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第二十二話 訪問! アリサ邸

「そういえばさ、アリサはなんで冒険者になったの?」


 アリサとシルヴィアの実家に向かう道中、俺は気になっていたことを尋ねてみた。


「……なによ? 突然」


 アリサは困ったような顔をして、俺に聞き返す。


「いやさ、俺たち仲間だろ? 何か目的があるなら共有しておいたほうがいいんじゃないかなって……」


 俺がそう言うと、アリサは少し間をおいて話し始めた。


「……わたしには夢があってね。それは、実家の鶏を世界一有名にすることなの。冒険者って、実績を上げれば上げただけ顔が売れていくでしょ? そうやってどんどん有名になってから、実家の鶏を宣伝するのがわたしの夢……いや、目標ね」


 アリサは少し照れくさそうに言った。


「ふーん。意外と俗っぽいんだな」

「……俗っぽくて悪かったわね」


 アリサは不満そうな顔をして俺に言った。


「でもそれって最高の親孝行だよ。そうやって行動できるのは、本当尊敬してる」


 俺がアリサに笑顔を向けて言うと、当りまえよとでも言いたげな顔をしてそっぽを向いてしまった。

 アリサはいつもツンツンしてるけど、根は真面目で良い奴なんだよなぁ。


「シルヴィアも同じなのか?」


 俺はシルヴィアのほうを振り向いて聞いてみる。


「……わたしは……お姉ちゃんと一緒に……いたかった……から」


 シルヴィアは小さな声でそう言った。


「なるほど、お前たち二人は本当に仲が良いよな。羨ましいよ……」

「……ユートは……お姉ちゃんいない?」


 シルヴィアは青い瞳をパチクリさせて俺に聞いてきた。


「俺にはお姉ちゃんどころか、兄弟もいないからな……」


 俺はそう言って、家で一人黙々とソシャゲをやり続けていたころの自分を思い出してしまった。あれはあれで楽しい部分もあったけど、孤独な戦いだったな……。兄弟がいたらまた違ったのだろうか?


