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第十五話 真実の鏡

「…………」


 ロビーのソファーには俺とシルヴィア、そして自称大魔導士のレイチェルが座っている。


 俺としてはレイチェルがギルドメンバーに加わることは歓迎なのだが、他のメンバーがどう思うかは正直なところわからない。


 とりあえずシルヴィアと引き合わせてみたのだが、二人ともだんまりで気まずい雰囲気になってしまった。


「シルヴィア……? レイチェルとは今後一緒にやっていくことになるかもしれないんだから、聞きたいことがあったら聞いといたほうがいいぞ?」


 俺がそう言うと、シルヴィアは意を決したように話し始めた。


「……そのローブ……すてき」


 シルヴィアの言葉を聞くと、レイチェルは眉をピクリと動かして反応する。


「ほう……、お主にはこのローブの良さがわかるか。ちびっ子よ、なかなか見どころがあるではないか。望むのなら弟子にしてやってもよいぞ」


 ちびっ子って、あんたも人のこと言えないぞ。

 レイチェルはローブを褒められて気をよくしたのか、饒舌に語り始めた。


「よく見ればお主の帽子も悪くないし、その杖もなかなか良いセンスであるな。わたしほどの大魔導士になるのはちと難しいかもしれんが、将来よき魔法使いになれるやもしれん」

「……わたしも……この格好……お気に入り」


 なんかよくわからない会話で盛り上がっている。よくみると二人とも魔女っぽい恰好をしているし、お互いに近いものを感じているのかもしれない。案外この二人は大丈夫そうだな。


 俺がそんなことを考えていると、ガタッと音がして入り口のドアが開いた。ローザとアリサが買い物から帰ってきたようだ。


「ただいまー! ばっちり買い物してきたわよー」


 ローザとアリサの両手には、パンパンに膨らんだ紙袋が見える。


「あら、お客さん……? もしかしてギルド加入希望者かしら?」


 ローザとアリサはレイチェルの存在に気付き、荷物を置いてこちらのほうに寄ってきた。


「この二人はローザとアリサで、うちのギルドのメンバーだ」


 俺はまずレイチェルに二人を紹介した。

 ローザとアリサも軽く挨拶をする。


「で、こっちの彼女はレイチェル。うちのギルドに加入してくれるそうだ」

「うむ、わたしが力を貸してやるのだ、感謝するのだぞ」


 相変わらずの尊大な態度でレイチェルは言う。

 そんな様子を見て不安に思ったのか、アリサが俺に近づいて耳打ちをする。


「ねぇ、この子本当に大丈夫なんでしょうね?」

「まあ、実力はあると思うよ」


 そうアリサに返事をし、続いてレイチェルのほうを見て言った。


「レイチェル。俺にさっき見せてくれたやつ、まだできるか? 他の三人にも見せてやって欲しいんだけど」


 さっきの隕石を見れば、アリサも納得してくれるだろう。


「よいだろう。ではこちらに来るがよい」


 レイチェルは立ち上がると、窓のほうへと歩きだした。


「お主らにもあの山は見えているな?」


 遠くに見える山を指さし、レイチェルは言った。

 ……あれ? あの山ってさっき消し飛んだはずじゃ?


「ではよく見ておくのだぞ。――ハァァァァッ!」


 レイチェルは俺に見せたときと同じように掛け声を上げて召喚を呼び出し、両の掌を山に向かって突き出す。

 少し間をおいて、これまたさっき見た光景と全く同じもの――すなわち隕石が山に衝突する瞬間を見ることになった。


「……確かに、凄いわね」


 アリサは唖然として言った。その横でローザは訝し気な表情をして顎に手を当てている。


「……隕石を呼ぶ召喚? そんな召喚……聞いたことないわ」


 なにかがおかしい。俺はレイチェルの召喚をルーペで確認しようとしたが、すでに召喚の姿は見えなかった。


「おい、レイチェル。……もう一度召喚をだせ」


 俺は強い口調で言う。


「……残念であるな。もう召喚の持続時間は終わってしまったぞ」


 レイチェルは俺に目を合わせずにそう言った。怪しい、怪しすぎる。


「嘘つけ! こんなタイミング良く切れるわけないだろ。もう一度出すんだよ! もう一度!」


 俺はレイチェルの肩を強く掴み、ガタガタと揺すりながら言った。


「やめんかこら! わかった、わかったから。もう一度出すからやめて――」


 レイチェルは観念して召喚獣を呼び出した。俺はすかさずルーペで覗き込む、



『Bランク召喚獣 ヴルトゥーム』 ●〇〇〇〇

その外見は、巨大な花の中央から美しい妖精の

上半身が突き出しているものである。

千年周期で活動と睡眠を繰り返すと云われている。

ヴルトゥームの加護を受けたものは、周囲の人間に

幻覚を見せることができるようになる。

【召喚持続時間:二時間】



 ――これは!? なるほど、これで消えたはずの山が再び現れたことにも合点がいく。最初から山を消滅させてなどいなかったってことだな。


「……どうして嘘をついたんだ」


 俺が質問すると、レイチェルは慌てた様子で言い訳を始めた。


「嘘など言っておらぬ! わたしはただ魔力を見せるとしか――!!」


「――じゃあなんでちゃんと説明しなかったんだ」


 俺が問い詰めると、レイチェルは今にも泣きそうな顔をして答える。


「……こわかったのである。……我が能力が役に立たないと知られるのがこわかったのである」


 そうなのか? 幻覚ってそれなりに役に立ちそうなものだけどな。俺が疑問に思っていると、ローザが喋り始めた。


「確かにヴルトゥームの幻覚は人間にしか効果がないから、ダンジョン攻略にはあまり役に立たないとされているわね……」


 ローザはレイチェルの近くに歩み寄り、目の高さを揃えて話を続ける。


「でもね、能力の良し悪しなんてわたしたちは気にしないのよ? そんなことよりも、しっかりと仲間を信じて行動できることのほうが大切なの。わたしたちのギルドに入るなら、そこのところは肝に銘じてね」


 ローザは優しい声で言った。


「うぅ……。わるかったのである。これからはちゃんと言うのである」


 レイチェルが泣きじゃくりながら謝ると、


「よし、それならOKよ! これから一緒に頑張りましょうね」


 ローザはレイチェルの頭を撫でながら言った。他の二人も穏やかな表情でその様子を見ている。


 色々あったけど、これでギルド設立のメンバーは無事に揃ったな。

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