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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
再始動と新たな巡り
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127 基礎を学ぶ…?

 戦う事を想定して広く取られた場所の中心付近で二人のプレイヤーが向かい合う。

 そのプレイヤーは片方が自身と同じぐらいの大きさの斧を構えたドワーフであり、もう一人は変わった形をした杖を構えた狐人であった。


 試合は既に始まっている中、両者は様子見をするだけで大きな動きは無い。ドワーフは背中に背負った大斧に手を掛けつつも引き抜く迄には至っていない。


「まずは小手調べ…」


 武器に手を掛けながらドワーフはそう呟く。

 すると、武器に伸ばしている手とは逆の手を相手に向けた。そして―――


「〈フランシュ〉」


 スキル名の発声と共に光が生じ、ドワーフから球状の閃光が撃ち出される。伸ばした手を照準としていた影響か、閃光は寸分の狂い無く相手プレイヤーへと飛んでいく。


「…〈フランシュ〉」


 迫り来る明確な攻撃に狐人のプレイヤーは焦った様子は無い。それどころか、その攻撃に対して自身の杖を向け、ドワーフと同じスキルを行使した。


 両者が撃ち出した閃光はぶつかり合い、一瞬の眩い閃光の後に消滅した。相殺である。プレイヤー自身の能力に差はあれど、使用したスキル自体に貫通力が其程無いが故に、打ち勝つ事も打ち負ける事もなく共に消滅したのだ。


「同じスキルで迎撃か…」

 

 ドワーフは今の一撃で倒せるとは少しも思ってはいなかったどころかダメージを与える事も出来ないだろうと思っていたようで、迎撃されたことは其処まで驚いてはいなかった。だが其れが、同じスキルで的確に相殺されたと言う事には少しばかりの揺らぎが生じた。


「ならば……〈ストーンショット〉!」


 相手の意図が分からないながらもドワーフはさらに攻撃を放つ。

 先程の迎撃に影響されたのかは定かでは無いが、今回は放たれたのは石礫。一粒一粒は小さく疎らで威力も低いが、閃光とは違って散弾である為、同じスキルで相殺しようとしても相殺しきれない。


 ドワーフは相手の次の行動に注意を払いながら此処で大斧を構える。


「跳んだか!」


 狐人プレイヤーは今回はスキルを使うこと無く、跳躍する事で石礫を回避した。

 だが跳躍したことが逆に、隙だらけだとドワーフは動き出した。


「ぉおりゃあああ!!」


 空中に居る狐人目がけて、ドワーフは身体の回転を使用して得物である大斧を空中へと投げ放った。

 其れは斧系統の武器で使用できる術技スキル〈ロールブレイブ〉。

 武器をブーメランとして使うという斧系統武器による技では数少ない遠距離技。武器を直接投げるという豪快な形式上、武器が手元に帰ってくるまで同系統の技が使えないという大きな難点が存在したりする。


