表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
初めてのVRMMOと始まりの大陸
16/237

16 初めての個人イベント(後編)*


――――今度は俺だ!――――

――――いいでしょう。私に一撃でも傷を負わせる事が出来たなら貴方に"高レア"のものを幾らか与えましょう。負わせることが出来るならね――――



 茂みの奥から突如として聞こえていた声を頼りに移動をしてみると、その先で主催者の鼠ピエロが挑戦者と対戦をしようとしている場面に出くわした。ルールで宣言していた通りに本当に相手をする気のようである。そして挑戦者も。

 今挑んでいったのは剣と盾を装備した剣士的な風貌の男性だった。対する鼠ピエロは…ナイフ?その手に持つ複数のナイフをジャグリングのように回している。アレはどういう判定なのだろう。装備は軽いものなら複数装備出来るとはいえ、目の前で見せられている武器はどう見ても其れを超えているように思える。左右で一本ずつならまだしも、あのナイフは明らかにその倍以上はある。逆に扱い辛いだろうと思う程に。


「…あ、始まる…」


 木陰から声を静めて対戦の様子を窺う。

 先に動いたのは挑戦者だった。盾を前に構えて突進するという直線的な動き。だが、それは足下へと投げられたナイフによって進行を妨げられる。どうやらあのナイフは投擲用のようだ。二つ三つ四つと、次々に投げて相手の行動を妨害している。投げる度に手元の数は減るが適度に回収を交えつつ、みるみるうちに動きを制限していく。そして自由に動きを動けない挑戦者に対して鼠ピエロが拾い上げたナイフで強力な一撃を叩きこんだ。


「ぐあぁ!!」


 隙を突かれて禄に防御も出来なかった事も有ってたった一撃でHPが赤ゲージまで削られた。当然ながら決闘は此処で終了した。


 なんというか、躊躇いなどがある対人だからこそとれる戦法なのだろう。初心者ならなおさら。戸惑いなどを感じないモンスターではあそこまではならないだろう。


「見つけた!勝負だ!」


 決闘が終わったのも束の間、騒ぎを聞き付けたのか直ぐに次の挑戦者がやってきた。よく見れば私以外にも隠れて観察している人も居た。この流れは当分終わりそうに無いけれど、こうしている間にもターゲットは減っていくので一度戻ろう。


 その場を離れる間にも、後ろで決闘が始まった。

 そして多分消し飛んだ。




◇      ◇      ◇





 戻ってくると簡単なものは全て倒されたのか、プレイヤーが辺りを彷徨っていた。


 ウインドウで確認してみると、残りの数は五分の一程となっていた(バグという奴なのか、何故かクエスト扱いとなっているようで、モンスターの残り数がウインドウで確認できるようになっている。便利だから良いけれど)。此処まで残っているとなれば恐らく残っている殆どは高レアリティなのだろう。


 この数で探して見つからないのだったらこの辺には居ないのだろう。一度場所を変えてみようかな?と思っていたら、見つけてしまった。


 対象モンスターではなく、"先輩"を。



「何をしているのですか……」

「…する?」

「しませんしません」


 一人突っ立っているところに話しかけたら、問答無用で挑戦を訊かれたよ。というか先輩、暇すぎて半分くらい意識が飛んでませんか?


 周囲に誰も居ないということは避けられているんじゃないですかね。鼠ピエロと違って先輩の実力は街中での対戦の時にある程度広まってますからね。見た目も相俟ってそのことを覚えている人も多いだろう。挑んだとして、攻撃力は低いからすぐに倒されることもないけれど、こちらの攻撃が当たらないのは目に見えているから。


「貴女は此処で何をしているの?ハントは終わったの?」

「それが…気付いたら大半が倒されてまして、多分あとは高レアリティのものだけだと思うんですけど、それが見つからなくて…」

「それなら向こうの方で一体見たわ。そこそこなのが」

「本当ですか?」


 先輩の基準での"そこそこ"というのが不安ではあるが、この際は目を瞑ろう。Akariが何かしら持ってきそうだから、こちらも対抗して何かしら結果を残さないと。と思っていたら"それ"が向こうから来たのが見えたよ。


「先輩はっけーん。先輩、せっかくだから勝負しよー…ってあれ?詠も居るの?」


 噂をすれば何とやら。


「詠も挑むの?」

「いや、やらないやらない。偶々見つけただけ。そういうAkariはやるの?その大剣で」

「やるよ?一回ぐらいは対戦してみたいじゃん?」


 その装備で?

