140 海を渡る手段
本当に都合良くあったよ。
船の航路変更の原因である異常海域の話を聞いて、取り敢えず調べに行く流れになったは良いものの、肝心の移動手段を持ち合わせていないと言うところで、何時ぞや知った個人用の移動手段の事を思い出し、優先順位を入れ替えてまずは其れを探し始めた。
海を渡る方法なのだから、有るとすれば都市内部よりも海沿いでは?という安直な推測を基に海沿いに立ち並ぶ看板や建物を調べ始めた。そもそもこの街にあると誰かが断言した訳では無いにも関わらず。
そんな安直な捜索だったにも関わらず、移動手段に関係しているであろう場所はあっさりと見つかった。
そして現在、講習を受けています。
『この水上移動の《《アクアライド》》は――――』
私たちが探していた個人用の移動手段はアクアライドという名前らしく、その名の通りに水上を渡るためのアイテムだった。
探しに来て何故講習を受けているのかと言うと、簡単に言ってみれば現実での自動車の講習と同じである。そのアクアライドは判定としてはアイテム扱いであり、免許証はおろかスキルも何も必要は無いらしいけれど、マニュアル操作が為に技術が必要とされている。それ故の講習である。
「…講習って言っても、車に比べれば操作はまだ簡単そうだね…」
「…アンタ車運転できないでしょうが(年齢的に)…」
「…アー…」
「…此れは此れで別の難しさがありそうですよ…」
『其処!会話を慎むように!』
一応注意することも有るらしい。
話は戻るけれど、確かにアクアライドの操作は車に比べれば少ない方である。何せブレーキが存在せずアクセルを踏み込む強弱で加速失速を行い、後はハンドルで方向転換を行う程度。操作としては簡単である。ただ、椅子が存在するものは少なく、水の上と言うだけあって重心は不安定な為にバランス感覚が必須であるとか。乗ったら目的地まで運んでくれるという程簡単では無い。
『次にアクアライドの種類について言っておこう』
「種類?」
「そんなにあるの?」
講師はそう言って説明を始めた。
説明を聞いてみると、アクアライドには幾つかのタイプが存在するらしい。タイプと言っても其処まで大きな違いがあると言う訳ではない。速度が違ったり、形が少々異なって人によっては操作性が変わったりとそんなところである。要は人に合った形に分かれているらしい。
此れで一通りの説明は終わっただろう。
『其れでは次は実技と行こう。付いてきたまえ』
講師が向かったのは、この建物に入ってきた時の入り口ではなく、建物の更に奥に繋がる扉だった。付いてこいと言われたので私たちもその扉へと向かい、扉を潜った。すると――――
「おお」
扉の先は其れなりに大きな湖の広い空間だった。
普通なら何故湖が室内にあるのか、と思うかも知れないが理由は明らかである。先程の扉である。先程の扉を潜った瞬間、一瞬ではあるけれど空気の乱れのようなものを感じた。きっと別のデータ領域を繋げていたのだろう。そうで無いと敷地面積が説明できない。
『此処で実技練習を行う。
各自其処に用意してあるアクアライドを取るように』
その言葉と共に指差した先には確かにアクアライドのような乗り物が置かれていた。…ただしミニサイズ。模型かと思うくらいに小さなサイズ。
「え、コレに乗るのか!?」
「小さいんだけど!?」
私たち以外にもこの講習に出くわして受けている他のプレイヤーが居るけれど、そのプレイヤーたちも流石にミニサイズには驚いている。何せ、此れでは一人も乗れないのだから。
だけど他にそれらしい物は無く、仕方なく皆その模型を手に取った。手に取ってみると本当に良く出来ているわね此れ。
「全員に行き渡ったかな?では其れを水の上に展開したまえ」
