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アイナトリーの空の下  作者: メテム
孤高の塔にレイスは住まう
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第三話

 祭壇は広場の端に設置されていた。

 予想していたより簡素な作りで、祭壇の奥には幾つかの触媒であるクリスタルが置かれ、その手前の床にはテレポーターが描かれていた。

 見てみた限りテレポーターが特に崩れているような様子は見えなかった。

 チェリンはすぐに注意深くテレポーターを調べる。

 すると程なくして声を上げた。


「やはりここだ。クリスタルの位置がおかしくなってる」


 そう告げると右に設置されていた緑のクリスタルを指さして告げた。


「おそらく召喚されたインプが位置でも動かしたんだろう。この位置ではモンスターの湧きを制御することも出来ないし、レッドデーモンなどの比較的強めのモンスターまで湧いてしまう。これが全ての原因だったんだよ」


 力強く答えるチェリン。

 原因が呆気無く判明した私達は、幾分安堵し緊張をほぐした。


「それで? このクリスタルをどうやって動かしたらいいの?」


「うん、このクリスタルは本来なら隣にある白いクリスタルの上に設置されなければならないんだ。この緑のクリスタルの位置がすごく大切だからね」


「なるほど、緑のクリスタルを白のクリスタルの上ね。早速動かしてもいい?」


「いや、他にも様子を見たいから少し待ってもらえないかな?」


 そう言うとチェリンはクリスタルの周りを調べだした。

 私達はモンスターが来ないか見張りを続ける。

 幸いにして端っこにある祭壇に近づいてくる気配は見られなかった。

 ただ念には念を入れてエナジーパペットの詠唱を私は始めた。

 すると時を同じくしてチェリンが声を上げた。


「よし、他に問題はないようだ。それではクリスタルの位置を戻してくれないか?」


「レモン、私は今手が離せないのよ。悪いけどクリスタルを直してもらえる?」


 そうレモンに頼む。


「いいよ。んじゃ僕がやるよ。チェリンさん。緑のクリスタルをどうしたらいいんだっけ?」


「緑のクリスタルを白のクリスタルの上に配置してもらいたいんだ。そうしたら全てが終わる」


「はいはい、緑のクリスタルを白のクリスタルの下、ね」


 周りの皆が凍りつくように止まる。


「ばっ、レモン、待てっ、下じゃなくて上だ!」


 そう私が止めるも遅く、レモンは緑のクリスタルを白のクリスタルの下に移動させた……。


「まずいっ」


 チェリンがそう叫んだ。

 そして時を同じくしてテレポーターが光り輝く。

 辺りには明らかに異質な魔界の風が漂い始めた。


「皆、テレポーターから離れろ!」


 慌てて指示を出し離れる。

 そしてテレポーターより召喚された者が姿を現した……。


 現れたのは全身に漆黒の鎧を纏い暗黒のオーラを携えた首なしの魔物。

 これは凶悪と名高い魔界の貴族デュラハンだ。

 そして跨っているのはこちらも漆黒の毛並みをもつ魔界の馬、高い魔力を持っているナイトメアだ。

 正直この召喚された者を相手にするには私達に分が悪い。

 メイジ三人とネクロマンサーではデュラハン一人殺すのですら手一杯だ。

 おまけに今回はナイトメアまで……。

 どうやって皆に指示を出そうか考えをしていたところ、先に動いたのはデュラハンだった。


「ヒヒィ――――ン」


 そう嘶くナイトメアと共にこちらに突撃してくるデュラハン。

