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電子世界のファンタジア  作者: 永遠の中級者
再始動と新たな巡り
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閑話 クリスマスイヴオフ会 (午後)

「結構美味しかったね」

「そうだね。いや~、ケバブ作りたいとか言った時はどうなるのかと思ったけどねー」

「いや、言ったの君じゃん」


 霞ヶ丘邸で行われる『Celesta Sky』オフ会は午後の部に突入。此処までのオフ会内で起こっためぼしい出来事と言えば、本当に始まったトランプ決戦だろうか。ゲーム内容はローカルルール有りの大富豪だったのだけど、どういう訳かよく混ぜたにも関わらず皆配られた手札が偏っていて、一ゲームの中で何度も革命が起こされるという出来事があった。こんなに起こったら経済も大変じゃん等の発言もあり、結果的には暢気に其れを言っていた朱里が負けていた。

 他にはババ抜きをした時に他はすぐ抜けたにも関わらずに最後の二人が中々終わらずにジョーカーが動き回った事だろうか。コレに関しては謎の心理戦が巻き起こっていたのが原因で泥沼化していたような気がする。今思えば、晩ご飯の献立がアゼルバイジャン発言は何だったのか。アゼルバイジャンは料理名ではなく国である。其れで何故揺さぶられたのかも謎である。そしてまた朱里が負けた。君、こんなに弱かったっけ?

 これだけだとトランプしかやっていないように思われるかも知れないけれど、他の事も当然あった。特筆しないだけで。一つ挙げるならば直近の行動に繋がってくる夕食の件だろうか。食材の買い出しには全員で行ったのだが、合宿みたいだからと自分たちで夕食を用意することだけは決めていたらしいが、肝心のメニューを決めていなかったので少々時間を費やした。もとい迷走した。結果作るメニューはビーフシチューに決まり、不安は有ったものの、未経験者も居るにしては満足のいく出来のものが出来上がった。なお、ケバブはケの字も作ってはいない。


「じゃあ食器は私がやっておきます」

「あ、私も手伝います」


 閃奈が食事後の食器を片付けようとしているのを代わるように、凛が立ち上がって食器を運ぶ。お世話になる身なのだからこれぐらいはした方がいいだろう。するとそれに続くように憂那も同じように食器を運ぶ。他のメンバーは特に動かない…、閃奈を止めているとでも思うことにした。現に会話をしていたので。

 凛と憂那の二人が食器の片付けで輪を離れた後、残りのメンバーは自由に寛いでいた。朱里は凪と閃奈と話をしており、遥は連絡が来たとかで返信がてら携帯を触っている。


「ビーフシチューってデミグラス系だよね?ならそのままソースとしても使えるの?」

「確かにソースとして使ってるメニューを出してるお店もあった。オムライスとか」

「ビーフシチューならまだ余ってるよ」

「なら明日の朝はそっち系で行こう!」


 会話と言うよりは、途中から朱里が喋って凪と閃奈が相槌を打っているように見えるのだが気のせいだろうか。ちなみに朝食の話になっていたが途中から口を挟んだ遥が「重い」と一蹴していたが、どうなることか。

 ふと、思ってみれば、この三人だけと言うのも変な組み合わせな気がする。挟んだ後また抜けたとはいえ今のように、三人にもう一人が加わってというのはよく見るが、三人で話しているのは珍しい。とはいえ其処まで不思議がるものでも無ければ、凛が知らないだけだと思うが。なので皆の方は気にせずに片付けに戻る。


 皆それぞれ進めていると、携帯に意識を戻した遥が突然声を発した。


「あ、終了時間公開されてる」


 どうやら届いた分の返信はもう終わっているようで、別の事をしていたらしい。言葉の内容的に何処かのページを閲覧していたようである。突然発したことで周囲の視線が遥へと集まる。


「終了時間って……オフ会の?」

「違う違う、誰が公開するのそれ。…じゃなくてさっき言ってた大型アップデートの奴よ。公式から告知されたの!」


 大型アップデートと言うことは、午前中に話に出ていた『ゲーマーズ・ドライブ』の長期メンテナンスのことだろう。どうやら其れについて情報が流れたようだ。それも誰かが流した噂ではなく、公式からの確実なもの。


「え、明けたの?」

「明けてないけど、明ける目途が立った」

「…ホントだ」


 凪も検索して同じページを見たのだろう。


「其れで、いつになったの?」

「其れがどうやら今日一杯で終わるらしいんだよね」

「と言うことはクリスマスオープンになるんだ?」

「ゴルフみたい」

「何故ゴルフ…」


 ゴルフツッコミに何やら不満があるような様子だが、誰も其れに気付いていないのでツッコミの関してはそれ以上のものは無かった。其れよりも今の関心は終了時間に向いている。


「明日かぁ」

「其れならオフ会の終わりにでも突入する?〆にでも」

「〆って…」


 案の定の提案だったけれど反対するような意見は出なかった。その代わりといって、各自の予定や帰りの事も考えて、そう長くはログインしないという約束で予定が決まった。終わった後にまた取りに戻ってこないといけないが、荷物を持ちながら行くわけにも行かないからね。電脳世界に入る際はある程度軽装が望まれるからね。


 片付けをしていて声だけ参加させていた凛と憂那も改めて輪に加わる。すると代わりとばかりに今度は朱里が輪から外れた。そして何処かへ行ったと思ったらすぐに戻ってきた。そしてその手には何処かのお店のものと思われる袋があった。ついでに仮装道具と思われる白い付け髭も付けていた。