そう言った講師は、私たちと同じような模型を取り出すと、其れを水の上に軽く放った。すると先程までミニサイズだった模型は光と共に拡大され、人一人が乗れる程度の大きさへと変化した。考えて見れば、馬車などと違ってアイテム判定なのだから持ち運べる大きさに変更されていても不思議では無かったのかもしれない。
其れを見て模型がアクアライドに変わると知った皆が一斉に模型を水辺に放った。それらは寸分の狂い無く揃って水上に並べられた。
「おっし、お先にっ」
「あ、待てよ」
アクアライドが水上に現れて、誰かが我先にと其れに飛び乗った。其れに続くように他のプレイヤーたちも飛び乗っていくだが――――
「おおっと!?」
「聞いてたよりも揺れるぞ!?」
飛び乗った勢いもあってか、其れなりの揺れに晒されるプレイヤーたち。上手く揺れをいなしてバランスを保つ者も居れば、バランスを崩して水に落ちている姿も確認出来る。
「其れなりにバランス感覚が必要とは言ってたからね」
「…よっと」
他のプレイヤーを見てから私たちも自分のアクアライドに乗り込む。乗ってみたけれど、小型故に足の踏み場が少ない事がより難易度を上げている。タイプというか形のバリエーションが複数ある理由が少し分かったような気がした。
ちなみに、皆が苦戦している中、唯一自前で飛べて、乗る必要性が無いカゼマチだけがその光景を呆れたように見ていた。
「…此れ、安定するまでが一番長いんじゃないの?」
誰かが言ったその予言通りに、バランスを保つ事に慣れる迄に其れなりの時間を使ったものの、其処からの行動はバランス程時間を使うこと無く、スマートに事が運んだ。
「加速はゆっくりの方が良いわね」
「そうですね。思い切り踏み込むとバランスが崩れますからね」
「あやばミスっ――!?」
言ってる傍から急激な加速による反動で体勢を崩している者が居るけど気にしない。まだ速度による反動でバランスが危ないところもあれど、ゆっくり加速していけば馴染んでいくからリスクは少ない。
『だいぶ、様になってきたようだな。此れだけ出来れば基礎は十分だろう。』
技術に差はあれど、皆がある程度乗れるようになった頃、講師からそう宣言された。確かに基礎としては皆十分だろう。今落ちているのは大抵暴走です。
此れにて講習は終了。都合が良いことに練習で使っていたアクアライドも貰えるとの事だった。ただし――――。
「マジ?受けた甲斐があったわ」
「アイテム情報も見れるのか。…改めて見ると能力低いな」
調べてみると、報酬で貰ったアクアライドは講習用と記されていただけあって、かなりシンプルなもののようだった。加速力なども此れで低い方らしい。
『また講習や練習をしたくなったら言いたまえ。
それとアクアライドのバージョンアップについても受け付けている』
「「「バージョンアップ?」」」
どうやらそのバージョンアップを行うことでやっと基本形のアクアライドになるようだった。バージョンアップ後は説明されたようなタイプに分かれるとの事だった。行えばより性能が向上してスムーズになるけれど、移動手段としては講習用のままでも十分使えるから、其処まで急ぐ必要は無い。
『あ、代金は頂くよ?』
「「金取るのかよ!」」
それはまあ仕事を依頼するようなものだからね。ちなみに代金が発生するのはバージョンアップに関してであって、練習は無条件で場所を貸してくれるらしい。
何はともあれ、此れでアクアライドが手には入って水上移動が出来るようになった。此れで次の目的に移れる。
「一応バージョンアップの内容確認しておかない?」
建物から出るのかと思ったらわんたんがそんな事を言い出した。
次の目的に移るのはもう少し後になるようである。
先日公式からミュウツーの逆襲のプレミア配信があったので見てたのですがね、割と早めから涙腺に来てましてね、その流れでココの予告も流れてもう涙腺駄目でした。
公式の裏話も見ましたが、昔の映画から今のアニメへと繋がりが残っているの凄いですね。あとでアニメの見逃し配信見よ( ・ω・)