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第十四話 大魔導士レイチェル

 俺たちはクラーケンを討伐した後、ついに念願のマイホームを手に入れることができた。


 この年にしてマイホームが手に入るとは……。ソシャゲ廃人をやっていたころからは考えられない躍進っぷりだ。

 正確にはマイホームではなく、ギルドの拠点ではあるが。


「ふぃ〜、やっぱ自宅は最高だな!」


 俺はロビーにあるソファーに寝転んで思いっきり伸びをした。購入した家は五つの部屋と大きなロビーを備えた立派なもので、俺たちのパーティー全員がここで暮らしている。


「……あんたはいいわね、いつも幸せそうで」


 アリサは部屋を出て俺を見るなり悪態をついてくる。

 もうそれには慣れたもので、俺は平然と挨拶を返す。


「よぉ! アリサ。今日もご機嫌だね!」

「はぁ!? どこをどうみたらご機嫌に見えるのよ? 朝一番にあんたの顔を見てこっちはげんなりだわ」


 今日は一段とツン成分が多めのようだ。

 アリサの調子は絶好調だな!


「ま、いいわ。今日はちょっとローザと買い物に行ってくるから、留守を頼んだわよ」


 ローザと……? アリサとローザで買い物なんてめずらしいな。


 俺がそんなことを思っていると、部屋の扉が開き、よそ行きの格好をしたローザが出てきた。


「あら、アリサちゃん早いわね。準備はいつでもばっちりって感じかしら!」


 ローザの手には化粧品の特売のチラシが見える。

 なるほど、そういうことか。


「それじゃあユート君、お留守番お願いねー!」


 ローザとアリサは買い物に出かけて行った。

 二人が俺に留守を頼むと念を押して言っていたのには理由がある。


 先週から教会の前の掲示板にギルドメンバー募集の張り紙を出していて、その受付場所がここなのだ。


「でもどうせ今日も来ないんだろうなぁ」


 俺はぽつりと弱音を吐いた。どうやらこの世界ではギルドはあふれていて、どこのギルドもメンバーが不足しているらしい。圧倒的な売り手市場だ。


 そんな中、『今からギルドを始めます!』というところに人が集まるわけもなく、俺たちは苦戦を強いられている。


 ――チリリィィィン。

 玄関に設置してあるベルの音が鳴り響く。


「――ついにきたか!」


 俺は急いでギルドの入り口まで行き扉を開いた。


 するとそこにはローブに身を包んだ黒髪の女の子がいた。シルヴィアと同じか、少し上くらいの年齢だろうか?


「君は……ギルド加入希望者かな?」


 俺は女の子に声をかける。


「ふむ、お主がオーディン使いだな?」


 俺の質問は無視され、尊大な態度で女の子は言う。


「噂は聞いているぞ、すべての能力を十倍にできるということではないか。くくっ、我が究極魔法とどちらが優れているか試してみたいものだな……」


「あのー、ギルドに加入したいかどうかをきいているんですけどー?」


 長くなりそうなので俺は彼女の話を切り、もう一度質問してみる。


「ん? ああ、ギルドか。そうそう、ギルドメンバーの募集をしているとのことだったな。どうしてもと言うのなら、我が暗黒魔法を持って力添えしてやらんでもないぞ?」


 うわぁ……。こういうタイプの子だったか。

 俺は若干不安になりつつも、彼女に質問を続ける。


「……暗黒魔法ってのはよくわからないけど、君も冒険者で、俺たちのギルドに入りたいってことでいいんだよね? 冒険者ランクはどの位?」


 ランクについて聞いてみると彼女はムッとした表情を浮かべる。


「……ランクなど問題ではないのだ。それよりも何ができるかのほうが重要であろう? ――こい、我が魔力の一端を見せてやろうぞ」


 そう言うと彼女は俺の横をすり抜けて家の中へと入ってしまった。おいおーい、まだ入っていいとも言ってないんですけど? 俺は慌てて後を追った。


 家の中に入ると、彼女がロビーにある窓のすぐ近くに立って待っているのが見えた。


「うむ、ここからなら外が見えるな。……遠くのほうに山があるのはお主の目でもわかるであろう?」


 確かに山があるな。

 でもそれがなんだっていうんだ?


「よく見ておくのだぞ。――ハァァァッ!」


 彼女は掛け声とともに召喚を呼び出し、両手を山のほうに向ける。すると巨大な隕石が空から落ちてきて山に直撃し、一瞬にして山は木っ端みじんになってしまった。


「――なっ!?」


 俺は驚きのあまり声を失う。


「お、おい、めちゃくちゃやったみたいだけど……、あの山にいる人とか大丈夫なのか?」


 俺は焦る気持ちを抑えて、努めて冷静に声をかける。


「その辺は事前調査済みである。何も心配することはないぞ」


 彼女は勝ち誇ったような笑みを浮かべて言葉を続ける。


「お主も我が魔力を見たであろう? 土下座をしてでもわたしを勧誘したくなったのではないか?」


 俺は彼女に軽い恐怖を覚えると同時に、興味がわいてきた。


「……そういえば名前を聞いていなかったな。俺はユートっていうんだけど、君は?」


 彼女は腕を組み、不遜な態度で答えた。


「我の名はレイチェル。――大魔導士レイチェルである」

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