 手に構えたブロードソードで私達に切り込んでくる。

 何とかデュラハンの攻撃を避けた私だったが、そのままの勢いで後方のハムに突撃していった。


「うわっ」

 慌ててデュラハンのブロードソードを避けるハム。

 ぎりぎりのところで身をかわせたようだったが、同時に繰り出されていたナイトメアの突きをまともにその身に受けたようだ。

 思わず膝をつけるハム。


「ハム!」


 何とか声をかけたところ、右手を何とか挙げるのが見えた。

 まだ致命傷には至らなかったようだ。

 隣ではミストがエナジーボルトの詠唱をしていた。

 そして完成したのかデュラハンに向けて開放する。

 が、ここでまた想定外のことが起きた。

 ミストの放ったエナジーボルトだがデュラハンの手前で目に見えない力で跳ね返されてそのままミストに向けて飛んでいったのだ。


「きゃ――――っ」


 自分の放ったエナジーボルトをそのまま身に受けるミスト。

 おかしい、デュラハンは高い魔法抵抗力を持ってはいるが、自身は魔法を唱えることはないはず。

 そうなると考えられるのは跨っているナイトメアが詠唱したリフレクトか。

 くそっ厄介なことになってきた。

 ミストとハムが攻撃を受けて崩れたのを見ると、デュラハンの矛先が今度は私に向かったようだ。

 ゆっくりと振り返りながら私に対して構える姿勢を取る。

 迫ってくるにはまだ少し時間があると踏んだ私はまずレモンに指示を出した。


「レモン、すぐにクリスタルの位置を戻せ。それからエナジーパペットの用意!」


「わ、分かったよ」


 そう告げるとレモンは緑のクリスタルを白いクリスタルの上に置いた。

 するとテレポーターの光が消えるのが分かる。

 これでドサクサに紛れてデュラハンも消えやしないかと一縷の望みをかけたが、やはりそんな甘いことは無かったようだ。


「くそっ」


 少し苛つきながら私は簡単な魔法マジックアローの詠唱をした。

 ナイトメアがリフレクトを唱えている以上、私とナイトメアの魔力の勝負になる。

 これで打ち勝てないのならば、正直勝つのは厳しいだろう。

 迫り来るデュラハン。

 馬上から繰り出されるブロードソードの攻撃は、思いの外避けにくく、かつこちらから攻撃するのは難しい。

 少しずつだが体に切り傷が出来ていく。

 だがこちらの魔法の詠唱も出来上がった。

 すぐにマジックアローを放つ。

 一本の矢の形をしたエネルギーの塊は空中を飛びデュラハンへと向かった。

 そしてその手前でナイトメアの持つリフレクトにぶつかる。


「いけるかっ」


 そう望みをかけた一撃だったが、それは無情にも手前で跳ね返され、エネルギーの矢は私の体を貫いた。


「ぐはっ」


 右肩にマジックアローを受け、思わずその痛みから魔法書を落としそうになる。

 何とか手に力をいれ気を保った。


 ……おかしい。


 確かにナイトメアは高い魔力を持つことで有名だ。

 しかし私の魔力ならナイトメアのリフレクトは貫けるはずだ。

 考えられることといったら馬上のデュラハンの影響か。

 魔法は使えなくても魔法抵抗力が高いデュラハンがナイトメアに影響してリフレクトが強化されていると考えられる。

 しかし理由はどうあれ、これはまずいことになった。

 味方の面子の中で魔力が一番高いのは当然私だ。

 他の三人より群を抜いている。

 その私がリフレクトを貫けないのならば、他の三人では当然貫けないだろう。

 もちろん意識を集中して本気の魔法を私が唱えたなら、ナイトメアのリフレクトといえど貫ける自信はあるが問題はその時間がとれないというところか。

