなんだ?こういうのって台詞を表示させて音声はないっていうのがたまにあるのに。VRMMOで急に音声無しになったら其れは其れで困るけど。
「誰ですかな?」
出てきたのは先程の声の感じと一致するような外見の老人だった。
「旅の方ですか。丁度良かった」
老人は此方の姿を見ると、困っていたところですと言わんばかりの反応をした。丁度良かったのはこちらもです。話しかければいいって言われたけどそこまでにどう話をもって行けばいいのか何も分からなかったから。勝手にフラグを建ててくれるのなら助かる。
「いきなりこんなことを言うのも失礼なのですが、少々お力をお貸しくださいませんか?」
ああ多分これだ。はいと答えると老人は話し始めた。
「実は…この集落の奥には祠があるのですが、最近そこに入った者たちが帰ってこないのです。様子を見てきてはくれないだろうか?」
さっきの事件現場みたいに封鎖してたところは祠だったんだ。
…ん?じゃあ何で封鎖するの?祠って神様うんたらな所でしょ?…ってゲームに突っ込んでも意味ないか。これもイベントだ。なんでもこい!
「おお、ありがたい。神様を怒らせないように本来は外の人を入れないようにしているのですが、今回は入れるようにしておきます。ではよろしくお願いします」
塞いでいたテープが無くなって入り口がぽっかり開いて、此れでクエストは始まった筈。他の種族は手助けすら出来ないって聞いた割にはその入り口には番人のような人も居なくて、依頼主も引っ込んでいった。此れなら他の人も入れるんじゃないのって思う。まあ入れないんだろうけどどうせ。
祠への道を覗いてみると思ったよりも暗くて一直線に深く続いている。これは一種のトンネルではないのかな?そんな事を思いながら進まない訳にも行かないからトンネルへと踏み入れる。
歩いていると薄暗いとは言え何も見えないという程でも無い。光が奥まで届いているのか、補正が効いているのか、どっちなのかは分からない。お陰で足下にちらほらと骨が有るのが分かった。
「うわ…」
そのまま進んでいるとトンネルの中にカタカタという音が響いてきた。何事かと思えば、道の端に落ちていた骨が音を立てながら動き出し、進路を塞いできた。
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スケルトン / Lv 4
スケルトン / Lv 4
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エネミー湧くんかい!!といっても敵が出なかったらぬるすぎるけどさ。
骨が動いたことに驚かされたけど、咄嗟に発動したスキルにより光を帯びた大剣が立ちはだかった骸骨を一刀両断する。斬られた骸骨は一瞬でHPゲージが消失し、灰となって消える。
この骸骨、レベル差ってのもあるんだろうけど、防御力が弱い?骨だけだから?もっとカルシウム摂った方がいいよ?
見た目通り?なのか防御力が其程無いお陰でスケルトンの処理に其程時間はかからなかった。というか殆どスキル一発。それからも何度かスケルトンが襲ってきたけど其れも簡単に倒すことが出来た。そして…
「あれ?普通に奥に着いたよ?あれ?」
行き止まりに辿り着いた。
其処は不自然にドーム状に開けた空間で、その中央にはぽつんと祠が立っていた。祠が無ければ何かのフィールドのように…
ドドドドド!
突然地面が揺れ、音が段々と大きくなる。何かが近づいて来る!
そして音と揺れが静まった次の瞬間、祠の真下の地面が弾けた。
「な、な、何じゃこりゃー!?!?」
モグラだった。地面を割って現れたのは大きなモグラだった。
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グラウンドドラゴンと名乗るモグラ / Lv 10
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何かっこよく名乗ろうとしてるの!?
