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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
初めてのVRMMOと始まりの大陸
14/237

14 初めての実験…*

 クエストで狩りをしていてスキルを意識していた。だからなのだろう。ふと、こんなことを思ってしまった。


―――付加魔法を敵に使ったらどうなるのだろう?、と。



――――――――――――――――――――――――


○エンフレア

 効果:攻撃に炎を伴わせる付加魔法。

    射程範囲にいる任意の対象に一定時間、攻撃に【火傷】性質を付加。

 性質:【火傷】

 消費MP:15


――――――――――――――――――――――――



 この通り、〈エンフレア〉の効果説明を確認してみると"射程範囲にいる任意の対象"と書かれている。つまり、範囲内であれば味方でなくても対象に出来るということである。冷静に考えれば結果は見えているようなものだが、予想外の結果というものがこの世には存在する。少々試してみたくなってしまった。


 クエストで必要な数は大体討伐したけれど、前方には検証に御誂え向きのレベルの低いスライムが一匹。スライム程度なら万が一の事態にもなりづらいので戻る前に検証を試みる。


 此方に気付いていないスライムにひっそりと近づく。攻撃しないで近づいていく私にAkariと先輩は不思議に思ったのか、スライムに攻撃を始めるわけでもなく見ている。声を出すと気付かれるのでウインドウを呼び出してスライムを対象にして〈エンフレア〉を唱える。スライムの足元から火花が上がり、炎のようなオーラに包まれる……。


「?」


 特に何も起こらない。いや正確には付加に成功したのだけど。炎で燃えたりという可能性も思ったりしたけれど、結果として…そんなことは起こらなかった。新しい可能性が見つかっていれば其処からまた考えられたのに残念。強いて言えば一つ……攻撃が痛い!触れたら発火する!


「何してるの!?」


 後ろに反射的に跳ぶと、入れ替わりにAkariが先程までいた場所に居たスライムに対してスキルで一刀両断にした。クリティカルが入ったとはいえ最初は時間の掛かったスライムも今では一撃である。



【スライムを倒した。8EXPを獲得しました。】

【スキルを獲得しました】



 一応戦闘結果としてシステムメッセージが現れた。だけど其れは経験値だけでなくある意味実験の成功も示していた。それも〈術技〉と〈技能〉、一度に二種類のスキルが出た。



――――――――――――――――――――――――


○ファイア

効果:射程範囲内の指定した場所に炎を発生させる基本魔法。

性質:【火傷】

消費MP:15


――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――


○探求心

 説明:馬鹿と天才は紙一重。

    モンスターの弱点性質の術技スキルを使用した場合、

    元々の威力が1.1倍に上昇し、状態異常成功率が上がる。


――――――――――――――――――――――――



 身体を動かす技系統とは違って術系統の増える切っ掛けが分からなかったけれど、こんな方法で出るなんて。それにしても意識して行動していたとはいえスキルってこんなにポンポンと覚えるものなの?


「詠?どうしたの?」

「またスキルが増えた。二つも」

「二つ!?どんなの?」


 聞かれたのでウインドウを可視化して覚えたスキルを順番に見せる。Akariは羨ましがり、先輩は技能スキルの方に引っかかった。


「〈探求心〉は上昇倍率が他と比べて低いけど、純粋に底上げという意味では結構使える。ちなみにそのスキルは戦闘などで意識して変な行動をすると獲得できるらしい」


 あの検証は変な行動と判断されましたか…。ただの説明文の穴を突いた好奇心なんだけどなぁ…。


「あんな事からもスキルに発展するんだ…」

「あんな事って…」


 好奇心とは言え自分でも馬鹿な事をしたとは思ってる。だけど仕方が無い。Akariみたいに型等の動きの練習と言う訳にもいかないから、色々と試してみるしかないのだから。まぁ流石にこういった事はもうしないだろうけれど。


「そういえば…」

「どした?」

「気持ち、お腹空いたようなように感じる…。データの中なのに」


 動き続けている時は気付かなかったが、一段落付いて気を緩めてみると、気のせいかお腹が空いたような感覚がやってくる。飢餓感やお腹が鳴る等は無いから疲れからくる錯覚とも思えるけれど…


「んー。確かに。がっつりは要らないけれど何か欲しい感じ」

「其れは空腹に関するデータがあるから」

「へー。そういうのもあるの?」


 不思議に思っていると先輩が答えてくれた。

 どうやらこのゲームの中にはHPやMPと同じように空腹値とでも言うような数値が存在するらしい。其れは現実のように動いている間少しずつ、戦闘など激しい行動なら余計に減りやすいらしく、減少の割合によって弱体化してしまうらしい。弱体化に関しては状態異常に掛かりやすくなる等、先に進むにつれて気を付けた方が良いらしい。


「じゃあ街に戻ったら何か食べようよ。探せば飲食店ぐらいありそうだし」

「…でも、こういう所で食べて身体的には大丈夫なの…?」

「多分大丈夫」


 どういう仕組みなのか謎だけど、この空腹値は少しばかり現実での身体ともリンクしているようで、此処で食事をすれば現実でも食べた感覚が得られているとか。ただし、現実での事を考慮されているようで、此の世界では完全に満腹にならないとかで、現実でも食べないといけないようにはされているらしい。