 そう考えている間にデュラハンの隣にエナジーパペットが召喚された。

 とっさに身構えたが、すぐにレモンが召喚したものだと気づく。

 何とかこれで時間稼ぎができれば良いのだが。

 そう期待したが、やはり甘い考えだったようだ。

 デュラハンに絡みついたエナジーパペットだったが、ナイトメアが首を一振りするだけでかき消されるように消えていった。

 おそらくディスペルの魔法でも使ったのだろうか。

 高い魔力の成せる技だ。

 エナジーパペットをかき消したデュラハンはゆっくりと身をレモンに向けた。

 視線から逃げるように駆けまわるレモン。

 後方ではミストとハムが態勢を立て直し、集中して魔法を詠唱しているようだ。

 何とかして二人が詠唱を完成するまで私とレモンで間を作らなければならない。

 そう思った私は、レモンを追っていたデュラハンの前に立ちはだかった。

 デュラハンのブロードソードが私を襲う。

 刃物を持たない私はそれを受ける術がない。

 何とかギリギリのところで避けるのが手一杯だ。

 しかも同時攻撃でナイトメアが魔法を繰り出してくる。

 高い魔力で放たれる魔法が非常に効果的に私を襲う。

 私はなんとかデュラハンの死角になるよう後ろに回り込む。

 デュラハンがブロードソードをふるう態勢から身を立てなおしている間に私はデュラハンの背中をとることに成功した。

 この位置関係ならば不意をついて一撃を食らわせられる。

 そう判断し今度は集中して魔法を唱えた。

 詠唱した魔法はエナジーボルト。

 これならばナイトメアのリフレクトを貫けデュラハンにダメージを与えられるはずだ。

 そう思って詠唱していた私を予想外の攻撃を襲った。

 それはデュラハンではなくナイトメアの馬としての本能的な攻撃、背後の人物への後ろ蹴りだ。


「ぐぅ」


 思わぬ攻撃に祭壇まで吹き飛ばされる私。

 くそっせっかく背後を取ったというのに……。

 デュラハンがゆっくりと私の方に向き直す。

 と、今度はその後ろからミストとハムの声が聞こえた。

 何を話したのかは聞き取れはしなかったが、手から放たれる魔法からエナジーボルトを唱えたのが分かった。

 位置関係からモロにデュラハンの死角からの攻撃だ。


 これならば!


 その場にいる者が全員そう思っただろう。

 が、ミストとハムの渾身のエナジーボルトだったがそれは非情にもナイトメアのリフレクトに弾かれた。


 ……これでも駄目か。


 気落ちしながらも次の手を考える。

 ミスト達を囮にして私が集中して魔法を詠唱したならいけるはずだ。

 しかしそれはあまりにも危険だ。

 何かないか何かないか。

 そう焦りながら私は無意識的にバックパックに手を入れて探った。

 するとバックパックの中でガチャリと音を立てて当たるものがある。


 ……これは……ボムだ!


 ボムならば魔法ではないのでリフレクトに影響されることはない。

 そう思った私は即座にバックパックに入っていたありったけのボムをデュラハンに投げつけた。

 全部で二十本程だろうか。

 この数を一気に放ったのだから相応のダメージを与えられるはず。

 爆発する際の音に気を使い私は耳をふさいだ、が。

 

 …………。

 

 おかしい、足元に放り投げたボムが一向に爆発しない。

 よくよく見てみると紫色の液体が中で微妙に濁っているのが分かる。


 くそっ、湿気ってる!


 長い間放置されていたと思われるボムは、その効力を失っていたようだ。

 せっかく救いの手筈だったのに。


 あの雑貨屋めっ、ろくでもないもの押し付けやがって!