「っとおわっ!?」
モグラはこちらを見るや否や見事な跳躍をみせて押しつぶそうとする。危なげにそれを躱すと、モグラは自分の身体を起こして自身の居た場所を確認して誰も居ないことを判断すると穴を掘って姿を消した。…確認している姿は少しコミカルだった。
「一体何だったの?これで終わり?」
…ということには残念ながらならず、足元の地面が弾け、モグラが奇襲をかけては押しつぶそうとして、再び潜る。どうやらこれがこのモグラの攻撃パターンのようだ。
「此れは面倒だなぁ…」
行動パターンは一つしかないみたいだけど、潜られたら手が出せない。とはいえ、する事が分かっているから奇襲は其程怖くない。少しダメージを受けちゃったけど、地面が盛り上がってから出てくるまでに意外と逃げる時間はあるから避けられるし、押しつぶすのは跳び上がってから方向を変えれないみたいだから走り回ればまず当たらない。問題があるとすれば、その間しか姿を現していないからどうHPを削ればいいのかということ。詠がいれば離れて攻撃していてくれるんだけどなぁ…。
仕方ない。地道に行こう。
その時、地面を割って再びモグラが現れる。
「さぁ来い!」
跳びかかって来たのを避け、確認しているところを斬りつける。モグラは少し体勢が仰け反り、再び地面の中へと潜った。
入った!このタイミングなら何とかなる!
これが正解なのかは分からないけど、少なくともモグラが確認している時は攻撃が通る。其れさえ分かればなんとかなる。
ひたすら避け、チャンスが来ては攻撃を入れる。大剣のAGIマイナス補正が効いてるのか、追い付いて攻撃するまでが少々遅いから連撃を入れることは無理だけど、それでも確実に削ってる。
「これで…っ!」
大きく振り降ろされた大剣がモグラの最後のHPを削り切り、巨体は光となって砕け散った。
「おろ…?」
ポリゴンの光が消えたと思ったら、空間の何処かから光が届いている。辺りを見渡すと、土に埋もれかけている一つの物、モグラが最初にとびだした時に吹き飛んだ祠から光が漏れていた。その光は少しずつ治まり、完全に治まると祠の扉が開き、その中から何かが飛び出して此方に向かってくる。
それに触れると、システムメッセージが表示された。
【ありがとう、あいつを倒してくれて。これで未練なくあの世に行くことができる。これはほんのお礼だ。きっと君の役に立つだろう…】
【スキルを獲得しました】
今のってもしかしてここに入って帰ってこなかったっていう人たち?あのモグラにやられてたってことだったんだ。それでそのお礼っていうのは…
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○フェアリー・オーラ
効果:大地に住まう精霊の力を身に纏い、自身に完全防御状態(1回、効果時間10分)を付加する。完全防御状態の間、1分に付き最大HPの16分の1ずつ回復する。再使用には半日必要。
性質:【神聖】
消費MP:40
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「ほうほう…」
完全防御。再使用の時間を思えば使い勝手は良くないけれど、どんな攻撃も一回だけ守れるのなら、初見殺しにも通用しそうだから保険としては悪くない。オマケ程度に回復も付いているみたいだし。
さて、モグラも倒したし早く戻ってイベントを終わらせよう。
「そうか、そんなことがあったのか。それはすまんかった。…それとありがとう」
老人に報告を済ませ、報酬としてそこそこの素材アイテムと少しのお金を貰った。スキルが報酬と思ってたけど、一応で別で用意してたらしい。
それから村の入り口に戻ると詠と先輩が話してたから合流して、一度ネクスに戻ることにした。お腹が空いた。
ステータス
未所属
詠 / 狐人
Lv 11
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HP: 114 (HP+150) / MP: 202 (MP+300)
STR(攻撃力):14 (STR+16)
VIT(耐久): 14 (VIT+10)
INT(知力): 37 (INT+20)
MND(精神力): 47 (MND+205)
DEX(器用さ): 30
AGI(素早さ): 58 (AGI+10)
LUK(運): 24
BP : 12
装備
「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)
「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)
「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
「霊宝珠のペンダント」(MP+300、INT+20、MND+200、全状態異常耐性+30%)
ステータス
未所属
Akari / 鬼
Lv 11
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―――
HP: 210 / MP: 113
STR(攻撃力): 48 (STR+15)
VIT(耐久): 38 (VIT+20)
INT(知力): 21
MND(精神力): 24
DEX(器用さ): 29
AGI(素早さ): 31 (AGI+5)
LUK(運): 14
装備
「ノーマルブレード」(STR+15 AGI-5)
「ノーマルシャツ」(VIT+10)
「ノーマルズボン」(VIT+10)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
未所属
せんな / 天使
Lv 6
【道を切り拓く者】
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装備
「白紙の妖刀 "白月"」