「ほら行くよ。此れからも必要なら幾つか知っといた方が良いし!」


 Akariに急かされるように私たちは"ネクス"へと戻ってきた。忘れないようにクエストの完了を済ませた後、飲食店は無いかと街の中を歩く。すると以前には気付かなかったが軽食を売っている屋台が幾つか見つける事が出来た。


「んむ…悪くない」


 屋台の一つから料理を購入して皆で食べてみた。現実程の再現はまだ難しいのか味に繊細さは無かったけれど不味い訳でもなく、此れは此れでと言った感じだった。そういえば屋台の店主はプレイヤーだった。


「さっき他の人が言ってた話なんだけど」

「あー、そんな事言ってたわね。スキルがどうこう」


 屋台から料理を買う際、近くで同じように料理を買ったのだろうプレイヤーたちがとある話をしていた。その内容はネクスの近くに報酬でスキルを得られるクエストがあるというもの。Akariが喰い付くのも無理は無い。


「確かに、ネクスの近くの隠れた村にクエストがあったと思う…」


 話を確定付けるように先輩が言葉を紡ぐが、何か少し様子がおかしい。


「けど…あのクエストは人種しか受けられない上に、報酬のスキルも人種しか覚えられなかったと思う」


 つまりは、獣人種である狐人の私は不可能で、天使の先輩もおそらく不可能(というよりもう既にクリアしている可能性があるけど)。よってAkariしか受けることが出来ない。クエスト中に関しても人種でなければ手助けすら出来ないらしい。何この縛り。


「とりあえず行ってみる?」

「行きたい!」

「いや…別の日にしません?そろそろ時間もいい頃ですし」


 先程確認したら現実時間は十六時を回っていた。


「うーん、じゃあそうする?明日は明日で個人イベントがあるけど」

「個人イベント?」

「そ。明日の一時からプラクティスエリア内で行われるんですよ。先輩も出る?」

「そうね……遠慮しておくわ」


 少し考えていたが止めるようだ。きっと初心者との実力差などを気にしたのだろう。対戦の件で目立ってるからイベントに出ると色々とありそうだからね。


 そんなこんなでログアウト場所を考えて歩いていると、何処かから先輩を呼ぶ声が聞こえた。


「おや?そこの貴女、もしかするとせんな氏では?」

「?」


 辺りを探すと、飄々とした風の一人の男性が近づいてきた。


「やはり、姿は少し違えどせんな氏であったか。こんなところで奇遇ですな」

「……鼠くん?」


 鼠くんと呼ばれた男性は変わった口調に仮面を付けた変わった人だった。種族すら分かりにくい人だけど、先輩とは知り合いのようだ。


「そちらはせんな氏のお仲間ですかな?初めまして、私は"鼠ピエロ"と言います。以後お見知りおきを」

「え、あ、はい!?私は"詠"と言います。こっちは"Akari"です」


 飄々としている割には意外と礼儀正しかったことに驚いてしまった。(失礼)


「詠さん、私は此処で良いわ。また明日にね」

「え…はい。それじゃあ先輩、また後で連絡しますね。Akari行くよ?」

「ん?うん」


 あそこに残ってもどう接すればいいか分からない上、先輩自身も用があるのか先に帰らせようとしていたみたいだから、とりあえず今日は終わろう。





◇     ◇     ◇





「それで、貴方がどうして此処に?」

「それはこちらの台詞ですよ?大陸攻略戦の後に姿を見かけなくなったと思えばこんなところで会うなんて」

「色々あるの」

「ほう。その様子ではもう共に戦うことはないのですかな?」

「そうね…当分は今のままで満足しているから攻略戦には戻らないかもしれないわね」

「そうですか」

「それで、鼠くんはどうして此処に居るの?」

「それがですな、少々面白いものを入手したもので」

「?」


 その時の道化師は表情は感じ取れないながら、何処か楽しげであった。






ステータス

未所属

詠 / 狐人

Lv 8

―――

―――

HP: 95 (HP+150) / MP: 180

STR(攻撃力):11 (STR+16)

VIT(耐久): 11 (VIT+10)

INT(知力): 27

MND(精神力): 33 (MND+5)

DEX(器用さ): 22

AGI(素早さ): 43 (AGI+10)

LUK(運): 19


BP : 7


装備

「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)

「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)

「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)

「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)

「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)

「ノーマルブーツ」(AGI+10)





ステータス

未所属

Akari / 鬼

Lv 9

―――

―――

HP: 195 / MP: 101 

STR(攻撃力): 39 (STR+15)

VIT(耐久): 31 (VIT+20)

INT(知力): 18

MND(精神力): 20

DEX(器用さ): 24

AGI(素早さ): 26 (AGI+5)

LUK(運): 13


装備

「ノーマルブレード」(STR+15 AGI-5)

「ノーマルシャツ」(VIT+10)

「ノーマルズボン」(VIT+10)

「ノーマルブーツ」(AGI+10)





ステータス

未所属

せんな / 天使

Lv 6

【道を切り拓く者】

―――


装備

「白紙の妖刀 "白月"」


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