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第六十九話 サモンランド

 セレナード大陸でのヘルヘイム幹部捕獲作戦は無事成功をおさめた。

 見事捕獲の務めを果たした俺達五人は今、教会で表彰を受けている。


「ミルドレッド、エリー、ユート、アデル、エリシアの五名はヘルヘイム討伐において多大なる貢献をしたことを認め、ここに称する」


 神父が読み上げると、教会内からはパチパチと拍手の音が聞こえてくる。


「なあ、ミルドレッド? ヘルヘイムがなくなったら異端審問機関ってどうなるんだ?」


 俺が質問すると、何を言っているんだという顔をしてミルドレッドは答える。


「どうなるもなにも、今までのように凶悪犯罪を取り締まるために活動するだけさ。まあちっとばかし暇にはなるだろうけどな」

「そうなんだ。まあ給料がでるならそのほうがいいのかもな」


 ヘルヘイム討滅において、俺は出ずっぱりだったので厳しいと思っていたところだ。暇になるのならばそれに越したことはない。


「異端審問機関の給金は固定だから暇なほうが楽と言えば楽だ。でも忙しくっても活躍すると良いこともあるぞ? ご褒美とか」

「――ご褒美!?」


 俺はガタッと身を乗り出した。褒美と言えばあれだろう。

 丸い水晶のようなガチャがまわせるあれだろう。


「今回のお前の活躍が著しかったから特別に用意したんだよ、素晴らしいご褒美をな!」


 全く期待してなかっただけに感激もひとしおだ。

 俺はワクワクした目でミルドレッドを見ながら次の言葉を待った。


「――喜べ! サモンランドのフリーパスチケットだ! お前のギルドの人数分用意してやったぞ!」


 ミルドレッドは七人分のチケットを取り出して見せた。


 ……あれ、なんか思ってたのと違うんですけど。


「サモンランドだって?」

「知らないのか? 召喚を用いたアトラクションがある大人気の遊園地で、チケットを予約するだけでも半年はかかる程なんだぞ」


 ふーん、初めて聞いたけど確かに面白そうだな。

 オーブじゃなかったのは残念だけど、そこで羽を伸ばすのもいいかもしれない。


「召喚を用いたアトラクションってどんなものなんだ? 力を強化して人力車とか、シルフで空中浮遊体験とかか?」


 楽しそうだと思ったけど、よく考えると地味な絵面しか浮かばないな。


「そういうのもあるけど、一番の目玉はフェニックスとかスレイプニルなんかの幻獣に乗れることだな」

「幻獣?」

「幻獣というのは召喚の一種だ。召喚は加護によって召喚者に特殊な能力を授けるってのが基本なんだけど、たまに召喚獣自体が力を貸してくれるものもある。その中にはさっき言ったフェニックスやスレイプニルなんかがあるんだよ」


 へぇ、勉強になるな。もしかしたらエルハイムが使っていたコロボックルなんかもその範疇なのかもしれない。


「なるほどね、それじゃあありがたくチケットはいただくよ! ……ちょうど神父の話も終わったみたいだし、早速みんなに報告してくる! エリー、帰るぞ!」


 神父の長い答辞を聞き終えてあくびをしているエリーに声をかけた。


「ちょっと、ユート!? いきなりどうしたんですの?」

「いいから! サモンランドに行くぞ!」


 俺はエリーの手を引いて教会をさっさと出て行きギルドへ向かった。


「サモンランドといえばカップルで行く定番のスポット。……も、もしかしてデ、デートのお誘いですの!?」

「へ? あー、いや、みんなで行くんだよ。ごめんな」

「そ、そうなんですの。でもみんなで行くのでもそれはそれで楽しそうですわね。なんといってもあのサモンランドですもの」


 エリーは一瞬落ち込んだけれど、すぐに明るい表情に戻る。サモンランドがそれほど魅力的なところなんだろう。


「サモンランドってそんなに有名なのか? ミルドレッドから今回の報酬ってことでチケットを貰っただけだから俺は良く知らないんだ」

「サモンランドをご存じないですの!? ……ユートが異世界から来たってことを思い知らされますわね。いいですわ、ユートにはサモンランドの歴史から教えて差し上げますの。サモンランドとは――――」


