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第四十四話 意外な事実

「勝負は痛み分けってところか……」 


 俺とゴスロリっ子は一勝一敗。互いにプレートは稼げず、時間だけを費やしてしまったことになる。


「あなた、ユー子って呼ばれてたわね。その名前、覚えておくわ」


 ゴスロリっ子はそう言って握手を求めてきたので、俺は彼女の手をぎゅっと握りしめる。


「いい勝負だった。君の名前も教えてもらえるか……しら?」


 今になってようやく幻覚で女の子になっていることを思い出し、ぎこちない言葉で名前を聞く俺。


「……さ」


 彼女は名前を言いかけてから少しためらい、顔を下に向けてしまう。……どうしたんだろう? 彼女は相変わらず無表情でその心は読み取れない。


「言えないなら無理に言わなくていいわ。いつか決着をつけましょう!」


 俺はそう言って笑いかけると、爽やかにその場を去ろうとする。


「――待って!」


 ゴスロリっ子は意を決したように俺を呼び止める。表情こそ変えていないが、彼女の目には強い意志が宿っているようだ。


「……わたしはさやか」


 さやかか、純日本人な名前だな。こっちにも和風な名前の地域があったりするのかな? 


「ねえユー子。名前を聞いてからずっと思ってたんだけど、あなた異世界人?」


 ――ユー子に化けてるのにばれてる!? あー、でもユーコ、ゆーこ、裕子とかありそうな名前だもんな、そこまで考えてなかったけど。てかこの場はどうすべきだろうか。


「あなたアイドルまがいのことをしているようだけど、この世界のネイティブならそんな発想がでてくるとは思えない。……隠さないで教えて」


 俺の反応がないのを見て、さやかは更に追及してきた。


「おい、レイチェルちょっとこっち来い」


 俺は答えに窮していたので、とりあえずレイチェルを呼んでみた。人ごみの中に紛れて隠れていたレイチェルがこっちに向かってトコトコと歩いてきた。俺はレイチェルの耳元に囁き声で話しかける。


「俺が異世界人だってことが対戦相手にばれたんだけど、どうすればいいと思う? もうユートって言っちゃった方がいいかな」


 レイチェルはふむふむと嬉しそうにうなずくと、


「わたしに相談とはわかっているではないか。そうだな……ユー子は今回派手に暴れ過ぎたから、今から正体をばらしてしまうとお主の身が危険である。ユー子の取り巻きの連中はまだ周りをうろついているようだしな。ここは異世界人であるってことだけを素直に認めればいいのである。男であることは隠し通すのだ。嘘は虚実折り混ぜると効果的と聞いたことがあるので、これでばっちり間違いなしなのである!」


 レイチェルは無い胸を張り、鼻高々といった様子で俺に持論を説いている。言っていることはもっともらしいけど、本当にレイチェルの言う通りにしていいのだろうか。


「あなたたち。わたしをのけ者にしてる?」


 さやかが抑揚のない冷たい声で言う。怒ってるわけじゃないんだろうけど、なんか怖い言い方だ。きっと夜中に突然さやかの声が聞こえたらちびってしまうくらいには怖い。


「いやいや、のけ者になんてしてないさ。それでさっきの答えだけどな、正解だよ。俺はゆうこで異世界人」

「ユー子よ、その姿で俺はどうかと思うのである」


 レイチェルがすかさずダメ出しをしてくる。……気を抜くと化けていることをつい忘れてしまうな。


「やっぱり異世界人。しかも日本からきたのね? わたしも同郷なの」

「――なにっ!?」


 異世界人が時々こちらの世界に飛んでくるという話はローザから聞いていたが、こうして実際に会うのは初めてだ。それにしても日本人というのは偶然なんだろうか。


「驚くのも無理ないわ。わたしも同郷の人と会うのは初めてだから」

「そ、そうなのか。この世界で日本人は貴重……だよな? 改めてよろしくな」

「ええ、そうね。……大会が終わってからでいいけど二人で話がしたいの。授賞式が終わる頃に、あそこの木の下で待ってるわ」


 さやかは会場から少し離れたところに見える、大きな一本杉を指差した。


「わかった。行くようにするよ」

「必ず来て。きっとあなたの力になれるから」


 力になる? どういうことだ?


「はいは~い! 今から集計を始めるからチーム毎に集まってちょうだい!」


 今更になってローザのアナウンスが再び聞こえてきた。


「それじゃわたしは行くからまた後で」


 ゴスロリっ子日本人のさやかはくるっと背を向けてチームの元へ歩いていってしまった。


「あ、やべっ。約束した時間までヴルトゥームの効果持たないじゃん。……やっちまったな」

「やれやれ、ユートはうっかり者であるな」


 レイチェルが両手をあげてくすっと笑う。


「ま、その時は本来の姿で行ってさやかに説明すればいっか。とりあえず今は他のメンバーと合流しようぜ」

「そうであるな」


 俺たちは会場内にいる他のメンバーを探して歩き始めた。

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