「ふぉっふぉっふぉ、皆さん何かお忘れではないかね?」

「何かあった?」

「…枕とか?」

「…あの格好には誰も触れないのね」


 勿体ぶって皆の会話を聞いていた朱里がようやく答えを言った。


「折角の聖夜ですよ…此処はケーキで祝福しようではないか!」


 そう言って朱里が袋から取り出したのは白い箱だった。皆は納得したような声を上げて朱里が用意した其れを見る。

 なお、ケーキで祝福と言った割に言った本人自身は何故か気が抜けて見える。そしてゆっくりと箱の上部を開いた。


「…って言っても、シュークリームなんだけどね?」

「「「違うんかい!」」」


 先程の言葉は何だったのか、暴露と共に一部が一斉にツッコんだ。

 箱の中身を覗き込んでみると入っているのは、確かにケーキでは無くシュークリームだった。ケーキと言った後の此れだから反応は其程良くないのかと思われたが、此れは此れで感触は良かった。サイズが手頃だからかな?一応食後だし。


「そういえば帰りに一人寄り道をしてたと思ったら、此れが目的だったのね」


 実は食材の買い出しは全員で行ったのだが、帰ってきたのは割とバラバラだった。大半は一緒に戻ってきたのだが、今行ったように朱里が途中で抜けた為に遅れて戻ってきたり、他にも何かを見つけただとかで少しだけ遅れてくる者も居たのである。


「さて、全員に行き渡ったかい?」


 自分の分のシュークリームを手に取った上で朱里は皆を見た。周りの皆も自分の分を同じように取っている。丁度の数を用意したようで、皆が順番に取り終えると箱の中は綺麗に無くなっていた。


「それでは、聖夜を祝して……君の瞳に、乾杯!」

「いや、杯要素は何処にも――」

「「「かんぱーい」」」


 他にもツッコミどころは有ったのだけど、そんな事を一切気にせずに皆はシュークリームに齧りついた。







 なんだかんだで、デザートも含めた食事も終わり、今は順番にお風呂の時間となっている。霞ヶ丘邸のお風呂はそこそこ広いそうなので、折角とばかりに一度に二人ずつ入ることになっている。現在は朱里と遥が入っているので、その間他の面々は待ちである。


「静かぁ。」


 肯定してしまうのもどうかとも思うけれど、全くもってその通りである。恐らくと疑う迄も無くこのメンバーの中で一番テンションが高いのは今お風呂に入っている二人であろう。気付けばもうウトウトしている子も居た。静かな訳である。


「お待たせ!」

「良いお湯だったよ!」


「それじゃあ次」


 二人が戻ってきた事なので、入れ替わりで次が立ち上がる。順番は既に決めているので慌てたりはしない。慌てるような事はそもそも無いけども。

 自分の用意を持って立ち上がった凪は、ウトウトしていた憂那を揺さぶって起こした後、二人でお風呂へと向かった。


「そういえばさ、脱衣所に姿見があったんだけど、その鏡に何故か布が掛かってたんだけど」

「布?ちなみにその姿見は?」

「捲ってみたけど普通の鏡だったんだよね?」


 すると、閃奈が「忘れてた」と呟いたかと思ったら立ち上がり、何処かへと向かっていった。恐らく脱衣所に行ったのだろう。そして少しの時間の後、何も無かったかのように閃奈が戻ってきた。


「何だったんです?」

「あの姿見、いわく付きだから……冗談だけど」

「「冗談かい」」


 閃奈の謎の冗談の後、普通に雑談が始まった為に、対して触れることなく姿見の話題は流れていった。

 (後ほど、順番の時に姿見を見たが何処も変な箇所も無ければ布も無かった。忘れてたという呟きから察するに何かを掛けたまま忘れていたのだろう。)


 雑談後、凪と憂那も戻ってきたので、入れ替わりで凛と閃奈も脱衣所へと向かう。残りは二人だけなので、別に一人ずつでも良いかもしれないが、此処まで来たら後はノリである。


「ふぅ……」


 湯船に浸かると同時に声が漏れる。静かである。

 聞いていたが霞ヶ丘邸のお風呂は確かに広い。一部がというのではなくお風呂場全体が。なんというか流石である。

 隣には同じように閃奈が湯船に浸かって惚けている。


「そういえば訊いていませんでしたけど、どうして今日は会場を此処にしたんですか?」


 凛は話題として気になっていた事を切り出した。オフ会を計画していたのは朱里たちが中心となっての事ではあるが、結果的に場所に決まったのは霞ヶ丘邸だ。それも先輩本人から提案が有った故。本人としては本当に軽い気持ちだったかもしれないが。


「…気紛れ?」


 本当に軽い気持ちで提案していたようだ。さぞ採用されたときは驚いた事だろう。


「…本当は私にも分からない。私もオフ会は初めてだから。」

「そうなんですか?『ゲーマーズ・ドライブ』の中でそういった計画とかは…」

「呼ばれて加わることもあるけど、私は比較的ソロでしていたから」


 そういえば閃奈は凛たちよりも先にプレイしているようで先人たちの中に知り合いも居るようだが、凛たちと組むまで何処にも所属してはいなかった。ソロで行動するプレイヤーも珍しくないので不思議では無いのだけれど、それ故にオフ会にも参加する事は無かったと。


「まぁオフ会といっても、私たちも正解が分かってないので騒いでいるだけなんですけどね。」


 そもそもこのメンバーが集まっただけで、『ゲーマーズ・ドライブ』に関するような事はあまりしていないので、其処まで概念に囚われる必要は無い。皆も割と自由にしてる。


「でも…偶にはこういうのも良いと思いますよ」

「…うん」


 二人はのんびりとお風呂を堪能した。

 お風呂から出ると皆が何かをし始めていたのでそのままその輪に加わった。騒がしいオフ会はまだまだ続きそうである。




作中でもあるように、明日も更新しないとなぁ…

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