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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
初めてのVRMMOと始まりの大陸
15/237

15 初めての個人イベント(前編)*

 日付が変わり、予告されていた個人イベントがやってきた。

 イベントのためにネクスの街には前日には見なかったような数の様々なプレイヤーが集っており、イベント開始の十分程前に私たちがログインした時には既に街の出口の一つがプレイヤーで埋め尽くされ、外に出るのは至難の技という感じになっていた。


「うっわ、思ったより居るね」

「外見の質からして他の場所から戻ってきた人も居るみたいね」

「此れは内容次第では報酬は厳しいかな?」


 告知では開催場所はプラクティスエリア内の筈なのに出口で此程集まっている訳は、数時間前に掲示板に張っているお知らせに情報が追記された事が原因らしい。それによると、この現在地の出口がイベントのスタート位置となっており、ターゲットが全て倒された時点でイベントが終了となるということ。


「そういえば先輩、先に来てるって話だったけど…参加してるって訳でもなさそうね」

「意外と主催側に居たりしてねー?」


 此処にログインする前、一応先輩とは連絡をしており、その時に先輩もログインする事は聞いている。フレンドリストを確認すれば確かにログイン状態にはなっているが先に入っている事もあって近くにその姿は確認出来ない。だからか主催側の可能性を思ったらしいけれどまさかそんなことはね…。


 そんな会話をしてると時間になったのか、突如、拡声器を通したような大きな声が周囲に響き渡る。


『あー、あー、…この度は、わたくしめの主催するイベントにお集まり下さり有り難う御座います。このイベントは私から皆さんへのプレゼントとでもお受け取り下さい。』


 聴こえてきたのは男の声だった。だけど響き渡りはするものの声の主と思われる姿はまだ確認出来ない。集まった他のプレイヤーもキョロキョロと探しているが見つからないようだ。


『では、早速ですがルールをご説明します。

今回、私はこのためにエネミーを用意し、それら全てをプラクティスエリア内に放ちました。その数はおよそ九十体。そのエネミーたちには少々手を加えていまして、頭には目印として旗が付いており、倒すとこちらが用意した報酬が落とす仕組みとなっています。報酬はエネミーの強さに比例しており、強いエネミー程、よりレアなアイテムを入手することが出来ます。』


 周囲が盛り上がる。強さによって報酬が変わりはするものの、見つけて倒せば良いという分かり易いルールだからなのだろう。下手に考えなくても良いのは序盤向けと言える。強さの上限が分からないけれど…。


『そして、本当なら其処まで高いレアアイテムの数は無かったのですが、知人の協力により、レアの数も大幅に上昇しました!更に報酬の最高レアは序盤で其れは無いだろうと言われるウルトラレアクラス!』


 おおー!!と周囲の盛り上がりが加速する。

 そういえば、レアリティの話はまだ訊いていなかった。武器や装飾品等にはレアリティが設定されているようだけど、どれだけの位があるのかは知らない。だけど説明や周りの反応からして結構高い部類なのだろう。ウルトラですし。


 ある程度の説明が為された事で、参加者たちから今か今かとスタートを待つ雰囲気が生まれ出す。Akariからもそういった空気が地味に感じられる。そんな空気を打ち破るように出口付近の高台で軽い爆発が生じた。


――――なんだなんだ!?――――

――――出口といえど街中で爆発か!?――――

――――おい、彼処だ!――――


「ん?あれって…」


 爆発音に釣られて皆の意識が其方へと集まる。爆発は煙と爆音だけだったようで発生源には何も壊れたような様子はない。その代わり、煙が晴れると先程には存在しなかった影が二つ現れていた。

 一つは主催者と思われるマイク(のようなもの)を持った男性。二つはその横に知人と思われる女性の姿…ってアレ先輩だよね。横の主催者もよく見たら昨日の仮面付けてる人だし。


「まさか主催者って昨日の人だったんだ…」


 あの仮面のプレイヤー、先輩と面識があるようだから同じように先を行く実力者と言う事は十分にある。何故此処まで戻って来ているのかはこの際置いておくとして、其れなら報酬もかなりの物だったりするかもしれない。…当の本人はわざわざ戻って来たぐらいだから本当にプレゼント感覚でこのイベントを行っていたりしそうだ。


