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真雪のパーティー仲間と合流――作戦開始

 朝に合流するなり、真雪は元気だった。にこにこと愛想の良い笑みを向けていて、隣にいる二人の男女も元気が良さそうだ。女の子の方とは初対面なので、それなりに礼儀を心得た挨拶をすると、女の子は


「堅苦しいのは抜きでいいよ!」と朗笑した。


 美闇は、外見に防具が見えないので、つけてないのだろうかと思ったが、服の下に着ていたり、それなりの対策をしているらしい。

 真雪がこっそりと「防具を買うお金を今集めて居るんです」と耳打ちしてくれた。

 その様子を見た貯金中の彼は、狼に食いかかってきた。


「狼だって、防具ねぇじゃん」


「僕だって金が無いのは一緒だよ。忘れたのか、僕がパーティに参加する理由」


 貧乏パーティをしばらくの間、我慢しよう。

 貧乏は貧乏なりに楽しいのを、狼は知っている。足下に兎が来たのを見ると、真雪が兎を抱えて、目をあわせる。兎の耳はひくひくとしている。


「おはよう、にっくん。今日から宜しくね? 貴方のご主人様、借りるよ」


 兎はどうも真雪の前では可愛いふりをしたくないらしく、暴れて抜け出ると、こっちのほうがマシだよと言わんばかりに、女の子、香苗の方へすりよった。

 香苗は不服そうな真雪にけらけらと笑ってから、抹茶を抱える。


「不思議な感覚だね。アタシ、動物に懐かれたこと、あんまりないの。皆真雪にいっちゃうから。あいつを嫌がるなんて、あんた見る目あるじゃないの、にっくん」


 抹茶は香苗にならぶりっ子が出来るのか、香苗の腕の中で心地よさそうにする。

 それを見て美闇は自分と狼は物理で、真雪は魔法担当だから、香苗に抹茶を預かって貰った方が良いのではと提案した。


「本当は冒険にこういうの連れてくるの、オレは反対なんだが、いざというときのための保存食として許そう」


 それいいな、と狼は建前とかを抜きに思ったのだがそれではペット愛好家ではないし、抹茶の役割を失う。軍との通信機を使えないときの連絡は、彼がするのだ。


「まぁ、あんまり構い過ぎると嫌われるから、時には離して放っておいてやってくれ。最後には僕の所へ戻ってくるから」


「兎なのに猫みたいなのね」


「猫っかぶりが巧い仔だからな」


「猫って女の方が好きなんだろ、何で狼が好かれるんだよ」


 美闇が真顔で問いかけるので、狼は脳内で美闇を完全に馬鹿だと確定した。

 抹茶が兎なのだから猫は関係ないし、そもそも狼は女だと何度言っただろうか。拳がこきりと鳴る。力が増してるのが判る。その握り拳を見たからかは知らないが、すぐに真雪が馬鹿、と美闇を殴る、杖で。


「真雪……お前ッ殴るんじゃねぇよ」


「自分の言葉を考えなさいよ、単細胞。殴られても文句言えないわよ」


「何だよ、二人してそいつの味方しやがってよー! 冗談ってもんがわかんねぇやつらだなぁ」


「真顔で言えば、冗談も冗談じゃ無くなるよ、馬鹿剣士」


「狼、戦闘で間違えて殺してもしらねぇからな!」


 そう怒鳴ると美闇は先導をきってさっさかと歩き出してしまった。狼は、ただ子供が意地を張るのを見てる気分だった。

 狼とは雲泥の差なのに、ライバル視されるのは何だか哀れだ。かといって狼の本当の腕前を見せるわけにもいかず、彼は狼と同じレベルぐらいかちょっと自分のが下だと思えるくらいの腕前に調整しなければならないのだ。



(真雪どころか他の奴の面倒も見るなんて、厄介な任務だ)


 狼は溜息をついて、美闇に続いて移動する。自分は攻撃面だから美闇とは離れていても他の二人とはつかず離れずの位置がいいのだろうと思い、ゆっくりと歩く。

 香苗は後ろで真雪と何かを話している。記録して置けよ、と此処からでは見えない軍の者に、念じとく。

 こんな少人数とはいえ、単独行動ではなく動くのは何年ぶりだろうか、等と感慨深く思う心は狼にはなくて、ただ居づらかった。


 三十路間近と、十代という壁を狼だけが感じていた。他の三人は気にもしていないのに。その心境を知っていたら知っていたで、若い者はいいねと捻くれるだろう。狼の性格からいって。


(……庵と千鶴が気になる。千鶴は、受けざるをえないだろう。主は、陛下なのだから、陛下が言うならば陛下の御心のままに。運命が何と言おうと、神がなんと言おうと逆らっても良い。だが主にだけは逆らってはいけない。それが、この世界の騎士だ。庵はそれを知っているが……冷静に諦められるだろうか。何にせよ、任務中に知れないことを祈ろう。そりゃ誰だって狼狽える、自分の好きな人に縁談がきているなど)


 ……日差しは薄く、外の気温は高くない筈なのに、狼には何処か太陽が自分たちを見下しているような気がして、うんざりとした。

 あんな遠くの空には、こんな些末なことどうでもいいのだろう。太陽は、雲に隠れることはしないで、ただ一同を照らす。



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