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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
再始動と新たな巡り
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119 灯台のオマケ

 展望台の一角でわんたんが何やら不思議な台を見つけた。


 その台は見たところ何かの仕掛けが施されているような様子はなく、雰囲気としては記念スタンプでも置いていそうな、腰の辺りと同じ高さの台。

 その台の上には予想通り、スタンプもしくは記念品が置いてある…という訳では無いようで、代わりとして何やら小さく映し出されていた。


 不思議な雰囲気のインテリアなのだが、このような物を何処かで見たような……


「なんか…こんなの前にもあったような?」

「言われてみれば…」


 一人がそう言うと、他の者も心当たりがあるような反応を示した。このような台に覚えがあるのは詠だけでは無かったようだ。


 此れだけの者に覚えがあるとなると、この世界である事は当然として、このような台を見るとすれば必ず通るような催しだろうか?だけどこの世界に其処まで決まった順路というものは存在しない筈である。大陸移動のボスダンジョンですらショートカットの登場によって通らない可能性が存在するのだ。

 そうなると、必ず通るようなものではなく、通っておいた方が得をするようなものだろうか?クエスト?


「あ、これアレか!」


 突如納得したような声を上げたAkariの手には一つのアイテムが。そのアイテムはAkariが台から映し出されている部分に触れた事で入手したアイテムだ。

 その光景を見て、皆もとある事を思い出した。


 此れは有益なアイテムを手に入れられるものだ、と。


 続々と投影されている部分に手を触れる一行。

 手を触れた途端、アイテムが取得されたというアナウンスが各自に表示された後、アイテム欄へと入ったと思われた其れが、揃って手元に具現化した。Akariが持っている物と同じものである。


「思い出した。プラクティスエリアだ!」


 言われてみれば、この手の物を以前に手に入れたのは序盤での事だった。

 確かあの時のアイテムは、スキルの少ない初心者のみが使用でき、使えばランダムにスキルを獲得出来るというものだった。今手に入れたアイテムも其れと同種のようなので使用すれば何かしらのアイテムが手に入ると推測出来る。……というか皆もアレを経験してたのね。


「【秘伝の書 "促進"】って名前みたいだね?」

「以前は"序"だった気がしますが、順番では無いのですね」


 こういう順列で使われる"序"の次は"破"とかそのようなものだった筈だから、少なくとも前回の書の続きでは無いね。同種で間違いは無いけれど。

 まあ考えてみれば前回の物は使用出来る者に制限が存在したから、同じような制限だと使えない恐れがあったかもね。場所が場所な事も踏まえて。


「今度のは、スキルを一つは覚えてないと使えないみたいだね」


 一応、使用条件はあったらしい。でも此処まで辿り着けるプレイヤーにとってはまだ緩い条件である。


「促進って言うから、既存のものの成長を促すとかなんじゃない?」

「確かに其れなら納得ですね」


 つまり、今回の書は使用すると、既存のスキルの一つ上のスキルを手に入れる事が出来ると踏んで良いのだろうか。

 正直な事を言うと、スキルがまだ無いゼピュロスフェザーに使えれば良かったのだが、使えないのなら仕方が無い。


「其れなら、このアイテムを大量に使えばかなり強くなるんじゃない?」

「…スキルはかなり増えるだろうけど。同じ系統ばかりで幅は其処まで広がらないよ?」

「其処は後にストックしておけば良くない?」


 そんな返答をしたわんたんは早速とばかりに再度台に向かって手を伸ばした。だけど今回は取得を示すアナウンスは表示されず、代わりに別の表示が現れた。


「なになに…、既に取得済みです。次に取得できる迄…って」

「…先手打たれたね」


 どうやらこの手の企みは既に読まれていたらしい。

 だけど完全に防いでいる訳では無く優しさも感じられ、取得は一度限りでは無く、時間が経てば再度入手する事は出来るらしい。とはいえ、その時間は其れなりの長さに設定されているので今すぐ増やすと言うことは無理なようだ。…時間の長さで次を忘れそう。


「しょうがないか。まあ増やせないなら今ある分だけでも使いますか」


 わんたんが秘伝の書を開くと、皆も揃って手持ちの秘伝の書を開いた。その瞬間に其処まで広くない展望台の中に煙が充満した。前回は此処からスロットが登場していたが、今回は何も出てくる気配が無い。その代わりと言って秘伝の書を開いた一同が淡く光り出す。


「おわっ!?」


 恐らく光っている間に所持スキルからランダムに選んでいる事だろう。そして選定を終えたのか光は薄れ、その直後にアナウンスが表示された。



【スキルを獲得しました】



「あ、術技スキルだ」

「私も」


 どうやら皆も無事にスキルが手に入ったようだ。其れと周りの報告を聞いていて思ったけれど、割と術技スキルが多いようだ。段階的な理由なのだろうか?


 かく言う詠も手に入ったスキルは術技の方だった。




――――――――――――――――――――――――


○エレメント・カーニバル

 効果:何が付くか分からないお祭り付加魔法。

    自身を中心とした範囲内にいる全ての味方の攻撃力を上昇させ、

    攻撃に一定時間、ランダムでいずれかの性質を付加。

 性質:【火傷】【凍結】【麻痺】【石化】【毒】【鈍足】【封印】【呪い】

 消費MP:50

 熟練度:☆☆☆☆☆

 レベルボーナス:Ⅰ


――――――――――――――――――――――――




 此れはアレだろうね。持っている付与魔法(効果範囲からして〈フィーア・エンフローア〉の方)の派生だろう。あちらは性質を一種類付与するだけだったが、今回のスキルはやたら博打色が強いようだ。説明自身も何が付くか分からないお祭りって言ってるし。


「此れで、此処で出来る事は終わりかな?」

「そうね」


 スキルの習得も終わり、いよいよ此処で行える事は終わりだろう。そもそもオマケみたいなもののようだから其処まで多くないのだろう。


「時間も頃合いだし、町に戻って今日はログアウトかな?」

「もうそんな時間?」


 気付けばリアルの時間も其れなりに過ぎていた。思えば、船旅でも時間を使っているので進行の割に時間が進んでいても不思議では無いか。

 

 そんな訳で、一行はもうログアウトをする為に灯台を下り始める。


 その道中。


「で、結局なんであんな所に秘伝の書があったんだろう?」

「あんな所まで立ち寄った者への褒美とか?」

「褒美って」

「まあこんな隅まで来るような人少なそうだからね、隅まで見た人が得するような事があっても良いんじゃないの」


 そんな会話をしている間にも一行は町まで戻ってきたのだった。




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