第九十一話 フレンズ
ソール君と別れて、俺は懐かしの公園に向かっている。さっきメールで友達三人に来てもらうよう送っておいた。一分も経たずに返信が帰ってきたことはびっくりしたけど、それだけ俺を心配してくれていたんだろう。暇だったからとかそういうわけじゃないはずだ。
そんなことを考えているうちに、公園に着いた。友達は……あっ、いたいた。
「おーい、待ったか?」
「え? あっ、え!?」
「どうかしたのかお前ら?」
「えっと、俺達に話しかけてるんだよな?」
「当たり前だろ?」
「嘘だろおいまじかよ」
「俺友達を見て興奮してたのかよ。萎えるわー」
なんなんだこいつら。何が言いたいかさっぱりわからん。
「なんでお前が異世界転生してしかも女になってんだよ!?」
あっ、そういう事か。いつも忘れるんだよな。この前その事をミツハたんに言ったら、「まあ我の力は凄いからなのじゃ」とか言われたし。意味がわからん。
「っていうかなんで気付かなかったんだ? 本名使ってただろ俺」
「もしかしたらそうかもとは思ったけどまさかこんなに身近なやつだとは思わんだろうが!」
「いやっ、俺のスマホから連絡来た時点で気付けよ。俺こっちの世界で死んでるじゃねぇか」
「は? えっ、お前死んだん!?」
「遺体とかなかったのか!?」
「うん、俺達の中では行方不明だったぞ。警察も捜査してたみたいだけど」
「マジかよ」
「っていうかお前こそメール返信しろよ。何回も送ってただろ?」
「え?」
スマホを見ると、たしかに大量にメールが来ていた。っていうか俺メール打った時に気付けよ……。
「ごめん、気付かんかった」
「嘘だろお前。メール打ってきたじゃねぇか」
「いやっ、見てなかった」
めっちゃ笑われてるんだけど……まあ当たり前かもしれないけどさ。
「っていうかお前ら、俺に興奮してたのか?」
「あっ、いやっ、俺は違うぞ!?」
「俺も違うぞ!」
「つまり雄大、犯人はお前だな?」
雄大というのは、さっき興奮したとかなんとか言ってたやつだ。身長が低いくらいで特に特徴と言える特徴はないな。あるとしたら、今みたいに変態だってことくらいだ。
「うっ、すまんかった」
「いやいいよ? それより、触ってみるか?」
「いいのか!?」
「冗談に決まってるだろうが、キモいわ」
「俺達友達だろ?」
「お前ら……触らせねぇぞ?」
「ちぇー」
「それよりさ、ちょっと金貸してくれない?」
「なんでだよ、お前国王になったんだろ?」
「そういうことは知ってるんだな」
「まあ毎日動画見てるんで」
マジかよ俺の動画こいつらにまで見られてたのか、恥ずかしい。
「ってかそれなら変態なこと言ってる俺達動画に映るんじゃね!?」
「金せびってるお前もだけどな」
うわっ、たしかに友達に金せびってる様子撮られてるじゃねーか!? まあいいか。美少女は何やっても許される!
「もういいわ、吹っ切れた。いいよ、金貸してやる。その代わり……」
「なんだよ、いやらしい事はダメだぞ」
「頭ぽんぽんさせてくれ」
「おっそれいいね」
「決まりだな」
マジかよ、こいつらに頭ぽんぽんされんの俺……。まあ、それくらいで金貸してくれるならいいけどさ……。
「わかった、やれよ」
「じゃあ遠慮なく」
まず、雄大が俺の頭をぽんぽんしてきた。にやついてやがる。こうしてみるとだいぶ気持ち悪いな。
「今度は俺の番な」
忠明が頭ぽんぽんしてきた。忠明の説明も一応しておくか。バカ。以上だ。
「最後いくぞ?」
夏也が頭をぽんぽんしてきた。夏也はなー……チビだ。うん。
三人に頭ぽんぽんされてわかったことがある。俺は男にときめかない。え? 何を当たり前のことを言ってるんだって? いやー、たまにあるじゃん、「俺、男なのにこいつのこと……」ってなってるラノベ。
まあそんなことは起きないってことだ、多分な。
「まあ、頭ぽんぽんもさせてくれたことだしな。約束は守るぜ、いくら貸せばいい?」
「五千円」
「安いな。それすら持ってなかったのかよ」
「ああ。色々あってな」
「まあいいや、はい」
俺は五千円を受け取った。その五千円は、日本国のものではなく、ちゃんと魔王様が発行してるやつだった。表にはミツハたんの顔があった。
「な、なあちょっと確認したいんだけど」
「なんだ?」
「俺の顔ってもしかしてお金に載ってる?」
「ああ、一万円札にな」
マジかよ!? だからなぜ異世界のやつらはプライバシーってもんを守らないんだ!