『更に特殊ルールとして、私たち二人もエリアの何処かに潜みまして、私たちに決闘を挑み、たとえ一でもHPを削れたならばその方に追加報酬を贈呈しようではないか!』


 え、それは厳しくないですか!?手加減はしないとも言っているわけですし。



――――あの主催者どう見ても只者ではないぞ――――

――――一撃でも当てれば良いならチャンスがありそうだな――――

――――あの隣の人、この間決闘してた人?――――



 周囲の参加者からはやる気に混じって焦りや疑問等も浮かび上がっている。雰囲気から強者だと感じ取る者や以前の先輩の決闘を見ていた者が主だろう。


「なんか凄いことになってきたね」

「これ勝てる人いるの…?」

「まぁ別に挑むのは強制じゃないし…」


『では、これより始めましょうか。準備は宜しいでしょうか―――――名付けて【フラッグハント】。Ready……Go!!!』


 開始の合図と共に主催者は高笑いと共に姿を消し、隣にいた先輩もいつの間にか消えていた。それを追うように参加者たちは皆勢いよく街を飛び出しエリアへと向かっていく。


 会話をしていたら出遅れた。参加者の数はどれ程なのかは分からないが少なくとも用意されたエネミーの方が数は多い。だがしかし、一人一体しか倒してはいけないなんてルールは無い。つまり早く行かなくてはターゲットが無くなる。折角参加したのだからせめて楽しまなければ。





◇      ◇      ◇






――――おらあああ!!!――――

――――《スラッシュカット》!!――――

――――まだまだぁ!――――


 エリアのあちらこちらでもう既に戦闘が開始されている。強さに関係無く手当たり次第に挑んでいく者もいれば、エネミーを品定めして大物を探している者等、個性が出ている。

 そんな中で私は一人で行動している。スタート直後、Akariが「今回は別々で行こうよ。負けないよ」ということで今回はライバルとして別々に行動することになったのだ。


――――あ、こいつフラッグじゃねえ!――――

――――こっちもだ!――――


 苦戦している声がちらほらと聞こえる。

 このイベント、プレイヤー主催であるが故、普通のエネミーはいつも通り出現している。主催者は特殊なエネミーを放っただけで、根本的なシステムには干渉出来ないので当然といえば当然であるが、其れに気付かずに戦って消耗しただけというプレイヤーも一定数は居るようだ。挑んでは違うと判断して逃走するというプレイヤーも見かける。そういう姿を見ていると、もしかすると紛れ込ませるという狙いもあるのかもしれない。


「そろそろ私も戦った方が良いかな…」


 近くに見える範囲は大体が他のプレイヤーが戦闘を行っていたりする。まだ空いているエネミーも居るが他のプレイヤーの動きから通常エネミーの可能性もある。というか、広い場所だと通常エネミーが戦闘に乱入してくるというケースがあるようだ。現に横からタックルを受けている人が居る。其れならと一度離れて茂みの方へと移動する。


 茂みへと移動すると、其方にもプレイヤーの姿が確認出来るが、平原と違って見落としが多いようで木陰などにエネミーの姿がある。なので、その内の一つに近付く。



――――――――――――――


プチワーム / Lv 5 (フラッグ)


――――――――――――――



 うわぁ。

 フラッグの文字が付いているということはイベント用なのだろう。この辺りでまだ見たことのない形ですし。形としては芋虫…ミミズ?…その辺りに近く……


「《ファイア》!」


 ミミズのような影が炎の中でうねうねと動く。気持ち悪いので〈ファイア〉連打。跡形もなくなるまで燃やし尽くそう。


 炎を発生させること数回、やっと炎の中の影が砕け散る。すると炎から何かが飛び出した。報酬のアイテムのようだ。手に取るとそれはMP回復のポーションだったのだが、あれが持っていたとなると使う気が失せる…使うけどね…今のでだいぶ減ったから。



――――ちょっ、まっ、うわぁぁぁ!――――



 ポーションを使って改めて動こうかと思っていると、突如として悲鳴が響いた。




?「後半へ続く」

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