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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
再始動と新たな巡り
120/237

112 VSイアード・アドネー 中編

天の杯こっわい(独り言)

 突如として此方の実力を測ると始まったイベントバトル。三回ある挑戦権の中で相手のHPを半分削れば良いというもの。

 現在、先発として出たわんたんとイアード・アドネーの戦いは、わんたんが相手のHPをそこそこ削って勝利へのパターンに填まったと思った矢先、相手が防御手段を取ったといった所。そう簡単には勝利には進めないようである。


「何アレ!あんな防御札あるなら保護を求めなくとも自分で身を守れるじゃん」


 外野では戦闘を見学していたAkariがそう叫んだ。

 まぁ、確かに身の安全の為に保護を求めていた立場の割には手札が多いようにも思えるが、護身的には其れくらい出来ても不思議ではないのかもしれない。それらを使っても絶対に守れると言う訳でもないだろうし。


 そんな事を考える詠たち一行の目の前では、絶対では無い事を示すように防御を解いているイアード・アドネーが居る。今の防御時間は二十秒に満たないぐらいかな。やはりずっと閉じ籠もっている訳では無いらしい。展開時間に上限があるのか、状況の硬直を避けただけなのか、どちらにしろ物事は動く。とはいえ……


「あ、またあの壁…」

「HP由来の確定行動…でも無さそう」

「何というか、あれが難所かもね」


 どうやら一度限りでは無いらしく基本行動として防御手段を併用するようになったようだ。其れも、ある程度近付いていると防御を取っている様子だ。その反対に必要性が無い為なのか、離れれば攻撃を優先して防御の比率が極端に下がるようだけど、接近戦に拘っているわんたんには厳しい状況である。

 今分かる範囲では、防御行動をする場合は予備動作のように直前に何も行わない空白の時間が生まれるようで防御直前は認識し易い上に、防御と同時に攻撃をしてくる事は無い。


「遠距離から攻撃が出来ればもっと楽に削れると思うけど…」

「使えない訳では無いと思いますが…」

「そもそも離れても鞭が来る」


 防御に関しては切り崩す術が今の所見当たらないけれど、攻撃も来ないその間に態勢を立て直す事も出来る。だけど少しでも距離を取れば防御から攻撃に切り替えてくる。

 今目の前で相手をしているわんたんも、防御を展開されて、どう打破しようかと様子見がてら少し歩いていると気付かぬ内に少々離れてしまったが為に、再び蔓の鞭に晒されていた。


「やっば」


 蔓の鞭に晒されながらもわんたんは再び距離を縮めようと動き回る。初撃とは違ってその動きも少しではあるが慣れを感じさせるような動きだ。接近し、繰り返しのように再び相手に攻撃を繰り出すと、其れも繰り返しのような防壁に止められる。だけどわんたんは焦らない。


「放っておけば、解けるのはもう分かったよ」


 その場で待ちの状態。

 厄介な防壁ではあるけれど数回見ている内にパターンは見えてきていた。一定範囲内に入られれば使い出す防壁だけども、その範囲にまだ敵が居たとしても一定時間が経過すれば自動的に防壁は消失する。問題はその時間の最大値がまだ把握できていないけれど、出来て無くとも待ってれば防壁は消える。

 暫く待つと、その考えを証明するように、わんたんが待っているにも関わらずイアード・アドネーを覆っていた防壁は一度リセットされる。


「〈クロスエッジ〉!」


 其れを認識した途端、わんたんはスキルを発動させる。両手に構えた二つの短剣似光が宿り、現れたイアード・アドネーに対して十字状の斬撃を繰り出した。その斬撃はイアード・アドネーに命中し、HPを削るがまだ足りない。わんたん自身も其れを知ってか知らずか、更に〈ラインエッジ〉で追撃と共に突き抜ける。


「此れでどうだ?!」


 スキルの動きから解放され、直ぐさま相手のHPを確認する。だけどまだ足りない。わんたんはもう一度特攻を仕掛けようと走り出す。


「どっち!?」


 走り出したと同時にイアード・アドネーも何か動いている事が見えた。此処で相手が取る行動は攻撃か防御なのだが、どちらなのかが判断できない。だけど今更反応するには遅かった。

