12 初めてのスキル(実践編)*
「っと、早速出てきたよ」
場所は変わり、街を出てから少ししたくらいの木々の多い場所。このような場所に来たのは勿論クエストの為である。
クエストには種類が同じでも詳細情報の書き込み等が違うものがある。例えば採取で同じ物を取ってくるにしても、何処かの何かと指定の他に場所を推奨してくるものもあれば、何かとだけ指定しているものもある。難易度が上がる程詳細は少なくなっていくらしい。お勧めの場所迄書いているのはやはり初心者向けという事か。
そんなクエストの詳細情報に従って移動してきた訳だけども、来て早々モンスターの奇襲にあった。
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モンキー / Lv 4
プラント / Lv 3
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現れたのはどう見ても猿と動く草だった。地味に初めてのスライムじゃないモンスターな気がする。レベルはそれほど脅威ではなく、数でも勝っている。突然の攻撃にはAkariが力任せで押し返してそのまま戦闘に入る。
戦闘と言うことで思い出したけれど、まだ覚えたスキルを使っていなかった。良い機会だから使ってみよう。えっと…自分に対して使う場合はどうすればいいのだろう?
「こう?…《エンフレア》っと」
探り探りウインドウを呼び出しつつスキルを唱えると、自分の足元から火花のようなものが上がり、武器がオレンジ色のオーラに薄く包まれる。時折武器を覆うオーラが炎のように揺らぎ昇る。
これで付加できたのか分からないので試しに動きの遅くて当て易そうなプラントに対して矢を射る。すると射られた矢がプラントに命中した瞬間、その接触箇所から小さな炎が昇る。HPも多めに削られた。
「うわっ、何か燃えた!?」
付加された攻撃にはああいう演出があるらしい。これは分かり易い。付加のお蔭か、二撃でプラントのHPは0になった。
「そりゃあ!」
同じくして、動き回る猿をなんとか撃破したようだ。ずっとは見ていなかったけれど、先輩が何度か的確に猿の足を止めていたお陰らしい。
「さて、次行ってみよー」
◇ ◇ ◇
「クエスト内容の薬草っていうのは宝箱とは違って道の端に偶にあるオブジェクトに触れば集められる」
先輩に言われるように、他とは輝き方が違う草に触れるとシステムメッセージが表示された。アイテム判定を受けているようだ。そのまま摘み取って詳細を確認するとクエストに書かれていたアイテムだった。こういったアイテムは素材アイテムに分類されるらしい。
「更に言っておくと、そのアイテムならさっき出たプラントも偶に落とすことがあるわ。けどこっちの方が数段安全」
確かに地道な分時間は掛かるけれど何度も戦闘をする必要が無いから倒される危険もなく安全。仮に戦闘を交えたとしても其れは其れで素材の入手方法が増えると言う事なのでクリア自体は早くなる。採取クエスト自体クリアがし易くされているようだ。
「ねえ、これが薬草ならプレイヤーにも使えたりしないの?」
「そのままだとただの素材アイテムだから使えないわ。数があれば作成で回復アイテムが作れるけど」
流石にそのままだと使えないようだ。それもそうか。Akariの反応的には使えたのなら予備の回復アイテムとして集めようとしたんだろうけど。
「採取の方はこれを集めればいいけど、討伐の方はどう探せばいいんですか?」
「討伐にもパターンがあるけれど、今回の討伐依頼は特定箇所に配置されている筈だから探して倒せばいい」
つまり今回の討伐は最低一回の戦闘で良いという事らしい。クエストによっては倒す数が細かく指定されていたりするが、今回はそんな事はない。いきなり"数十体狩れ"とかでは無くて良かったと思いつつ指定アイテムを採取を続けていく。そうして採取も終わり、後は討伐だけ…
「ねぇ…」
「何?」
「多分アレじゃない?」
「野犬…まぁ…合ってなくもないかな…」
物陰から討伐対象と思われる敵影を確認。野犬というより…すごく…狼です…。一般的な犬のサイズよりも少し大きく色も灰よりも明るめな狼と、その近くに控える二匹の灰色の狼。群れで行動しているのだろうか。
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パックウルフ/ Lv 8
ウルフ / Lv 5
ウルフ / Lv 5
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他に比べて一頭だけレベルが違う。やっぱりあれが親玉ということなのか。サイズとしては其処まで怖気付くようなサイズでは無いが、此処までの敵の中では一番素早いのは確かだろう。其れだけでもかなり厄介。
「それじゃあ…まずは一発行きますか」
Akariは良い機会とばかりに〈秘伝の書"序"〉で手に入れた〈無音〉を使用して物陰から出た。余所を向いている狼たちに近付くAkariからは確かに音は出ていない。ゆっくりと近付き、背中の鞘から引き抜いた大剣を振りかぶり先制攻撃を仕掛ける。直前の気配を察したのか、二匹の狼は距離を取るが、残りの一頭のウルフは反応が遅れて身体の側面に大剣が叩き込まれる。かなりのダメージが入った。
「私たちも行かないと…確か仲間にも出来た筈、《エンフレア》!」