 そんな投擲が空中の狐人に鋭く襲いかかる。

 其れに対して狐人は杖を振るい、杖から光を放った。


「〈マジックハンド〉」


 杖から伸びた光は迫り来る大斧に見事に接続、そして狐人が杖を振るうのに合わせて、光を通じて大斧が本来とは別の軌道を描いて、ドワーフへと襲いかかる。

 本来なら対象を光の腕で引き寄せるこのスキルを狐人は攻撃を投げ返す目的で使用したのだ。


「うおっと!」


 反撃として利用され、地面へと突き刺さった自身の武器を回収し、ドワーフは再び構える。その間に狐人は地面へと着地する。

 状況としては振り出しに戻ったという所だろう。だけど全く同じという訳では無い。


「〈ウェーブスパイク〉!」


 大斧を地面に叩きつける事によって生じた衝撃波が狐人を襲う。だが衝撃波は地面を進む程に勢いが落ちていき、狐人に届く前に砂埃となって消えた。


「……?」


 狐人からすれば謎の行動。

 だが、衝撃によって巻き上げられた砂埃の中から武器を振るうドワーフの姿が現れた。


「此れならどうだ!」

「…〈エンウィン〉ッ」


 完全な奇襲である其れを、狐人は咄嗟に付与スキルを行使して杖で受け止める。涼やかな光を纏った杖が相手の大斧とぶつかり、付与の効果も踏まえて砂埃を吹き飛ばす。











 そんな決闘を中継モニターを通して、別の場所の者たちが見ている。


「あ、詠のスキルに似た付与魔法だ」

「…こっちが炎に対してあっちは風?」

「やっぱり他にもあるのね。あの手の付与は」


 上位付与で色んな性質を乗せられる事が証明されているから、〈エンフレア〉のように其れらの性質を付与するスキルもあるとは思っていたけれど、こうして使われているのを見たのは割と無いのではないだろうか。


「杖で使える術技スキルって意外と多いんだね。杖を使うのは大抵術者ってイメージあるけど」

「…武器毎に指定が割り振られたのなら少しぐらいあっても不思議じゃない」

「だとしたら、意外な物も何かしらのスキル使えたりしてね」


 そんな事を言っている内に、各自が食べていた料理はどれもなくなっていた。試合中継はまだ続いているが、空腹度も十分に満たされた事なので、立ち去るには丁度良いかもしれない。

 一部はもう少し居座ろうとしていたが、邪魔になるので回収した。


「…折角だから、この街でも何かスキルを得られないか探してみる?」

「そうね。もしかしたらこの大陸で必要な物があるかもしれないからそうしよっか」


 決闘を幾つか観戦していた影響なのだろう。

 建物から出た後の私たちは自然にスキルを探して街中を歩くことにした。


 こう言った所で獲得出来るスキルは何が発端で得られるのかは正直な所分からない。掲示板でスキルに関する物が出ているかもしれないし、何処かのNPCから始まるのかもしれない。

 切っ掛けがどういう状態なのかが分からない故に、皆それぞれ街の色んな所に意識を向ける。


「何かある?」

「あ、何か訓練生募集とか書いてるけど」

「訓練生?」


 街中の目立つ場所に立てられていた掲示板を確認してみると、そのような記事が張り出されていた。その記事をさらに見てみると、募集の下に「基礎を学ぶ」だとか「基礎は大事」だとか、基礎を主張していると一目で分かるような事が添えられている。


「やたら基礎を推してくるね…此処もう三つ目の大陸なのに」

「基礎だからこそこんな場所で迄推してるんだと思うけど?」


 まあ基礎だからこそとは言ったけれど、その基礎らしきものを持たずに此処まで来た者たちが此処に数名居るのですがね。


「基礎と言うとやっぱりスキルか何かでしょうか?」

「そうなんじゃないの?特に初級とか」


 基礎と言うのだから、スキルだったとすれば地味だけど有用な効力のものだったりだろうか?縁の下の力持ちのような。

 効果の詳細はまだ分からないけれど、此れならやっておいて損は無いと思う。


「お、此処でも行われてるのか」


 邪魔になるだろうと掲示板から少し離れて話していると、他のプレイヤーも掲示板に書かれている其れに反応した。そのプレイヤーはその内容に少し心当たりがあるようだ。


「何、知ってるの?」

「ああ。能力底上げ系の技能を得られるやつだな。本当に別の大陸でも一から出来るのか…」

「? 此処だけのイベントとかじゃないの?」

「詳しくは俺も目を通して無いんだが、聞いた話じゃあ、此れで得られるのは初歩的な技能が大半だから、駆け出しの多い始めの大陸から段階を踏んでいくスタイルらしいんだが、スキルを形にしたタイミングがタイミングなだけに前線でも持ってない奴が多いとかで、数ヶ月は他の大陸でも初期段階から学べるようになってるらしいぞ」


 この会話がすぐ隣に居る皆にも聞こえた為、内容を調べる手間が省けた。要は大陸を戻らなくても基礎的な技能を得られると言う事らしい。


 その会話をしていたプレイヤーたちは会話を終えると、何処かへと行ってしまった。恐らく訓練を受けに行ったのだろう。


「底上げだって」

「…私たちも行きましょうか」


 一応掲示板の記事に目的地までの簡単な地図が載っているので、其れを頼りに私たちも指定場所まで歩いて行くことにした。




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