残酷なウサギの獣人である予感
「あ、ろーくん」
「……抹茶」
この城では、否、街でも異質の存在。
獣人……という、動物にも人にも、それが混ざった姿にもなれるという種族があって、その動物は様々なのだが、先週騎士の誰かが捕らえたと、此処の王女へ献上された。
獣人は抹茶と名付けられ、王女のペットとして飼われることになった。
その扱いは、表向きは王女が恐くて何も出来ないが、人々の扱いは酷いものだった。
ツナギの服の下には見えない傷が、山ほどある。青い痣もある。
人々は獣人が嫌いだった。だから、余計その扱いもあるのだが、表向きは王女のペットだというのでその一般人からは想像も出来ないほどの優遇に、腹が立っているのだろう。
もし王女の前で彼に何かしたら、首が飛ぶ。
そんな事態楽しむように、抹茶は偶に王女の「目の前」で、何か失敗をさせる。
首が飛ぶ光景を見る度に、狼は、抹茶という人物に得体の知れない悪寒を感じていたので狼は抹茶を嫌っていた。関わった方、どちらかが破滅するという予感がしたのだ。
だが、抹茶は狼から微かに染みついている血の臭いを嗅ぎ取り、笑みを浮かべて近づいてくる。
普通、血生臭さを嗅ぎ取ったのなら、近寄らないと思うのだが、それでも抹茶は狼に懐いていて、その度に王女が嫉妬をする。抹茶は、王女が嫉妬するのも楽しいようだ。
嫉妬してしまうのも判る気がする、というくらい、抹茶は可愛かった。
特別容姿がいいわけではない。顔だって普通の顔で、眼鏡をかけていて、髪の色はこの国にはありふれた薄茶だった。
でも、愛想が良くて、ついでに言えば、兎の獣耳と、尻尾が可愛さを引き立てていて、男性なのに、男を意識させることはなかった。
逆を言えば、特別な美形ではないから、美形を差し置いて、と自信ある男性は憤る。抹茶はその自分と周囲の反応に気づき、無邪気に振る舞うことが得意で、より可愛く見える演出が出来るのだろう。胸にある平仮名の手製の名札も、その演出だろう。王女は酷く気に入っていた。
「ろーくん、お仕事です?」
「……あのな、何回言わせれば判るんだ。クンをつけるな」
「何でぇ? ろーくん、ろーくんです。ろーちゃん、変」
「くんも変だから、狼でいい」
狼はそういって、もう無くなりかけのタバコを抹茶の口に渡した。
王女は抹茶の体に悪いものを与えようとしない。だから、たまにはこんなのも欲しいだろうと気まぐれを起こして、そして黙れと暗に言いたくてあげただけだったが、抹茶は、ぼっと顔を赤くして、両手で顔を隠した。それを怪訝そうに、狼はどうした、と問いかける。
「ろーくん、これ、関節キスです」
「お前は気にするな。僕も気にしないから」
「でも、ろーくん雌です?」
「ああ、雌だよ」
そう言って、狼はほら、と自分のレギンスの上に着てる短いスカート部分を見せる。ひらひらでもなければ、特別体を引き締める効果をするわけでもない、装飾のないただのお情け程度のドレス代わりだ。
黒の鋭い目に短い髪、そして口調に性格、更に言うなら粗忽さに腕前が、自分の性別を男に見せている。
それに気づいた狼は、つい最近からこの特別にあしらえたワンピースというものを着るようにした。
派手なスカートは恥ずかしくて履けないし、目立つし、フリルの着いたようなものなどただ邪魔で、長いスカートも邪魔で動きづらいという理由で、女なら誰もが選ばないこのワンピースを愛用している。
一応胸もあるのだが、タッパがある所為で、詰め物だろうと触って笑う者が出てくる。それが酷く腹立たしいので、心で女性に対する礼儀がなってないと窘めつつ、体では殺しを行動している。
「ろーくん、かっこいい年増の雌です」
にっこりと頬笑んでそういうこのクソ兎を何度頭の中で殺したことか。
かっこいい、は余計だ。年増、は要らない。確かにもうすぐで二十代を終える年で未だに結婚相手も居ないが、それをこの兎に言われたくはない。
かといって、王女の愛玩動物を殺すわけにもいかない。
それを判っている上で、抹茶は言って、狼の歪む顔を楽しんでいるのだ。
狼は、この場から逃げるように離れ、王が呼んでいる、自分専用の待合室で待つことにした。その背中を見て、抹茶が笑った気がした。
改行などを入れていくので少し遅れていくかもしれませんが、今から一気に載せます。
宜しくお願いします。