 その後エリーからサモンランドの良い点を嫌というほど聞かされた。

 その熱意といったら、エリーがサモンランドの回し者なんじゃないかと疑うくらいだ。


 それからしばらくして、サモンランドのアピールにいい加減うんざりしてきた頃、ようやくギルドにたどり着いた。



――――――――――――――――――――



「みんないるかー!!!」


 俺がロビーの真ん中で大声で部屋のみんなを呼び出すと、部屋からぞくぞくとギルドメンバーがでてきた。今日は全員居るみたいだ。


「そのやかましい声を聞くとあんたが帰ってきたって感じがするわね」


 急に呼び出されたことにいら立っているのか、アリサが皮肉っぽく言う。


「まあまあ、全員招集をかけたからにはいい話題があるってわけだからそう怒らずに。何を隠そう、サモンランドのチケットがここに七枚あります!」


 俺はテーブルの上にミルドレッドから渡されたチケットをバンっと叩きつけた。


 それを見たみんなの反応は様々だが、一番大きく反応したのはレイチェルだ。


「ユートよ! いったいどこでこんな良い物を手に入れたのだ! お手柄であるぞ!」


 レイチェルはチケットを手に取り、目をキラキラに輝かせて頬ずりしている。


 一方、俺含む七人の中で唯一喜んでいないのがさやかだ。


「さやかは嬉しそうじゃないな。もしかしてまだオーブが手に入らなかったことを怒ってるのか?」


 ヘルヘイムの事件解決後に、さやかと二人で市場に出回った虹のオーブを競売で買いに行ったのだが惜しくも競り負けてしまったのだ。

 そんなことがあったので、さやかはここのところあまり元気がない。


「オーブのことは関係ないわ。そもそもユートに買ってもらうつもりになっていたわたしがいけないの。今悩んでるのはそのことじゃなくて……前に、この世界に未練を残したくないって言ったの覚えてる?」


「ああ、覚えてるよ。元の世界に戻る決意を無くさないため……だよな?」


「そうよ。でもね……今はもう未練がないなんて言えないわ。一緒に暮らしたら情が移っちゃってダメね。……みんなのことも離したくないって思ってしまうわたしがいる。だからこの気持ちを抑えるためにそっとしておいてほしいの」


 さやかの言っていることはわかる。

 わかるけどそんなの俺達からしたら寂しいじゃないか。


「さやか。気持ちはわかるけど、まだアトゥムによって元の世界に戻ったからってこっちに帰ってこれないと決まったわけじゃないだろ? 心を閉ざすのもそれがはっきりした後でもいいんじゃないか?」

「……考えておくわ」


 さやかはそう言った後に、悲しそうな顔をして部屋に戻ってしまった。


「アリサ、部屋に戻ったらさやかをフォローしてやってくれよな」

「なんでわたしが。……何よそのしょぼくれた顔、そんな目で私を見ないで! し、仕方ないわね。今回だけよ!」


 なんだかんだ同室のアリサとさやかは仲良くなってきていると思う。そしてアリサは世話焼きだから、彼女に任せれば大丈夫だろう。


「さ、ちょっとしんみりしちゃったけどサモンランドの計画を練ろうぜ」


 俺は場を和ませようと無理やりに笑顔を作って言った。


「フェニックスは捨てがたいのである!」

「……うん」


 とはちびっこ二人の意見。


「でもフェニックスは人気だから、下手したら並んでるだけで一日が終わっちゃうかもしれないわよ」


 神妙な顔でローザも意見をだす。


「「フェニックス!!」」

「色々回れるほうが……」

「順番優先パスを狙うのもありですわ」


 様々な意見が飛び交っている。アトラクション選びの話し合いは長くなりそうだ。


 さやかの件でみんな落ち込んでしまったかと思ったけど杞憂だったな。

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