 ボムを投げつけたことで身構えていたデュラハンだったが、それが不発だったのを悟るとジワジワと私の方へ向かってきた。

 ボムも駄目、ミスト達の魔法もリフレクトを貫けない。

 となると後は私の魔法しか無いがそれには時間が……。

 頭をフル回転させて考えるがやはり結論は一つしか無い。

 すぐに皆に指示を出した。


「ミスト、レモン、ハム! 私が詠唱するからその間に時間稼ぎを頼む!」


 そう告げるとレモン達が駆けつけてきてデュラハンと私の間に割って入った。

 これなら何とか時間が稼げるかもしれない。

 そう考え、即座に魔法を唱えようとした。

 まさにその時、私の視界にキラリと光る何かが横切った。

 何だろう。

 光るものを見てみるとそれはバックパックの中にあった。

 ボムを投げつける際に飛び出たんであろうそれは……ボーラ。


 ――よーしついでに大サービスでボーラもつけちゃう――


 嬉しそうに話していた雑貨屋の顔が目に浮かぶ。

 緊迫した戦いのさなかだが思わず苦笑してしまった。

 そして間に立っているミスト達に意識を向けているデュラハンに向かって私はボーラを振りかざし、集中して投げつけた。

 弧を描くようにしてデュラハンに向かったボーラは、うまい具合にナイトメアの脚に絡みついた。

 思わぬ攻撃にデュラハンがバランスを崩し、ナイトメアから地面に叩き落とされた。


「皆、いまだっ!」


 そう叫び、デュラハンがうろたえている間に私達はありったけの魔力を込めて攻撃を繰り出した。

 渾身の力を振り絞って出された魔法は、今度はナイトメアのリフレクトの保護を受けないデュラハンにモロに直撃した。

 足から地面に崩れ落ちるデュラハン。

 そしてトドメとばかりに四人でフレイムストライクを詠唱する。

 そして追撃をかけた後、デュラハンの体は掻き消えるように消えていった……。

 デュラハンを片付けた私達の前にはナイトメアが残ったが、こちらは主であるデュラハンが死んだ為このままの姿を保つことが出来ず、程なくして魔界へと消えていった。


「ふぅ~」


 戦闘が終わると、私達は地面に体を預けるようにして一息をついた。


「皆さん、お疲れ様でした」


 チェリンはデュラハンとの戦闘に参加できる事ができず、歯痒い思いをしていたのだろう。

 きまり悪そうに声をかけてきた。


「レモンのせいで大変なことになったけれど、これでもう異常は止められたってことでいいの?」


「そうですね、先ほど祭壇を見ましたが、もうこれ以上モンスターが湧いてくることはありません。後はすでに召喚されているモンスターを倒せば安全な場所になります」


「そうね、それなら後は虱潰しに倒すだけ、か」


「はい。それで、あの……」


「分かってるわ。例の塔のことでしょ?」


「はい、お疲れの所申し訳ないのですが、ラピーの様子が気になりまして……」


「よし、皆。もうひと踏ん張り頑張って、塔に向かいましょう」


 疲れて横たわっている皆を鼓舞し、私達は塔へと向かった。


 ラピーのいた塔にたどり着く。

 入り口は相変わらず閉ざされたままだった。

 が、サイレントトークによりチェリンに教わったキーワードを唱えると、その重々しい扉はゆっくりと開かれた。


「あぁ、愛しのラピー……今行くよ、待ってて」


 そう告げるや否や、勢い良く階段をかけあがり上階へと向かっていくチェリン。

 私達もその後を追うようにして向かった。

 そして塔の上階に差し掛かったところで、私達はチェリンに追いついた。

 目の前に広がっていた光景。

 私達の前にはレイスとなったラピーの姿が立っていた。

 それはある意味意外で、いや心の中では願っていたのかもしれない結末だった。


「チェリン、長い間あなたの来るのを待っていました……」


 そう告げると二人抱きあうように近づいていく。


「ラピー、僕もだよ。君の言うことを聞かずこんな結末になって、僕はもう……なんて言っていいのやら……」


「わかります、貴方のその姿を見たらその苦しみが十分……」


 目の前で繰り広げる光景に、私達は暫く動けずにいた。

 そしてそのまま立っていた私に向かってラピーだったレイスが少しずつ事情を語り始めた。


「あの日チェリンが塔を飛び出して見に行った時、私は塔のテラスから様子を見てました。そして小屋に逃げ込んでいるところも。それから私はずっとチェリンが出てくるのを待っていたのです。あそこの小屋には食料や秘薬などもありましたから、そこで準備してタイミングを練っているんだろうと。そしてどのぐらい待ったのかもう覚えていないのですが、ある時レイスが外に出るのを見て私はチェリンの死を悟ったのです。それからの私にはただただ絶望の日々しかありませんでした。幸いこの塔の最上部には外へと通じる一方通行のテレポーターがあります。そこからキニッシリへと帰ることもできたんです。でもチェリンのいない生活にどれだけの価値があるのだろうか、意味があるのか。そう思った私は、自ら命を絶ち、いつか再会できるであろう日々を待ちながらレイスになったのです」


