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第二十七話 因縁の行方

 ――チリリィィィン。


 俺は玄関のベルを鳴らして家のドアを開ける。


「ローザ、レイチェル! 今帰ったぞー」


 俺はただいまの挨拶をして家に入った。


「あら、みんなおかえりなさい」

「おかえりなのである」


 ロビーにいるローザとレイチェルは俺たちの帰りに気付くと、そっけなく挨拶を返した。その辺で買い物をして帰ってきたときと同じくらいの薄いリアクションだ。

 ……なんか様子がおかしいな。

 ふとソファーに目をやると、見慣れない人影があった。


「やあ、ユート。君が来るのを待っていたよ」


 爽やかな顔に、長い槍。声を発したその青年には見覚えがあった。レイチェルとクエストに行ったときに出会った新人冒険者――アデルだ。


「――アデルか!? どうしてうちのギルドにきているんだ?」


 俺は警戒して、脇に差してある短剣に手を添えた。


「ユート君。警戒する必要はないわ。この子は敵じゃないの」


 ローザは真剣な表情で俺を見て言った。


「急に来てすまないね。僕が知っている冒険者は君くらいしかいなかったので尋ねてみたら、教会のシスターさんがいたのでかわりに相談を聞いてもらっていたんだよ」


「……知っている冒険者が俺だけ? お前はギルドに所属しているんだから、そこで相談すればいいだろ?」


 モガディシュの仲間だからか、俺は少し強い口調で言ってしまう。


「それがそうもいかないのよね。最近召喚の触媒が相次いで盗まれる事件が発生しているのは、聞いたことある?」


 ローザが俺を制止するように口を挟んできた。


「……召喚の触媒の盗難、確かに聞いた覚えがあるな。それとアデルの相談内容に関係があるってことか?」


「……話が早くて助かるわ。結論から言うとね、彼の所属しているギルドのマスターとなっている人物。――モガディシュがそれらの事件の黒幕なのよ」


「――なんだって!?」


 俺は驚きの声を上げる。でも確かに言われてみれば納得できる。

 奴の空間を移動する能力を使えば、盗みに入ることなんて楽勝だろう。


「僕たちギルド員がマスタールームと呼んでいる、モガディシュの部屋をたまたま見る機会があってね。――そこに数えきれないほどの触媒が保管されているのを見てしまったんだ。最初は貯まっていたギルド資金で購入したのかと思っていたけど……これがどうやら日に日にその数を増しているようでね。とてもギルド資金で賄えるものじゃないことに気付いてしまったんだ」


 アデルは淡々と俺に説明する。


「なるほどな、それで俺にモガディシュを捕まえる手助けをして欲しいってことか。……教会には相談してみたのか?」


 俺は疑問に思ったことをアデルに質問する。


「実はこの事件には、教会にかつて所属していた元シスターが絡んでいるようでね、下手に公の場で話してしまうとモガディシュに勘付かれる恐れがあったので、僕個人で調査を進めていたってわけなのさ」


「そういうことか。――よし、わかった! 俺に手伝えることがあるなら何でもするよ。ガチャを不正に回す奴には正義の鉄槌が必要だからな!」


 俺はアデルの横にどんっと座り協力する姿勢を示した。


「……話がまだ半分くらいしか見えていないけど、わたしもできることがあるなら協力するわよ。でも今は帰ってきたばかりだし、一旦荷物を整理したいから部屋に戻ってもいいかしら?」


 アリサはずっと立ちっぱなしで話を聞かされていたせいか、若干不機嫌な様子で言った。


「これはすまなかったね。……僕もそろそろギルドのクエストに行かなければいけない時間なんだ。詳しい話は明日させてもらうってことでいいかな? 明日の午前中にはまたここに来れるので」


 俺はうちのギルドメンバー全員に目で確認を取ると、皆一様に頷くのが見えた。


「ああ、それで構わないぜ。くれぐれもモガディシュにはバレないようによろしく頼むよ!」


 俺はアデルの肩をぽんっと叩いた。


「任せてくれ。そんなへまはしないさ。――なにせこの数日間ずっと僕は隠れて調査してきたんだからね」


 アデルは自信のこもった目で俺を見ながら返事をした。



――――――――――――――――――――



 その後アデルを見送ると、俺はソファーにぐでっと倒れこんで横になった。


「……ふー。なんか帰って早々めんどくさいことに巻き込まれちまったな」


 ロビーには俺とローザだけが残り、他のみんなは部屋に戻っている。


「まあまあ、見過ごすわけにはいかないでしょ。……で、どうだったのよ? アリサちゃんの実家は? 君たちの関係に進展はあったのかな~?」


 ローザは好奇心に満ちあふれた目をして俺に聞いてきた。


「――な、なに言ってるんだよ? 俺とアリサにそんなことあるわけないだろ!?」


 俺は慌てて体を起こして返事をした。

 ローザは時々妙に鋭いことを聞いてくる。

 ……本当は色々あったけど、流石にあの家で体験したことは言えないよなぁ。


「なになに~? それじゃあシルヴィアちゃんと何かあったのかな~?」

「――そんなこともないってば! ……変に勘繰るのはやめてくれよ」


 まるで何かあってほしいとでも言いたげな聞き方をしてくる。ローザはシスターの癖に本当に俗な話が好きだよな……。まあそうじゃなかったらパーティーに誘ったりなんかしなかったのだけど。


「本当かな~? 何か相談があったらお姉さんが聞いてあげるから、全部吐いちゃいなさいよ!」

「……と、とりあえず今日は疲れてるからその話はまたいつかな!」


 このままだとローザのペースに巻き込まてしまうので、その前に俺は部屋に戻ろうと立ち上がった。


「もう、つれないな~、今度ちゃんと話を聞かせるのよ! ……それと、明日は大変な一日になるからしっかり休むのよ!」


 ……休ませようとしていなかったのはローザだろ。俺は苦笑いを浮かべた。


「わかってるって! ローザも明日はよろしく頼むぜ」


 俺はローザに別れの挨拶を告げると、自室の部屋の扉をくぐった。そしてそのまますぐにベッドに大の字になって横になると、頭の中にモガディシュの顔がよぎった。

 

「……明日はついにモガディシュとの決着か」


 思えば出会った時からモガディシュとはそりが合わなかった。こうなることを予見していたからだろうか?


 俺は部屋の隅を見てティンダロスの猟犬のことを思い出す。あの能力は非常にやっかいだ。特に逃げることにかけては俺のオーディンよりも便利な能力だろう。

 でもなんとかして捕まえなければならない。……それがこの世界のガチャの秩序を守るために必要なんだ。


 俺はそんなことを考えながら、眠りにつくのであった。

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