第十六話 宿屋
俺はシャルティアたんの寝顔を見ながら宿屋へ向かっていた。今まではシャルティアたんの家に居候していたから、初めての宿屋だ。
宿屋の前までつく。寂れている感じがあり、あまり衛生的にも良くなさそうだ。それでも宿屋はあともう一つしかなく、こちらに比べて割高なので、仕方ないと思い、ドアを開ける。
「すいませーん、泊まらせてほしいのですがー?」
すると、奥からおじさんが出てきた。
「おう、大部屋で雑魚寝、それと飯なんかはつかねぇで一人一泊300ゴールドだがそれでいいか?」
「オッケーです」
「よし、それならこの奥の部屋だ。それと、これはロッカーの鍵だ。盗まれたくねぇもんはこん中に入れといてくれや」
ロッカーの鍵を受け取る。錆び付いていたが、大丈夫だろうか?
「ちなみに泊まってるもん同士のいざこざやその他諸々の責任とか取るつもりはねぇから。巻き込まれるのは嫌なもんでな」
「分かりました」
わざわざ先に言ってきたということはよくあることなんだろう。可愛い女の子を連れてるしちょっと危ないかもな。まあ仕方ない。
大部屋の中に入ってみる。今のところ人はそんなにいないが、数人はいた。まあ予想してたけど男しかいなかった。
みんなこちらをちらちら見てくる。これが性的な視線というものか! ちょっと気持ちいい。これがうちの女性陣だ。ハッハッハ!
「なんじゃあいつら、気持ち悪い目でこっちを見てくるのじゃ。お主なんとかするのじゃ」
ミツハたんが愚痴をこぼす。悪いな、ゴールドのためだ。耐えろ。
「なんとかしろって言われても無理だわ」
「だから個室をとればよかったのじゃ」
「だって高いだろ?」
「少しくらい無駄遣いしてもいいのじゃ!」
「いや無駄遣いはしたらダメだってお母さんに教えられてるから」
え? ステーキ2枚も食ったのとかソシャゲに課金するのは無駄遣いじゃないのかって? ワタシナンノコトダカワカリマセン
そうこうしていると、一人の屈強そうな男が俺達に話しかけてきた。
「お前らってなんでこんな宿屋に泊まってるんだ? 召喚士か?」
ここは無闇に答えない方がいいだろう。まあ友好な関係になれるならそっちの方がいいかもしれないからやんわり返しておこう。
「そちらはどういった仕事をしているのですか?」
「俺か、俺はこの街で護衛の仕事を主にしている召喚士のバングだ。このように体を鍛えていると依頼人に安心されるんだよ」
そうか、たしかに貧弱な護衛人と屈強そうな護衛人どっちを選びたいかと言えば屈強そうな護衛人だもんな。
「そうなんですね、俺達も召喚士なんですよ、といっても正確には今寝てるこの子と俺がなんですけどね」
「俺? ああなるほど。まあこれから一緒に仕事したりすることもあるだろうよろしくな」
そうして手を差し出してきた。俺も手を出し、握手する。
それにしても俺なんか変なこと言ったか? なんかバングさんの頭にはてなマーク見えたけど? まあどうでもいいか。
こうして俺達はギルドマスターを除く初めての同業者と知り合った。