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第二十話 祭りのあとは

「ふう……。なんとかばれずに済んだか」


 俺は自分の部屋に戻り、ベッドに寝転んでひとり言を言う。最後はヒヤッとしたけど、本当に至福の時間だった。


「……これも召喚のおかげだな」


 俺はサルガタナスのオーブを手に持って呟く。

 思えばこの世界に来てからは、恵まれていることばかりだ。


 最初に最強の召喚オーディンを手に入れることができたし、アリサやシルヴィア、ローザにレイチェルといった素晴らしい仲間も手に入れることが出来た。


 他にも幸せなことを数え上げればきりがない。俺みたいな何のとりえもないやつをこんな面白い場所に飛ばしてくれた、世界の気まぐれに感謝である。


 俺が柄にもなくそんなことを考えていると、ドアをノックする音と同時に声が聞こえてきた。


「ユート君いる? 開けるわよ?」


 ローザの声だ。俺がどうぞと返事をすると、ドアが開いてネグリジェ姿のローザが入ってきた。


「待たせたわね。他のみんなはお風呂から上がったから、ユート君も入って大丈夫よ」


「ありがとう、ローザ。それじゃあ俺も完成した風呂を楽しんでくるかなー!」


 俺は待ってましたと言わんばかりに立ち上がり、さっき離れたばかりの風呂場へ向かおうとすると、ローザに止められる。


「……ところでね、さっきお風呂場に透明なモンスターが現れたのよ。結局逃げられちゃったんだけどね。……ユート君は見なかった?」


「さ、さあ? 透明なモンスターとはまた恐ろしいのが出てきたね……。見かけたら俺がやっつけておくよ……」


 俺は白々しく返事をして、さっさと部屋をでようとするとローザに腕を掴まれる。


「……でね、そのモンスターは身の危険を感じると発光するみたいなのよ。まるでジャック(・・・・)()オー(・・)()ランタン(・・・・)みたいにね」


「――なっ!?」


 俺はつい声を漏らしてしまった。……まさか、ばれていたのか!?


「……その反応は図星みたいね。ユート君、ちょっとお姉さんと座って話しましょうか?」


 俺は観念してローザの指示に従い、二人してベッドに横に並んで座った。


「わたしはシスターだから、どんな召喚がいるかっていうのは大体把握してるのよ。その中には姿を消すことができる召喚がいるのを思い出しちゃってね、もしかしたらと思って聞いてみたんだけど。……サルガタナスよね? いったい何時いつ手に入れたの?」


「……今日ダンジョンから帰ってから商店街でオーブを買って……そのあと教会に行きました」


 俺は蚊の鳴くような小さな声で言った。……終わった。俺のハッピーでバラ色な日々も長くは続かなかった。

 俺が覗いていたことが知られたら、みんなはどんな反応をするだろうか? 俺は想像してみる。


「あんたはいつかそんなことするんじゃないかと思ってたわよ! ほんっと最低ね!」

「……ユートの……エッチ…………嫌い」

「お主は馬鹿だとは思っていたが、ここまでの馬鹿だとは思わなかったぞ! 見損なったのである!」


 あああああぁぁぁぁぁ! 考えただけでもきつすぎる!

 これからはみんなに奴隷のような目で見られ、虐げられて生活することになるのだろうか……。


 俺が悲嘆に暮れていると、ローザは優しい目で俺を見て言った。


「……ユート君もそういうお年頃だもんね。女の子のからだが気になっちゃうのは仕方ないわよね」


 ローザが俺にもたれかかってくる。


「わたしのからだ、良かったでしょ? ……もう一度味わってみる? 今度はユート君のその生身のままで」

「――えっ!?」


 俺はゴクッと息をのむ。

 夢でも見ているのだろうか?


 ローザの胸が押し付けられ、心臓の鼓動を感じる。

 不思議だ、目の前にいるのはいつもの面白おかしく冗談を言い合っているローザとは全く違う。

 ネグリジェからみえるその艶めかしい肢体は熱を帯び、俺に色というものを思い起こさせた。


「……さあ、ユート君。目をつぶって、わたしに身をゆだねなさい」


 からだが近い、ローザの吐息を感じる。


「――っ!?」


 ローザの右手が俺の首に巻かれ、彼女の重みを感じる。

 ……父さん……母さん。……俺、異世界で大人になります!


 





「――なーんてねっ」


 ローザは左手に持ったサルガタナスのオーブで俺のおでこを叩いた。――いつの間に取られていたのだろうか?


「今のはお風呂場でやられたことへの仕返しよ。これに懲りたら、もうあんないたずらはしないこと!」


 ローザはからかうように笑って言った。……うぅ、期待させておいてそりゃないっすよ。


「それからこれは没収ね。わたしの部屋で大事に保管しておくから、ダンジョンで必要になりそうな時だけ取りにいらっしゃい」


 ローザはそう言ってサルガタナスのオーブを服のポケットにしまうと、部屋のドアに向かって歩き出した。


「そんなぁ~。それ手に入れるのに必死でお金貯めたのに……」


 俺が情けない声を上げると、ローザは振り返って、


「……そんなこと言ってると、アリサちゃんたちにばらしちゃうわよ?」


 そう笑いながら言った。……いや、笑ってはいるが目が笑っていない。


「……はい。サルガタナスの管理をお願いします」


 俺は力なくそう言うしかなかった。


「よろしい! それじゃあ浴場を楽しんでいらっしゃい! ……もうモンスターもでないし安心だからね」


 ローザは皮肉を込めてそう言うと、部屋を出て行った。


 こうして俺の透明人間生活は、あっけなく幕を閉じたのであった。

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