 今のAkariの装備はスキルの練習をしていた時の無難な剣ではなく、攻撃力意識のあの大剣に戻っている。攻撃力は劣っているけれどまだ扱い易い剣だったならまだしも、重量にまだ振り回されている感のある大剣なのだから、絶対当たらないだろうなぁ…。まあ…頑張れ?


「それじゃあ…私はもう行きます」

「ええ。頑張ってね」

「はい…」

「詠、また後でねー」


 二人と別れて、私は先輩から聞いた情報通りに移動する。

 移動距離を考えればスタート地点の出口から結構遠くなっているのだけれどまだ姿は見えない。プラクティスエリアの範囲が結構広いこととエネミーも動くことから主催者側も把握できてないのではなかろうか?


「?」


  今、そこの草むらが動いたような?気のせいかな?


 カサカサッ…バッ


 草むらからデーモンプラントが飛び出した。



―――――――――――――――


デーモンプラント / Lv 20 (フラッグ)


―――――――――――――――



 それは植物と呼ぶには禍々しかった。


 …ってそんな感想を言っている場合じゃなかった。突如として飛び出してきたのは、花や蔓から刺々しい印象を受けるウネウネと動く植物のようなもの。見た目からも危ない印象を受けるが注意しなければならないのはそのレベル。こちらの倍以上はないですかね。本当に勝てるのですか?


 距離を保ちつつ警戒していると、こちらの準備もお構いなしにデーモンプラントは蔓を伸ばして攻撃を始めてくる。速いけれど避けれないことも無い。周囲の木々も使いつつ蔓を躱す。エネミーの蔓が鞭のように木々に巻き付いている隙に、弓を構えて矢を射る。


 何度か矢は放ったけれど、何発かは蔓で弾かれ、命中してもレベル差もあって其処までHPは減少しない。


「《ホークショット》…ッ!」


 また隙を見つけて今度はスキルを用いて攻撃したけれど、通常よりは減った程度で此れも其程削れていない。


「…っ、やばっ」


 幸い定期的に隙は生まれるから地道に矢でHPを削っていこうと思っていたけれど問題が生じた。持っていた矢が尽きたのだ。他の武器とは違う弓矢の欠点である。矢が無ければ使えないから残りは短剣か魔法系のみ。短剣は下手に近付けば捕まりそうだから使いたくない。ならば後は…燃やすしかない。


 近くの木々を盾にしながら〈ファイア〉を唱える。的確に発生した炎がデーモンプラントを包んで燃え上がる。今迄よりもダメージが入っている。だけど其れにより動きが激しくなり、燃え上がりながらさらに蔓を伸ばしてくる。


「よっ…とっ…」


 木を盾にするだけでなく、大縄跳びを跳ぶ要領で跳ねるように躱しながら、余裕が出来たときに〈ファイア〉を唱える。その後も動きが激しくなる蔓を躱しながらひたすら〈ファイア〉を放つ。


「此れは…疲れる…」


 植物だからか炎は結構効いているけれど、それでも減少は少しずつだから時間が掛かる。先に此方のMPが尽きた。隠れながらMP用のポーションで回復している間にも蔓が伸びてくる。

 蔓から逃げながら何度も〈ファイア〉を唱える。終わるまでこの繰り返し。


 そして…


【デーモンプラントを倒した。1630EXPを獲得しました。】

【☆レベルアップ☆ ポイントを振り分けることが出来ます。】



 ようやく最後のHPを削り切り、デーモンプラントはポリゴン体の光となって砕け散った。疲れた。格上と言うだけあって経験値も凄い。レベルも当然ながら上がった。そして、フラッグマークを倒したから足下には一つのアイテムが残った。