意識を向けながら唱えると、Akariの足元から火花が舞い、大剣が燃えるようなオーラを纏う。それと同じタイミングで走り出していた先輩がボスを捉える。
「ッ…《スパークル・エッジ》」
使用したのは決闘の時に使っていたであろうスキル。刀剣に黄色の閃光が纏う。襲い掛かるウルフを避けながらも放たれた雷のような一撃は正確にパックウルフへとヒットした。やはり、動きを止めるような追加効果があるのか、攻撃を受けたパックウルフが次の行動に移るのがワンテンポ遅れる。その間に先輩は再び同じスキルをパックウルフに叩き込む。
やっぱり慣れてるなあの人。こちらに攻撃を向かないようにするためなのか、他からの攻撃を躱しながら親玉だけを的確に攻撃してる。その甲斐があって親玉は先輩だけを狙っていて、こちらは他の敵に集中できる。
Akariを援護するように狙撃する。敵の俊敏性もあって命中率は其程良くはないけれど、当たろうが外れようが敵の動きを阻害出来ており其処にAkariが攻撃を入れる。一応連携の形にはなっており、まずは一匹を撃破。
次に移行する前に自分にも〈エンフレア〉を唱えておく。其処から二人で燃えるような連続攻撃を繰り出して二匹目も撃破。
後は親玉だけだと先輩の方を見ると、先輩は一度も攻撃を受けておらず何度も攻撃を繰り出している。だけど、親玉のHPはまだ半分も残っていた。
「危なくなさそうだけど手伝った方が良いよね!」
苦戦しているようには見えないけれど、頼りっぱなしは悪いので、とりあえず効率を上げるために先輩にも〈エンフレア〉を唱え、援護射撃を始める。
援護を認識すると此処ぞとばかりに先輩が新たにスキルを発動し、パックウルフを連続で斬りつける。斬りつける度に付加によって炎が上がる。更に流れるように刀剣を地面に突き刺したかと思うと周囲に衝撃波が放たれ、パックウルフは弾き飛ばされると共にポリゴンの光となって消滅した。
【"畑を荒らす野犬"を討伐しました。】
【☆レベルアップ☆ ポイントを振り分けることが出来ます。】
戦闘の終了と共に討伐完了が告げられた。
クエストは基本的に、"受ける→実行→報告"の工程でクリアになると先輩が言っていたので後は戻って報告だけである。
「さて、帰ろっか」
「待って……《エスケープ》」
討伐を終えて街へと帰ろうとAkariが歩き出すと、先輩がどういう訳か其れを止めた。そして何をしているのかと思っていると次の瞬間、私たちは森の外のフィールドに立っていた!?
「え、今の何!?」
「移動!?」
「今のはダンジョンの外に瞬間移動する魔法。それで次がダンジョン以外から街へと移動する魔法…《テレポート》」
◇ ◇ ◇
【クエスト『畑を荒らす野犬を討伐してほしい』をクリアしました】
【クエスト『森に生える薬草を集めてきてほしい』をクリアしました】
先輩の唱えた瞬間移動によってあっさりと街まで戻る事ができ、ギルドの受付で手続きを済ませるとクリア判定が出されてパーティ全員に報酬として、そこそこのお金やアイテム、経験値が貰えた。Akariはレベルが上がった。
「さっきの転移魔法ってどうすれば覚えられるんです?」
「あの二つの魔法はここより先の街でそれぞれクエストの報酬として得られるわ。便利だから覚えておいて損はないけど、別に覚えなくても他の大陸で転移アイテムが売っているからそれを使うのもあり」
「そうなんだ…」
Akari、スキルを増やしたいみたいだけど転移魔法はまた今度ということで。というか先輩が居る間は必要ないと思うけど。
ステータス
未所属
詠 / 狐人
Lv 7
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HP: 90 (HP+150) / MP: 173
STR(攻撃力):10 (STR+16)
VIT(耐久): 10 (VIT+10)
INT(知力): 24
MND(精神力): 29 (MND+5)
DEX(器用さ): 20
AGI(素早さ): 38 (AGI+10)
LUK(運): 17
BP : 6
装備
「ノーマルアロー」(STR+8)(重複)
「ノーマルダガー」(STR+8)(重複)
「旅立ちの帽子」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのシャツ」(VIT+5、HP+50)
「旅立ちのロングスカート」(MND+5、HP+50)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
未所属
Akari / 鬼
Lv 8
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―――
HP: 185 / MP: 96
STR(攻撃力): 34 (STR+15)
VIT(耐久): 27 (VIT+20)
INT(知力): 17
MND(精神力): 18
DEX(器用さ): 22
AGI(素早さ): 24 (AGI+5)
LUK(運): 12
装備
「ノーマルブレード」(STR+15 AGI-5)
「ノーマルシャツ」(VIT+10)
「ノーマルズボン」(VIT+10)
「ノーマルブーツ」(AGI+10)
ステータス
未所属
せんな / 天使
Lv 6
【道を切り拓く者】
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装備
「白紙の妖刀 "白月"」