「なるほど、そうだったのね……」


「でも今回ようやく皆様方のおかげで無事チェリンに会うことが出来ました。私達の思いが通じたのです。本当にありがとうございます」


「いえ、二人のお互いを想う強い気持ちが最後に実を結んだのは私にとっても嬉しい事よ」


 周りを見ても三人共満足そうだ。


「それで、これからはどうするつもり? ここで暮らす?」


 そう問いかけるとチェリンが答えた。


「いや、私達はもうこの世にいていい存在じゃない。そしてこれから行き着く先には必ず二人だけの誰にも邪魔されない世界が待っているはずです。なのでもうそちらへ行こうと思います」


「分かったわ。でも私達は誰もバードじゃない。レクイエムは唱えられないのだけれど……でも問題なさそうね」


 そう話しかけている最中、二人の体が少しずつ光に包まれていく。


「皆さん、本当にありがとう。この気持はいつまでも忘れません……」


 体が消えながら、最後まで二人は感謝の言葉を伝えた。

 そして私達が見守っている中、完全に体が消えていった。


「……さて、というわけで無事解決したわね。幸せな結末になったんだし、なんだか気持ちも楽になったわ」


「そうだね~メテム~、俺もネクロマンサーを長いことやってるけど、こんな感動的なことだなんて初めてだよ」


「うぅっ、本当に、本当に、良かったです……。二人のお互いを想う愛が実を結んだと思うと……もう言葉になりません」


 そう言いながら目を真っ赤にそめてミストは泣き崩れる。


「そうだね、本当に真実の愛なんだろうね。お互いのことを信じて数十年も待つなんて並大抵の覚悟ではできないよね」


「はい……はい……、これこそが真実の愛なんです……うぅ……」


「それで、メテム僕たちはこれからどうしたらいいかな」


「うん、最上階の部屋とテラスには入らないようにしよう。彼女にしても立ち入ってもらいたくないだろうし。念のためロックをかけていこう。そして後は外にいるモンスターを駆逐して、全て完了、と」


「了解~んじゃ最後の大仕事、頑張りますか~」


 そう言うと皆で準備をした。

 そして塔を出た後に最後にもう一度振り向く。

 すると、頭上でこんな声が頭に響いたのは錯覚だろうか。


 ――ああ、愛しのラピー、もう決して君のそばから離れないよ――

 ――チェリン、本当に嬉しいわ。いつまでもいつまでも一緒にいてね――


--


「メテムさん~、また牛みたいに寝っ転がってるんですか?」


 そう言いながら、ブルージュの広場で寝ている私にミストが近づいてきた。


「うるっさいなあ。別にいいでしょうが」


 めんどくさそうに横たわりながら手を振って答える。


「それより何よ、また舞台でも見ろっていうの?」


「いやもうスタンド・バイ・ユーは卒業しました。なんだか当たり前なんですが全てが作り物のような気がして」


「そうだねえ、どれだけ迫真の演技をしたとしても、結局そのことが自分に降りかからない事にはどうしてもリアリティが無いからね」


 しばし沈黙が流れる。


「……あの二人……今頃きっと幸せに暮らしてるでしょうね」


 そう言いながらミストは天空を仰いだ。


「そうだね、そう思いたいね」


 私もつられるように空を眺める。


「真実の愛、か。この世の中にどれだけあるのか分からないけれど……少なくとも私達は知ることができたわけか……」


 見上げる空はいつも大きい。

 私は彼らのことを思いながら、そっと目をとじた。

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