―――――――――――――――――――――


〈霊宝珠のペンダント〉

分類:アクセサリー レアリティ:UR

説明:魔力が伝わりやすい特殊な宝珠を埋め込んで加工されたペンダント。

   身に着けると魔力の伝達が良くなって魔力操作が上手くなり、

   外からの悪しき魔力への耐性を得られる。

効果:MP+300 INT+20 MND+200

   全状態異常耐性+30%


―――――――――――――――――――――



 其れは不思議な色を放つ宝石を埋め込んだペンダントだった。説明を見なくとも異様な輝きを宿していてその辺で手に入るような代物では無い事は分かってしまう。

 説明を見てみれば、レアリティがなんとイベント開始前に説明されていたUR。かなり苦戦したから上の方だとは思っていたけれどまさか引き当てるとは…。効果は流石と言える上昇値。此れ迄に見た装備の上昇値を遥かに上回っている。特に魔法に対しての防御力が凄い。これ最初の大陸で出回っちゃいけない類だよ…本当に…。


 取り敢えず、折角手に入れたのだから装備してみる。面倒な視線を集めそうではあるけれど、気のせいか、守られているような感じはある。


 と、そこで一つのメッセージが表示された。どうやら全てのモンスターが倒されたようで少々時間は早いがイベントは終了のようだ。最後に何かがあるらしくスタート地点に戻るよう示している。なので地図で場所を確認しながらネクスまで戻ることにした。


「詠!こっちこっち!」


 出入り口付近で先に戻っていたらしいAkariが手を振っていたのでそこに合流する。


「そっちはどうだったの?」

「いやぁ、疲れたのなんので…ん?そのペンダント何?」


 こちらの成果を話した。MP回復のマナポーション(使用済み)とこのペンダントのこと。すると予想通り羨ましがられた。ちなみにAkariは三体倒したらしく、レアの杖とレアの盾、それとライフポーションの三つセットという結果だったらしい。あと、訊けば先輩には負けたらしい。でしょうね。


『皆さん、此度はお疲れさまでした』


 いつの間にか戻っていた鼠ピエロが再びマイクを持って皆の前に現れる。


『これにて【フラッグハント】は終了となります。お楽しみいただけたでしょうか。良いアイテムを手に入れた方も、そうでない方も、それは私からの贈り物である。ぜひ有効に活用してくれたまえ。では……このまま消えるのも面白くないな。そうだな…最後に参加賞でも送ろうか。では諸君、これからも頑張りたまえ。はーはっはっはっは!』


 ボゥンという音と煙と共に鼠ピエロの姿が消え、空からは光が雨のように降り注ぐ。するとメッセージが届く。皆にも届いていたようで、確認してみると、「イベントは終了しました」と始まる文章にアイテムが添付されたものが送られていた。仕組みは分からないけど、一つ一つ手渡しする手間をなくした結果なのだろう。参加賞はライフポーションだった。実用的ではあるけどなんか…扱いが悪い気がする。


 さて、イベントも終わったし、これからどうしよう?


「ねぇ、イベントも終わったから、これから行こうよ?」


 行くとは、この子は何処に行くつもりなのだろうか。


「先輩!例のクエストの村に行こうよ!」


 イベントが終わったばかりなのに気が早すぎる。向かう事自体は止めないけれど少し待って欲しい。切実に。






ステータス

未所属

詠 / 狐人

Lv 11

―――

―――

HP: 114 (HP+150) / MP: 202 (MP+300)

STR(攻撃力):14 (STR+16)

VIT(耐久): 14 (VIT+10)

INT(知力): 37 (INT+20)

MND(精神力): 47 (MND+205)

DEX(器用さ): 30

AGI(素早さ): 58 (AGI+10)

LUK(運): 24


BP : 12


装備

「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)

「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)

「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)

「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)

「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)

「ノーマルブーツ」(AGI+10)

「霊宝珠のペンダント」(MP+300、INT+20、MND+200、全状態異常耐性+30%)




ステータス

未所属

Akari / 鬼

Lv 10

―――

―――

HP: 200 / MP: 107 

STR(攻撃力): 45 (STR+15)

VIT(耐久): 35 (VIT+20)

INT(知力): 20

MND(精神力): 22

DEX(器用さ): 27

AGI(素早さ): 29 (AGI+5)

LUK(運): 14


装備

「ノーマルブレード」(STR+15 AGI-5)

「ノーマルシャツ」(VIT+10)

「ノーマルズボン」(VIT+10)

「ノーマルブーツ」(AGI+10)





ステータス

未所属

せんな / 天使

Lv 6

【道を切り拓く者】

―――


装備

「白紙の妖刀 "白月"」




レベルの十の位が上がる度に獲得BPが増えます。10からは2ポイント。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