第二十九話 レベリングの成果
「いでよ、セラフ!」
セラフを召喚する。そして、
「いでよ、セレス!」
セレスも合わせて召喚する。
「別にいでよなんて言わなくてもいいんと思うのじゃ」
「い、いや、かっこいいかなーって」
「何をやっておるのじゃ……」
すごく呆れられた。確かに普通に召喚できるんだけど何か掛け声ほしいじゃん。ちょっと考えとくか。
「準備はよいか小娘共」
「ちょっとシャルティアたんのことを重要視しすぎてて癪に障るんだよなーブリザードドラゴンさんよ!」
「そこの小娘以外はなんとでもなるだろ? 俺様に勝てるやつは今までいなかったんだ。そう簡単に何人も俺様を超える強さの者が出てくるはずがない。まあ今はそこの小娘にも負ける気がせんがな」
「ああ、そうかよ。そう言っていられるのも今のうちだぜ老いぼれドラゴン!」
「なんだと貴様! 殺してやるぞ!」
ドラゴンの巨体が宙に舞い、俺たちめがけて飛んでくる。
「うわっ!?」
俺が反応できた時には、もう遅かった。ドラゴンが突っ込んでくる。だが、俺に当たることはなかった。
「今のくらい避けてくださいよ、ご主人様。まさか行動パターン把握してないんですか?」
サリエルが俺の体を抱きかかえてドラゴンの攻撃を避けていた。胸、胸当たってますよサリエル様!
そのことから意識を逸らすためにブリザードドラゴンの行動パターンについて思考を巡らす。俺だってゲーマーだ。随分前に戦ったきりで、あまり覚えていなかったが、一回勝ったことがある相手だ。こちらだって負ける気がしない。
「ほう? 今のを避けるか。小娘の仲間だけはあるな。とはいえ若干1名ほど危なかったやつもいるようだが?」
うっ、言い返す言葉がねぇ。
「そんな無駄話をしていていいのかなー?」
シャルティアは、5mほどもあるドラゴンのさらに頭上からパンチを繰り出す。だが、シャルティアたんは弾かれた。
「え? 何が起こったのだー?」
「小娘よ、貴様の攻撃はもう俺様には効かない。いくらでも打ってくるがよい」
シャルティアたんの攻撃が通らないだと? そんな能力ブリザードドラゴンにあったか?
「サリエル、今のは何が起こったかわかるか?」
「すみませんご主人様、ゲーム時ではブリザードドラゴンにあんな能力はなかったはずです。あれがもしブラフでなければ私達に攻撃を通す手段は……」
「そうか……シャルティア、もう少し本気を出してもいいぞ」
「今のは本気じゃなかったんですか?」
「当たり前だろ? 今のが本気に見えたならまだまだだな」
「わかったのだー」
シャルティアは拳に気を練り上げ、先程とは比べ物にならないパンチを繰り出す。
「くっ、まさか俺様の物理防御を超えてくるとはな」
「物理防御だと!?」
ちょっと前に出た新ギミックじゃねぇか、まさかブリザードドラゴンについていたとは。
「すみませんご主人様、まさかブリザードドラゴンまでもが上方修正されているとは」
「いや、これで謎が解けた。ならばここからは俺達のターンといこうか」
「わかりました」
「セラフ、魔術師モード」
スーパーレア以上の精霊は、レベルが一定あがると新しいスキルを覚える。スーパーレアの精霊は30レベルでスキルを覚える。セラフのスキルは物理型で守を固めるしか出来ない盾モードから魔法を使い敵を攻撃することが出来る魔術師モードに変更するというスキルだ。
何故今このスキルを使ったかというと、物理無効というギミックには魔法が効くからだ。つまり今のブリザードドラゴンには俺が一番の火力源!
「いけぇセラフ!」
セラフは魔力を練り上げ火球を作り出す。そして、ブリザードドラゴンに放つ。
「くっ、貴様魔法も使えたのか」
「まあな、俺のことを何でもできるスーパーマンと呼んでくれてもいいんだぜ」
「センスなさすぎなのだー」
そして、ミツハたんも俺の真似をして、魔法を練り上げる。てかちょっと待ってミツハたん、それやりすぎじゃない?
ミツハたんは火、氷、雷の3種の魔法を同時に練り上げ、ブリザードドラゴンに放っていた。セラフの、俺の特権が……。
「止めなのだー」
追撃でシャルティアたんがブリザードドラゴンをたたき落とす。
ブリザードドラゴンは気絶してしまった。
「うーん、どうしようかこれ?魔王の話聞きたいから早く起きてほしいんだけど……」
パチンッ
シャルティアたんの平手打ちが炸裂して、ブリザードドラゴンは目が覚めた。
「俺様が2度も負けるなんて……」
「残念だったな。俺達が強すぎただけだ」
「自信過剰すぎなのじゃ……」
「だってブリザードドラゴンに勝ったんだぜ!?」
「そんなこと言ってると魔王に負けるのじゃ」
「うっ、だから今から魔王の情報聞くんじゃないか」
「あの、俺様の話聞いて?」
「あ、ごめんブリドラ」
「そんな略し方もやめて?」
「とりあえず俺達が勝ったんだからお前が知っている魔王の情報全てとブリザードの腕輪をくれ」
「えっ、腕輪のためには俺様の鱗剥がないといけないから嫌なんだけど」
「俺が剥いでやろうか?」
「わかりました、腕輪あげますから剥ぐのはやめて」
こうして俺達は初めて龍種を倒した。
〜とある魔族領の一角〜
「ブリザードドラゴンがまたシャルティアとかいう奴に負けたらしいぞ」
「龍種の若い奴等の何体かもそいつにやられて死んでしまっている。対策を打つべきではないか?」
「しかし、ブリザードドラゴンがやられた相手だ、もう老いぼれで絶盛期ほどの力はないにしても、かつては龍種四天王にもなったやつだ、そいつが2度もやられる相手に勝てるか?」
「四天王ならあるいは、倒せるやもしれぬな。まあ俺達には無理だろ」
「いっそのこと何体か連携して潰しにいくか?」
「基本群れるのは嫌なんだが、仕方ないやもしれぬな、少し考えてみるか」