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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
新年も変わらず
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144 明けゆく魔瘴

 海面が爆ぜて、海中に居たプレイヤーたちが海上へと投げ出された。

 登場と同時にエネミーを貫いた先輩の一撃はHPを残さず消し飛ばした。消し飛ばした迄は良かったのだけど、一撃の威力が高すぎたのか、エネミー側の最後の足掻きなのか、通常のような消滅ではなく水中での爆発が起き、その場に居たプレイヤー全員が吹き飛ばされることとなった。

 海上に戻る手間は省けたけれど、爆発の衝撃と打ち付けられる衝撃で結構痛い。


「アー、アー!」

「あ…、潜れないから外で待ってたのね…」


 海面で漂う残骸に引っかかりながら動けずに居ると、水中に潜れずに海上で飛んでいたカゼマチが飛んできた。海面が爆ぜたけれど特に巻き添えにはなっていないようである。

 ふとカゼマチの飛んでいる空を見れば光が差し込み始めていた。この海域を包んでいた黒霧が次第に薄まっていっている。きっと此れで此処の海域も正常に戻るのだろう。


「他の皆は…大丈夫そうね」


 身体を起こして周囲を確認して見ると、次第に視界が晴れていくお陰で仲間の姿が発見し易く、大体が私と同じように爆発関連のダメージで海を漂っていた。更に離れた場所では戦闘を一緒にした他のプレイヤーの生存も確認出来た。彼方は割と元気そうである。そして、一番至近距離から爆発を受けた筈の先輩は私たちの中でも特に平気そうな顔をしていた。何故。

 そういえば、先程は普段見ないような装備を使っていた気がするけれど、今の先輩は何時も通りの武装に戻っていた。先程の大剣はスキルによる影響か何かだったのだろうか?


「…たっ」


 背中に何かが当たる感触があった。振り返ってみると背中に当たったのは流れてきた宝箱だった。漂流物がまた復活したと言うよりは先程のエネミーのドロップ品なのだろう。宝箱以外にも先程は流れていなかったような種類の物も流れていて、他のプレイヤーが拾い上げていたりする。


「取り敢えず開けてみよう…」


 他のプレイヤーも回収している事だからと宝箱を開けてみると、中には少し草臥れた紙が入っていた。その紙には何かが描かれているようだけど、紙が切れ端であるが故に途中で途切れていたりして、まともに読み取るのは難しい。


「…大丈夫?」

「あ、はい。大丈夫です。

一つ聞きたいんですが、此れ何か分かります?」


 紙切れを調べていると、先輩が再びアクアライドに乗って近くにやってきた。丁度良いから宝箱から出てきた紙切れについて訊いてみたけれど、此れと言って情報は得られなかった。だけと逆に、先輩が知らないと言う事は最近のアイテムという証明になる。


「説明を見ると"型番"って書いてあるんです」

「型番…?」

「あと、数字も書いてあって、他にも何枚か同じようなのが必要みたいです」


 アイテムの詳細には番号が振られていた。その番号が中途半端な事と、紙が途切れている事から、繋がるパーツが存在する事は察した。


「予測だけど、地図と言うよりは設計図だと思う」

「設計図…言われてみればそう言う図に見えなくも無い。となると、鍛冶関係のアイテムになるのかな?」


 此の世界で作成出来る種類は事ある毎に増えていっているけれど、このような設計図が必要そうなものは鍛冶くらいだろう。料理レシピなら図よりも文章の方が多い筈だし、建築は今の所可能なのかすら分からない。

 種類はさておき、繋がる紙を数枚集めないと意味を為さないアイテムのようだけど、此処で全てを揃えるというのは難しそうであり、そうなると単に嵩張るだけのアイテムとなる。鍛冶は出来るから今後の事を考えて持っておこうか、いっその事誰かに渡してしまうか、迷うものである。


「先輩いります?トドメを刺したのは先輩ですし」


 そう言うと先輩は頭を横に振った。折角だから持っておけば良いとのこと。其れならとインベントリに型番アイテムを仕舞う。また機会のあるときにでも使い道を考えよう。

 アイテムを仕舞った後、そろそろ起き上がってる頃だろうから、私もアクアライドに乗って他のメンバーのところに向かう。


「…大丈夫そうね?」

「まあね。まあ大丈夫じゃなくてももう動かないと駄目っぽいけどね」


 黒霧が晴れて海域が正常に戻るにつれて、此の海域に漂っていた残骸や物資は霧と共に消えようとしていた。足場にしている漂流物も消えるため、そのままで居ると海に取り残される。動かないと駄目とはそういう事である。

 他のプレイヤーもちらほらとこの場を去り始めているので、私たちもそれぞれアクアライドでこの場を離れることにした。


「で、結局異常の原因ってさっきの奴だったの?」

「どうなんだろう?あの場所を陣取ってはいたけれど何かを生み出しているって感じは無かったけど…」

「…蛸だったからね」


 あの力なら水中に渦を作り出すことは出来るだろうけど、流石に海上に霧を発生させる事は出来そうに無い。出来ても霧ではなく墨だろう。となれば、海域が正常に戻ったのは単に時間の関係だったのだろう。

 そんな結論を付けたりしながらも、アクアライドは海を進み、時にエネミーから逃げながらも、前方に水に飾られた街が見えてきた。方向を確認しないで他のプレイヤーが去って行く方向に進んでいただけだったけれど、無事に都市迄戻って来れたようだ。


「今日は此処までね」

「そうですね。結構時間が掛かりましたし」

「あ、その前に掲示板見てくるね」

「…じゃあ私も」


 時間も頃合いで疲れもある事から今日はこの辺でログアウトすることとなった。ログアウト場所へと向かう途中、進路上掲示板の近くを通ることになった為、少し覗いていくらしい。


「お?」

「どうかしましたか?」

「此れ…」


 掲示板を眺めていたわんたんが何かを見つけたらしく、其処に掲示されている情報の一つを指差した。其れは数日後に開かれるとある催しの案内。わんたんは少々興奮気味で言った。



「此れ、マスタークリエイトだよ!運営のイベント!」



 どうやら近々、運営自ら特殊イベントを開くそうです。




魔瘴海域パートは此れで終わりです。



【呟き】

年末が近付いて、今季もそろそろ最終回が多くなってきますね…。


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