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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
新年も変わらず
162/237

149 マスタークリエイトイベント 締め

気付けばもうこんな日ですよ……(´д`)

 ドラゴンが去ってから少しして遅れながら通り過ぎていく他のプレイヤーたちを見届けて、私たちは戦闘の後の岩の島で一息を吐いた。

 光球に触れるには一歩足らなかったものの、ドラゴンと対峙したというだけで疲労感は其れなりのものである。フィルメル辺りは其れでも追おうとしていたけれど、レツオウたちに止められていた。勝手に行かせてしまえばまた行方不明になるだろうからある意味妥当である。


「ほう、確かに質は良さそうだ。其れに数も思ったよりは落とした」

「お主には其方の方が良かったらしいな」


 ドラゴンが飛び立った後に残った物をゴードンが拾い上げては回収している。どうやらアレがドラゴンから収集できる例の素材のようだ。そういえばゴードンたちはサポートの為に比較的攻撃を行っていて、攻撃する度に薄い膜のようなものが壊れて散っていた気がする。散った回数に比べると思いの外数はあるようで、岩の上だけでなく、海の上にも浮かんでいた。

 実は其程権限を欲していた訳ではなかったレツオウたち、特にゴードンに取っては此方の方が権限よりも喜ばしかったりする。


「あのドラゴンの鱗…にしては重くは無いのね」


 自分の周辺にも落ちていたので拾い上げてみると、あのようなドラゴンが纏っていた鱗と考えれば、思っていたよりも軽かった。飛行の関係上重りにならないようになっているのだろうか。そもそも此れは鱗という認識で合っているのだろうか?

 鱗らしき物の説明欄を開いて名称を確認してみれば、色々とあるようで、普通の鱗とは違う特殊な鱗のようだった。まあ…光だったからね。



カン―――カン―――



 小気味の良い音が響いて何をしているのかと思えば、カゼマチが鱗を突いていた。いい音が鳴るのが楽しいのか、将又何かを確認しているのか、何度も落ちている鱗を突いていた。

 遊んでいるのだろうと考えて、取り敢えず他の事に意識を向ける事にした途端、カゼマチの方から妙な音が鳴った。


「……」

「え?」

「……アー」

「え、食べたの!?」


 そう言った途端、カゼマチは近くにあった別の鱗を嘴で抓んではそのまま食べ始めた。咄嗟に止めようとすると、食べている最中だった鱗が光へと変換されて、するすると口の中へと流れていった。此れなら喉に詰まらせるという事は無いが、それはそれで謎しか残らない。


「食べて大丈夫なの!?」


 今一度鱗の説明を調べてみたが、素材に使える事は読み取れても食べられるかどうかについては何処にも記されてはいない。それはそうだ。鉱石に似た見た目の物を誰も食べるなんて思っていないのだから。


「食事?」

「いや…どうなんでしょうね…?」


 カゼマチはその後も、欠片を幾つか見つけてはそのままお腹の中に納め続けた。心なしか羽根の艶が良くなった気がしなくもない。


「で、次の策はどうするの?今から追っても追いつけるか分かんないけど」

「さあ、どうすんだろうね」


 イベントはまだ続いている。その証拠にドラゴンの姿は目視出来ている。だけど、休んでいた分、距離は相当開いてしまっている。もう一度待ち伏せをしようとしても戻ってくるのは何時になることやら。


 そんなこんな言っていたけれど、ドラゴンが去ってから数十分ぐらい過ぎた後に、ドラゴンは此の大陸から消失し、イベント終了の合図が響き渡った。と言うことは誰かが光球に触れる事が出来たらしい。

 合図が響き渡った後、始まりのアナウンスと同じような声で締めと思われる文章が告げられる。今度は声だけで姿は無い。



『では最後に、次の開催でお会いしましょう』



 そう言い終わるとアナウンスは途切れ、イベントの雰囲気も消えて大陸は元通りとなった。元通りと言っても其処まで変わっていた訳ではないが、プレイヤーからは様々な感情が漏れていた。

 イベントが終わったことで待ち伏せをする理由も無くなり、私たちは海上都市へと戻ると、そのまま解散へと向かっていた。


「催しも終わった。一度戻るか」

「戻ったら早速此奴で試してみるか」

「えー、戻るの?」


 レツオウたちは前の大陸にあるレギオンホームに戻るらしい。まあ他にも仲間が居るからホームに戻った方が何かと良いのだろう。フィルメルは残るつもりだったようだけど、相変わらずの理由で連行されていった。

 残りの面々にも宜しくと、別れを告げて三人は前の大陸に戻るために離れていった。

 

「…行っちゃったね」

「気を落とさなくても、また大きいイベントとか有れば会うでしょ。フィルメル辺りは特に」


 別れによってしんみりした雰囲気が流れるけれど、再会に関しては案外その通りだから否定が出来ずに小さな笑いが生まれた。何なら何時でもメッセージを送れるからそう悲しむ必要は無い。


「さて、私らもそろそろ落ちるかな」

「あれだけで結構時間掛かったからねー」


 確かに、追いかけたり待ち構えたりしただけで其れなりに時間が経っている。まだ少し時間は許されるけれど、切りとしては良い頃合いであろう。

 皆がログアウトムードを出しながら街中を歩いてる中、私の視界に何かが表示された。メッセージだ。


「どうしたの?」

「…ごめん。少し用が出来たから私はもう少しだけ残るわ」

「…そう?それじゃあまたね」

「それじゃあ私も」

「あっれえ!?先輩まで!?」


 どうやら先輩も何処かへ行くらしい。

 二人が離脱するとなってAkariは残るか考えたようだけど、何かを思い出したらしく、帰ることにしたようである。(わんたんは元から帰るつもりだった)


 帰る二人と、残る先輩と別れて、再び街中を歩く。


「アー?」

「一体誰からよ…」


 別れたところで、改めて先程来たメッセージを確認する。

 送ってくる相手に心当たりは特にない。Akariたち三人は一緒に居たから送る必要は無く、居ない二人はそもそもログインしてはいない。強いて言えばフィルメルたちの可能性もあるけれど、其れならば私だけに送ってくる理由はない。様子からして他には届いていないようだから。

 見当も付かず、ウインドウを開いて其れを確認してみると、其れには宛名が見当たらず、こんなことが記されていた。




『招待状』





此れで、運営イベントパートは終了です。

あと、今年の更新も終了です。

皆様、良いお年を。

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