 上を向いてそんなことを考えていると、道の向こうから作業服を着た男が走ってきた。


「おい、そこの君! 横を走っている鶏を捕まえてくれないか! 頼むっ!」


 横を振り向くと、鶏が二羽走っていくのが見えた。


「――オーディン!!」


 俺は咄嗟にオーディンを召喚して鶏の目の前まで即座に移動し、鶏二羽を同時に抱きかかえるようにして捕まえた。


「助かったよ! ありがとう! ……それにしても、びっくりだ。君は凄く足が速いんだね」


 作業服の男はへこへこと頭を下げながら俺にお礼を言う。


「パパ! また鶏を逃がしたの!? この前注意したばっかりじゃない、しっかりしてよ!」


「――アリサか! それにシルヴィアも! 愛しきわが娘たちよ、よくぞ無事帰ってきてくれた!」


 鶏を見たときからうすうす気付いてはいたけど、この気の良さそうな人はアリサとシルヴィアの父親みたいだな。


「ということは、一緒にいるこの青年は……ユート君かい?」

「ええ、そうですが」


 俺が返事をすると、アリサの父親は顔一杯に笑顔を浮かべた。


「君の話は娘たちからよく聞いているよ。うちまで案内するからついてきなさい」


 なんだか歓迎されているみたいだな。俺の事がアリサやシルヴィアの口からどう伝えられているか少し不安だったけど、この様子なら問題なさそうだ。



――――――――――――――――――――



 アリサの父親の後についていくと、網で囲まれた大きな鶏舎が見えてきた。

 中にはたくさんの鶏がのびのびと走っている様子が見える。


「アリサから聞いているかもしれないが、うちは養鶏場を営んでいてね。今日もたくさんの卵を収穫したから、是非食べていってくれ」


「ありがとうございます! この間送ってもらった鶏肉も本当にうまかったです」


「それは良かった。……そろそろ夕飯ができる頃合いかな。とりあえずうちにあがりなさい」


 俺は案内されて、養鶏場の隣に位置するレンガ造りの家の中へと入った。家の中には花や絵画が飾ってあり、まるで貴族の住むお城のような様相を呈していた。


「あら、アリサにシルヴィアじゃない。帰ってきたのね? お帰りなさい!」


 リビングに入ると、長髪を頭の後ろに結えた美しい女性が出迎えてくれた。


「……そちらにいるのは。もしかしてユート君かしら?」

「はい、そうです! いつもアリサとシルヴィアにはお世話になっています」


 俺はアリサの母親に挨拶をする。

 アリサの母親は経産婦にはとても見えないな。

 アリサと並んでも姉妹としか思えないくらい若く見える。


「……何わたしのママに向かって色目を使っているのよ」


 アリサの母親のほうをじーっと見ていたので、アリサに小突かれてしまった。


「やーね。ユート君を取ったりしないから安心しなさい。娘たちから聞いているけど、ユート君凄いらしいわね。丁度ご飯もできたから、食卓でゆっくりお話を聞かせて頂戴」


 アリサの母親はそう言ってから、俺たちに席に座るように促した。


「はい! よろしくお願いします」


 俺は席に着くと、目の前にある豪華な食事に目が奪われる。テーブルには色とりどりの野菜と鶏肉のソテー、それにパンにオムレツが並べられていた。


「さあ、遠慮せずにどんどん食べてね!」


 テーブルを見渡すと、アリサの母親の分の料理がないことに気付いた。


「あ、俺が急に来たから一人分足りないのか……」


「いいのよ! ユート君は将来うちを継いでくれる大事な大事なお客さんなんだから、気にしないで食べなさい! わたしの分はまた後でつくるから大丈夫」


 ……ん? なんか違和感のある言葉が聞こえたな。気のせいだろうか。


「アリサよ、こんな立派な男の子を良く引っ掛けてきたな。お父さんは本当に嬉しいぞ」


 ……やはり気のせいではないみたいだ。何かおかしなことになっているのは間違いない。俺は違和感の正体を確かめるために声を上げる。


「あの……、さっきから家を継ぐとか、引っ掛けてきたとか、一体どういう――――ごふっ!?」


 俺は隣に座っていたアリサから肘打ちをくらう。……俺、なんかしましたっけ?


「パパ、ママ。ユートは歩き疲れて体調がすぐれないみたいなの。ちょっと向こうで介抱してくるわね」


 アリサは俯いたままそう言うと、俺を廊下まで無理やり引きずりだしてしまった。


「――アリサ!? どうなっているのか説明してくれ!?」

「……パパとママには、ユートが私の婚約者っていうことにしているの」


 ――なんだって!? そんな話初耳だぞ。


「……いい年なんだから結婚しなさいって。パパとママはお前くらいの年には結婚してたんだぞってうるさいのよ。それで、ちょっと前には領主の息子とのお見合いの話まで進んじゃってて。だからわたしにはもう婚約者がいるって言っちゃったの」


「……そういうことか。せめてここに着く前には教えてくれよ」


 俺は呆れた顔をして言う。


「しかたないじゃない! 本当はここに着く前に言おうとしていたんだけど、その前にパパと合流しちゃったんだから!」


 あー、鶏が脱走して追いかけてきてたもんな。

 それで言う機会を逃したってことか。


「……で、俺はどうすればいいんだよ?」


 アリサは一瞬ためらってから、両手を合わせて俺に頭を下げてきた。


「この家にいるときだけでいいの! わたしの婚約者のふりをして! 一生のお願いだから!」


 一生のお願いとはまた大きく出たな……。


「わかったよ、婚約者のふりをすればいいんだな。……やってみる」


 アリサの両親を騙すのは気が引けるけど、ここでこじらせるのも大変そうなので俺は渋々承諾した。

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