感情って恐ろしい!
「てめぇら全員、ぶっ殺す!!!」
俺は、怒りに任せて走り出した。
まずは、一番近くにいたワイバーン。
ワイバーンは俺の接近に気がつくと、「グルァァ!!」という雄叫びを上げながら、俺に向かって火球を吐き出してきた。
俺は、飛んでくる火球を最小限の動きで避けると、そのままワイバーンに向かって、腰に提げていた剣を抜き放ちながら、その頭を立てに真っ二つに切った。
「まずは一匹……」
爺のいる方向を一瞥する。爺は俺に向かって、「止まれ!」と、繰り返している。
だが、『隷属』状態でない俺は止まらない。
すると、爺の周りにいた4人のおっさんが俺の前に出てきた。
見た目はごろつきって感じだ。
4人とも、その目と纏う空気に殺意がやどっている。
「殺せ!!」
おっさん達の中でもリーダー格にあるのだろうひときわごついおっさんが、仲間に命令した。
それをうけて、ほかの3人のおっさんが俺の前に出てくる。
「シッッ!!」
甘い。3人程度で俺を止められるはずがない。
俺に向かってきた3人のうち、1人は上半身と下半身が離反し、1人は首が飛び、そしてもう1人は俺の蹴りで顔面が陥没している。
激昂しているせいか、初めての殺人でも嫌悪感を抱いたりすることはなかった。
「ちっ、使えねぇ。しゃあねぇ、てめぇの相手はこの俺様がしてやるよ!!」
最後に残ったリーダー格が何か言ってきているが、俺は既にこいつらからは興味を失っている。
「じゃあくたばれ」
そう呟き、男の首を飛ばす。
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前戯は終わった、あとは本命だけだ。
アレを消して、俺は外に出るんだ。
「くそっ!くらえ、【火炎の槍】」
爺が叫ぶと、炎でできた槍が空中に現れた。
だが俺はそれを軽くかわすと、
「さようなら」
その一言とともに、その心臓を貫いた。
******
むなしい、心にぽっかり穴が開いたようだ。
もしもう少し早く逃亡を決意できていれば、きっとレナードは……
本当はわかっている、こんな『タラレバ』が意味のないものだってことくらいは。
それでもそう思わずにはいられない。
後ろを振り返ると、1131番と呼ばれていた、あのエルフがいた。
「一緒にくるか?」
初めて奴隷商のところであってから一度も変わっていない死んでいるかのような目。
俺は返事を期待していなかったし、返事があるなんて思っていなかった。
だからこそ、俺は驚いたのだろう。
だからこそ、俺は見とれてしまったのだろう。
表情を一切変えずに、力強くうなずくその姿に。
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そのまま屋敷を出た俺たちは、屋敷の周りの森を少し歩いて、ちょうどいい広場を見つけ、そこで野宿することに決めた。
疲れがたまっていたらしく、2人ともすぐに眠ってしまった。
翌朝、俺は嫌な予感とともに目が覚めた。
すぐさま周りを確認すると、エルフちゃんがうなされていた。
「なんつー高熱……」
俺でさえここまでになったことがあるかというほどの高熱だった。
41度を超えているのはほぼ確実だろう。
ここでまた、仲間を失うのか?答えは否。すぐに助ける方法を考える。
周りに何か治療の道具になるものはあるか?周りにあるのは木だけだ、あるはずがない。
ならどうするか?決まっている、『魔法』を使うだけだ。
使い方なんて知らない、だからとりあえずイメージしてみる。俺が地球で受けた治療を。
『素体からの要請を感知しました。神域を展開し事象の改変を行いますか?』
脳裏に女性の声が響いた。
「シンイキのテンカイだか何だか知らないがどうにかなるなら何でもしてくれよっ!」
『諾、これよりマスターの命に従い神域を展開いたします』
二度目の声が響いた後、エルフちゃんの体は暖かな光に包まれた。
「う、う~ん。んにゃ!?なんで!?アリスは、話せてるの!?」
光が収まった後、そこにいたのは、元気になったエルフちゃんだった……って、なんか元気すぎないか!?
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名前:リョウガ・タナカ 17歳 人族
職業:なし 状態:正常
レベル:1 HP123000 MP624500
力72000 防御44000
敏捷49000 魔力699000
スキル 通常:恐怖無効 痛覚無効 剣技Lv3 魔力式闘技 救済の刃
ユニーク:言語理解 アイテムボックス 魔法適正
EXユニーク:健康体
装備:??? ??? ??? ??? ???
称号:実験動物 断罪者
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