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第六十話 オーブフェスタ

「お手柄だユート。……本当に凄い新人だよお前は。いや、もう新人とは呼べないかもな」


 ミルドレッドの声で俺は目を覚ました。

 ローザとシルヴィアは心配そうな顔をして俺にヒールをかけていたが、目を開けたのに気付くとパァっと明るい笑顔が広がる。


「……俺は気絶しちまってたのか。メイルシュトロムはどうなった?」


 ミルドレッドはフッと微笑み親指で後ろの方向を示す。

 その方向に目をやると、手と足を縛られたメイルシュトロムの姿が見えたので俺はほっと一息ついた。


「よし、一件落着ってことか」

「そうだな、連中もオーブフェスタの日を狙って襲撃するなんてえぐいもんだ」

「……オーブフェスタ? 何の話だ?」


 なにやら響きのいい名前だ、まさかオーブが貰えたりするんじゃないだろうな。


「そっか、お前はこっちに来て一年たってないから知らないんだな。今日は教会の始祖がここグランノーヴィルで初めてオーブによる召喚を行った日なんだ。初心を忘れないようにとの思いから、この日は祝日になっていて大抵の人は家族やギルドで過ごすことになるんだよ」


 なんだろ、この世界でのクリスマスみたいなものなのかな?


「初耳だけど今日休みだったんだな。冒険に出ようと思ってたんだけど」


「今日はダンジョンに行っても誰もいないから危険だぞ、お前たちもゆっくりして英気を養っとけよー。それじゃ、私はメイルシュトロムを連行するのでこの辺で帰るから。本当ご苦労だったな」


「はい、ミルドレッドさんも助けに来てくれてサンキュー! 助かったぜ」


 ミルドレッドはメイルシュトロムを引き連れて教会へと戻って行った。


「おい、ローザ。オーブフェスタなんてイベントがあるなら事前に教えてくれよ……」


「ごめんねユート君、余りにもこっちの世界になじんでるからもう知ってると思ってたのよねぇ、あははっ」


 ローザはわざとらしく笑ってごまかそうとしている。

 まあいいか、たいしたイベントじゃなさそうだし。


「でもユート君? うちはこれから大掃除をしなきゃいけないから余り休んでもいられないわよ」


 ギルド内は水浸しになってしまって酷いことになっていた。


「そうだな、これを機会に家を建て替えるってのもありかもしれないな。今月は機関から臨時ボーナスもでるようだし。一人一部屋持てるようにリフォームしようぜ」


「それはいい案ね、後でみんなに提案してみましょう」


 その後、俺たちは襲撃直後にもかかわらずみんなで集まって呑気に今後を考える会を開催した。


「よし、全員あつまったな」

「……ユート……頭……大丈夫?」


 ロビーに集まるなりシルヴィアは急に問題発言をした。


「あの、俺が馬鹿なのは周知の事実かもしれませんが……そこまで言われると凹むぜ」


 シルヴィアは殴られた箇所の事を心配しているのだろうが、ちょっとからかってみた。


 するとシルヴィアは手をあわあわと動かして困った顔をしている。


「……違う……さっきの……怪我」

「ふふっ、わかってるよ。シルヴィアとローザのヒールでもうへっちゃらさ」


 俺はシルヴィアの頭にぽんっと手を置いた。


「……うん……よかった」


 からかわれたことに少しいじけながらも、シルヴィアは俺の怪我が治ったことに喜んでくれた。


「あの、ちょっといいかしら? 大変なことがあった後ではあるけど、今日プレゼント交換会はやるわよね?」


 アリサがやって当然よねといった態度で俺に聞いてきた。


「プレゼント交換会? 良くわからないけどオーブフェスタのしきたりなのか?」


「……そうよ、全員がプレゼントを一つずつ持ち寄って、それを誰かにあげるのよ。プレゼントってその人のセンスが問われるから面白いのよね」


 プレゼントか……俺はちょっと不安になった。

 みんなに喜んでもらえるプレゼントなんて用意できるだろうか?


「そんなに不安そうな顔しなくていいわよ。くだらないものだったとしてもそれはそれでネタになるってものよ。とにかくまだ用意してないなら買い物に行ってくることを勧めるわ」


「え!? みんなプレゼントを既に用意してるのか?」


「当然よ、用意してないのはユートだけよ」


「……みんなオーブフェスタでやることくらい事前に教えてくれよ」


 ギルドのみんなは苦い顔をしている。多分教えるのを素で忘れてしまっていたのだろう。


「まあいいや、それじゃあ俺はこれから買い物に行ってくるよ。……ローザ、ギルドの改築の件は説明しといてもらえるか?」


「わかったわ、ローザお姉さんに任せちゃって! ユート君は買い物いってらっしゃい。センスの良いプレゼントを期待してるわよ~」


「……あの、余りハードルあげないでくれな」


 俺は苦笑いをしながらよろしくと軽く手を挙げて買い物へとでかけた。



――――――――――――――――――――



 俺はいつもの商店街までたどり着いた。

 一人で活動するのは久しぶりだ。

 いつもは買い物ですらギルドの誰かしらと行っていた。


 オーブ屋、ジュエリー屋、コスメ屋、服屋、雑貨屋、みんなで歩いているときは素通りしてしまうような店でもこんな時は目に入る。


 たまには羽を伸ばして普段行かない店でも行ってみるかー。俺はコスメ屋へと入って行った。


「いらっしゃいませー」


 普段男の客はそんなにいないのだろう。

 俺の事を物珍しそうに女性の店員が見ている。


「女友達へのプレゼントが欲しいんですけど、どんなものがいいですかね?」


「え、そうですね~。化粧品になると人によってかなり好みが異なるのですが、なにかわかりますか?」


「いや、わかんないな……。無難な奴でお願いします」


「それならアロマオイルとかハンドクリームとか誰が貰っても嬉しいものがいいと思いますよ」

「あ、じゃあその二つをラッピングしてください」


「はいは~い、ありがとうございます!」


 プレゼントって難しいよな。

 異世界の謎なイベントのプレゼントともなると尚更。

 でもこれで最低限形にはなっただろうので、ギルドへと戻るのであった。

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