常識とゴーレム!
半分説明回です。
あの後、俺は同僚と話をすることが多くなった。
特によく話すのが、俺の右隣にいたトラのおっさんで、名前はレナードというらしい。
このおっさん見てくれは厳ついが、話してみるとめちゃくちゃいいやつだった!
俺が遠い国からきてここらの常識が分からないといえば、おそらくもうそれを意識する必要がないと思っているだろうに、俺に一から常識を教えてくれた。
レナード曰く、この世界の通貨は、白金貨、金貨、銀貨、銅貨で、金銭単位は『リル』らしい。
いろいろなものの物価を聞いて判断すると、一リル=十円のようだ。
さらに、一銅貨=一リル、一銀貨=百リル、一金貨=十万リル、一白金貨=一千万リル、だそうだ。
この世界には三つの大国が存在するということも聞いた。
まずは、『バレスティ王国』通称『王国』。
治安もよく差別なども特になく、とりあえず住むならここ!って感じの国だ。
でも、ちょっと前から三大国の中でも比較的近場にある『帝国』と、仲の悪さがうわさになっているらしい。
「まあでも、それ以外はかなりいい国っぽいからくらすなら王国かな」なんてつぶやくと、それが聞こえていたらしいレナードから「ここが王国だろうが!」なんて笑われてしまった。
恥ずかしい……
次に、『フォルメス帝国』通称『帝国』。
ここも差別はないが、治安はあまりよくないっぽい。
なんでも、実力主義の国らしく強いものこそが正義!みたいな感じらしい。
また、王国を敵視していて、帝国が王国に攻め込むのは時間の問題ということだ。
俺は別に戦闘狂というわけでもないので帝国に行くことはないだろう。
最後に、『ヘルネ神聖教国』通称『教国』。
なんとここでは、あの女神を信仰しているらしい!これは一度、加護とやらの恨みを晴らしに行かなければならんな!
国としては、治安はいいが差別があるらしい。
具体的には獣人と、魔族の差別だ。もちろん、国として表立って差別をしているわけではないのだが、『人間至上主義』を語る一部の貴族たちが差別をしているそうだ。
王国や帝国との仲は良好だそうだ。
ここは行くとしても長居はしたくないな。差別なんて見たいもんじゃないしね。
三大国以外の国は、獣人の国『ガルム』や、魔大陸に存在する魔族の国『ディハネ』があるらしい。
そうそう、魔族と人間の仲なのだが、全体的に見ればそこまで悪くはないそうだ。
まず、魔族と魔物は全く関係がない。それを、魔族以外も理解しているから別に嫌う必要はないのだろう。
魔族にも、魔族版『人間至上主義』みたいなのが存在してはいるが、これも一部の魔族が掲げているだけということだ。
******
ここにきて早くも一か月が経過した。
俺の日課にも新しい実験が加わった。
まあそれは、単に魔物を倒すことだけなのだが……
「それにしてもリョーガ、お前強すぎだろ。なんで奴隷になったんだよ。」
と、レナードがぼやく。今日もやっぱり顔が怖い。
なぜレナードが俺の実力を知っているかというと、魔物を倒す実験の際に、おそらくまだ生き残っている全員であろう約十人が、一度に集められるからだ。
そして、一人づつ異なった魔物と戦わされる。
「そこらへんは俺も事情があるんだよ、察しろよ悪人面。」
「…確かに、俺が軽率だったな……。って誰が悪人面だよ十人並み!!」
「なんだとこら!?」
「やんのかおら!?」
こんな言い争いを毎日しているが、俺とレナードは親友なのだ。
きっとそうなのだ。
******
そして朝飯を食べて少しすると、今日も日課の魔物討伐実験に呼ばれた。
「1130番、今日の相手はこれだ。」
そこにいたのは高さ約3メートルほどのゴーレムだった。体は岩でできており、ザ・ゴーレムってな見た目をしている。
だが俺が思った、いや、感じたのは、
「強い……」
ゴーレムから感じる威圧感に思わず言葉が漏れてしまった。
おっさんが「初め!」と叫ぶと、ゴーレムはその巨大な腕で殴り掛かってきた。
その巨体に見合わぬ速さに驚愕しながらもなんとか腕をかわし、俺はゴーレムに切りかかった。
すると、ずぶっといういやな感触を感じながらも胴を切ることができた。
しかし、ゴーレムは胴が切られた事実などなかったかのように先ほどと変わらぬ速さで殴り掛かってきた。
ーーっまずい!!
メキメキっと俺の左腕から何かが砕ける音が聞こえた。
間違いなく折れたっ!
俺は、『痛覚無効』の影響で痛みこそないが全く動かない左腕をなるべく気にしないようにしながら、この状況をどう打開するかを必死に考える。
どうすりゃいい!?このゴーレムをぶっ倒す方法は……
……あるにはあるが、完全に運ゲーだな、この方法は。
******
まず、全速力でゴーレムに近づく。
飛んでくるパンチを、避けて避けて、避け続ける。
ゴーレムのパンチが地面に当たり、一瞬だけ動かなくなる。
「せいやーーっっ!!」
ゴーレムの後ろに回り、全力で足をそぐ。
気分は某進撃漫画の兵長だ。
そして地面に四つん這いになったゴーレムの足を伝って、そのまま背中に上り、剣を突き刺す。
剣は驚くほど軽く深く刺さった。
自分が倒れていることに気が付いたゴーレムは、そのまま立ち上がる。
すると俺は、ゴーレムの背中に刺さった剣を持ったまま、重力に従い地面へ向かう。
「いっけーーー!!!」
剣と俺はゴーレムを深く切り裂きながら、地面に叩きつけられる。
俺は左半身を地面に向けたままの体勢でゴーレムが倒れたのを確認した後、気を失った。
戦闘描写って難しすぎ…