 わんたんが短剣を振るおうと踏み込んだ途端、その足下から蔓が出現した。そして蔓はカウンターのようにわんたんに直撃して吹き飛ばす。


「…うげっ!」


 吹き飛ばされて空中にいる僅かな時間にも、鞭と化した蔓は撓り、わんたんを地面に叩きつけた。其れによってわんたんのHPは半分を僅かに切った。




――――【敗北】――――




 突如として空中にその文字が表示されると、切り替わるように蔓の鞭は地に戻り、イアード・アドネーも沈黙した。


「あー、もうちょっとだったのに」


 地に伏した身体を起こしてわんたんが腕を軽く回しながらそう言った。少し動きが鈍く感じるが、ゲーム内であるお陰もあり、まだまだ動けそうである。とはいえ、その頭上に見えるHPは半分を切っている為、挑戦としては敗北である。


「ごめん。どうせなら決めちゃいたかったんだけど」

「流石にあの不意打ちは仕方ないよ」

「其れに、色々分かった」


 わんたんが戻ってくると、一行の前には再び挑戦者の選択肢が出現する。どうやら続けて戦う事も出来るようで、わんたんの名前もその選択肢に含まれている。だけど流石に休ませようと続投は控える。


「はい、ジャーンケーン――」


 まぁ、決め方は変わらないんだけどね。


「あ、私かー」


 次の挑戦はAkariとなった。

 始めは怖じ気付いていたが、先程の戦闘でイアード・アドネーの出方をある程度見れた為か、随分と余裕が見られるようになった。確かに全てかは分からないけれどあれだけ確認出来れば立ち回り易いだろう。


 だけど不安が有るとすればAkariに遠距離攻撃手段は殆ど無いと言うことである。あの防壁は待っていれば解除されるという事は先のわんたんが証明したが、そのわんたん以上に遠距離攻撃が使えず、獣人程の俊敏性も持ってはいない。そもそも近付けるのかという問題になる。


「特攻すれば何とかなるっしょ」


 そんな事を言いながらAkariは前に出た。その手には以前から大きな変更の無い刀が握られている。

 挑戦者を選択したことで、イアード・アドネーも其方に意識を向ける。その頭上に表示されたHPは少しばかり回復しているとはいえ既に減少した状態であった。どうやら先程の結果が少し反映される仕組みのようで、ダメージを与えられる場合は挑戦を繰り返す程に楽になっていくようだ。


「マジか!?」


 思っていたよりも楽勝だとAkariも思ったのだろう。此の油断が後々に引かねばいいが…。


「其れじゃあ…行くよ!」


 そう言ってAkariが駆け出すと同時にその駆けた先から蔓の鞭が現れる。そしてその鞭がAkariに向かって強く振られるが、Akariは避けようとはしない。それどころか――


「だらっしゃああ!」


 Akariは向かってくる蔓の鞭に対して、身体を半身逸らして手に持った刀で受け止めるかのように思いっ切り迎え撃った。


「阿呆かぁあああ!」


 そんな光景にツッコミが入るが、意外にも刀で鞭を防いでいた。連続で向かってくる鞭に対して斬るではなく弾くように対応していく。強く叩きつけられる衝撃が伝わって手が痛いような仕草を取ってはいるが、HPは其処まで変動していない。


「…思いの外有効ですね」

「でも足が止まってたらあまり意味が無い」


 確かに接近戦を仕掛けようとしている筈なのに、防御に回って足を止められていては何時までも近付く事が出来ない。


「近付けー!」

「分かってる…って!」


 Akariも忘れてはいなかった。直前に迫った蔓を弾くと同時に距離を縮めようと走り出す。其処まで速くは無く妨害もあれど、その度に攻撃の隙を見つけては距離を縮める。


「此れは…防御か!」


 ある程度近付くとイアード・アドネーが少し動いた。Akariは其れを迷った末に防御と判断すると、予想の通りにAkariの正面に蔓の防壁が出現する。読み通りに出現した防壁にAkariは落ち着いて防壁の前で構えを取る。剣先を地面に付ける程に低く構え、その時を待つ。


 そして時が過ぎて防壁が解かれた瞬間に、Akariはその刀を振り上げた。


「くらえ…〈イグニスラスト〉!」


 刀が地面を削った際に小さく生じた火花が大きな炎となり、刀を振るった軌跡が炎で染まる。鞭のように撓って見えるその炎がイアード・アドネーを絡め取ってそのHPを焼いていく。




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