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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
再始動と新たな巡り
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129 水上都市スローライフ?

「あ、かかった!」

「アァ!」


 皆と分かれてから少しした頃、私は水上都市の片隅で海に向かって糸を垂らしていた。要は釣りである。


 理由は少し遡る。

 少し遅れながら従者に名前を付けた後、目的が特に思い付かないながらも街を歩いていたところ、突然声を掛けられた。

 その時の相手はプレイヤーでは無くNPCだったのだけれど、少し話を聞いただけで無償で釣り竿を貰ったのだ。どうやらそのNPCは海が広がっている場所故に釣り文化を布教しているとかで、話を聞いてくれた相手にお手製の釣り竿を渡しているとか何とか。

 突然渡された事に何も疑わなかった訳では無いが、そのNPCはすぐに次へと行ってしまい、残された身としてはどうしようか少し考え、折角だからと釣りに興じることにしたのだ。



「案外普通の魚も釣れるのね。これってアジ?」


 引き上げた釣り糸の先には魚が食い付いていた。以前は此れでエネミーが釣れていた気がするけれど、エネミー以外の魚も釣れるようだ。食料アイテムなのだろうか?


「……(あむっ)」


 ゼピュロスフェザー改めカゼマチが釣り針から魚を奪ってはもしゃもしゃとしている。釣果が腹の中へと消えていく。

 与えた訳では無かったのだけれど、食べたいのなら良いか。其処まで欲していた訳では無いし。調理のスキルが存在するのなら取っておく事も有りだけど、生憎と持ち合わせてはいない。後で探してみようかな。


 そんな事を考えながらも再び海に釣り糸を垂らす。


 ちなみに、此れまでの人生に釣り経験は無く、TVで見たような動きを見様見真似で行っているだけだったりするが、貰った釣り竿が簡素なものだったりするお陰で妙な細工などはしなくとも問題なく釣りが出来ている。

 近くに他の釣り人も居ないので釣り糸が絡む事も少ない。


 そういえば、釣りといえば気付いた事がある。

 どうやら釣りに関してもスキルがあるらしく、此処で釣りをしている内に何時の間にか獲得されていた。その内容を見てみた限り、今の所は耐久度に補正が掛かる程度なので、釣りをするにはスキルが必須という感じではないようだった。


「まあ、補正が掛かるお陰でこんな釣り竿でも無事に釣りが出来ているんだろうけど」


 逆に考えれば、耐久補正があれば棒と糸でも釣りが出来そうではある。極端な話だけど。

 

 時折反応を確認しているけども、水面に浮かんだ浮きに反応は無い。

 反応を待っている間というのは暇なものである。慣れた人によっては其れも楽しみと取り、人にとっては忍耐だとも言う。私にしてみれば単に思考時間だったりするけれど。

 よくTVでは、釣り竿を固定しておく台のような物が用意されていたりするが、此処にそんなものは無く、ずっと竿を持っておかねばならない。とはいえ、そのお陰で思考が何処かへ行っていても竿の振動で反応に気付くのだが。


「…来た」


 釣り竿に引っ張られるように意識が戻ってくる。

 今度の反応は先程よりも強い。右に左にと激しくは動かない割に、水面に浮いている筈の浮きが水中へと思い切り引き込まれている。


「此れは…ッ」


 重い、というよりは強い。

 逆に引っ張ってくる力が、釣り竿どころか竿を持つ此方さえも海に引き込もうとしている。強烈なしなりを見せる釣り竿からは、みしみしと歪な音が聞こえる。補正が無ければとっくに壊れていても不思議では無い。


「アー!アー!」


 この激戦にカゼマチも釣り糸が沈んでいる地点の上空で応援している。


 其れが影響したのか、釣り糸の先から感じる勢いが少しだけ衰えた気がした。微かな反応では有るが、其れをチャンスだと判断して一気に釣り竿を振り上げた。


 すると、それ故に水面に一つの影が現れた。




 ――――バッシャーーン!!




 大量の水飛沫と共に、水中から其れが勢いよく飛び出した。











「やるな、狐の嬢ちゃん!そんな竿で大物を釣るなんてな!」


 釣りをしていた場所から少しした場所にあった漁業組合が経営していそうな商店。その商店に、釣り竿の破損という対価を払った今回の一番の釣果を持ち寄ったところ、なんか褒められた。まぁ…


「…マグロなんて釣れたら当然か…」


 正確に言うと、マグロにしては少々ブースターとでも言うのか自然界らしくない物質が付いていたりする。食い付いた時の反応が酸素の都合上止まれないマグロにしては妙ではあったが、ブースター部分が可動したりする上、そもそも生態自体が違うのだろう。

 ちなみに、このマグロの名称は"翻マグロ"だった。


 …知っているものと字が違う。


「で、どうするんだ?売るのなら喜んで買い取らせて貰うぞ。

代わりの竿を買っても十分お釣りが来る値段だぞ?」

「一応聞きたいのですが、買い取った後はどうするんですか?」

「ん?そりゃあ、食材として加工して出荷したり提供したりだな。この程度になると食える量も空腹度の回復度も違うからな」


 自分で訊いておいて何だけど、売った後の事まで話が続いているのね。


「じゃあ、売った後に部位を少し買い取る事は出来ますか?」

「ああ出来るぞ。ちょっと待ってな……っと、その前に買い取りって事で良いんだな?」

「はい」


 折角なら幾らか食材として持っておこう。

 此の後に調理系のスキルを探してみるつもりだから、もし見つかれば自分でこのマグロを調理するのも良いかもしれない。


「で、どうする?どれ位持っていくんだ?元は嬢ちゃんが釣ったものだからは、幾らでも良いぞ」

「では、その辺りの部位を」


 換金後から少しして、手早く切り分けられて出された部位を見て適当に見繕う。流石に遠慮もあって少しだけのつもりであったが、相手側がオマケをしてくれたので其れなりの購入となった。

 買い取った部位はどれもブロックに近い形状にされており、調理としては使いやすそうである。


「アァ」

「はいはい。此れでも食べてなさい」


 流石にこの切り身は与えられないので、カゼマチには別の食材アイテムを与えて我慢して貰いながら、次へと向かう。


 次の目的としては料理に関するスキル(まだ存在すると決まった訳じゃないけど)。


「釣りをして釣りのスキルを得たのだから…料理も自分で道具を揃えてしたら良いのかしら…?」


 スキルに関しては意外と挑戦してみる意欲が良い結果を出すと経験上思う。釣りにしても其れで獲得しているし、動きを模倣し続けることでスキルが出たというケースも知っている。

 とはいえ、真似ようにも道具が無い。作る物によっては使わないかもしれないし、此処だと衛生面は然程関係ない気もするけども、最低限の道具は揃えたい。


「包丁は…代用品が無い事も無いとして、火も自分で起こせるとして…」


 刃物に関しては以前に鍛冶体験の際に作成した剣があるので、サイズが違うけれど代用品として使えないことも無い。火を使う際もスキルで起こす事が出来る。其処まで自由が利くかは知らないけど。

 フライパン等も欲しい所だけど、何処かにあるだろうか?こういった物は此の世界だと何処に分類されているのだろうか?






 スキルを探す事が道具を探す事に切り替わっている詠は、関わっていそうな人では無く、道具のありそうな店を探して回るのだった。




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