ランクアップ試験!その2――森の再探索――
好意的なコメントばかり頂いているので、逆に否定的なコメントを貰ったら心へのダメージが大きくなり過ぎるのでは、と考える今日この頃。
「じゃあ、明日の朝北の城門に集合な!」
「わかったよ。遅れるなよ?」
「善処しよう!!」
かなり不安だ……用意はしっかりしておこう。
バロンとの話し合いを終えてギルドを出ると、もうすぐ昼になる頃だった。
「二人とも、これから昼飯たべて、その後宿に戻るってのでいいかな?」
「いいよ〜。お腹すいたの〜」
「昼食はどこでいただきますか?」
「うーん、そうだなー」
と、話ながら露店街を歩いていると、
「お兄さん、お昼まだでしたら、うちにいらっしゃいませんか?」
「ん?君の店?」
「いえ、正確には父の店ですけど、美味しいんですよ!ただちょっとここらで使われてないものが使われているから、あまり人が来ないんですよ……」
髪をショートに切りそろえた少年、にも見える少女がそう言う。
「あまり使われないものねぇ……ちょっと気になるな。二人はどう?」
「おなかすいた。どこでもいいの」
「ふふふ、アリスの限界も近そうですし、そこに行きましょう」
「ん、そうだな!アリスも、もうすぐだからな?」
「うぅっ、ガマンするの……」
そして少女に振り返り、
「じゃあ、案内頼むわ」
「了解ですっ!」
******
少女に連れられてやって来たのは露店街にある、普通の食堂だった。
「ここです!」
「へぇ、普通の店だな。そんなに流行ってないのか?」
「うっ……。そうなんですよ……」
「お客さん連れてきたよー!!」
「おおっ、そうか!ありがとな、リー」
「あたしだってここの店員なんだから、当たり前だよ!」
店内に居たのは、冒険者と言われても疑わないような、ごついオッサンだった。
こいつからあの娘が生まれたのか……
なんかシュールだな。
「オメェさんらが客か!うちは流行っちゃいねぇが味は保証するぜ!!」
「じゃあオススメを持ってきて。三人前ね」
大体オススメを頼んでおけばいいものが出るという法則。
「あいよ!任せときな!!」
待つことおよそ十分。
「お待たせ!さあ、おあがりよ!!」
お前はソ〇マか。
さて、ソー……じゃなくて、店主が持ってきたのは、故郷である日本で幾度となく食べた――
「焼飯じゃないか……」
でも、この世界で米は見たこと無かったからかなり嬉しい。
「んにゅ?お兄ちゃん食べたことあるの?」
「ああ、俺の故郷でな」
「故郷ってことは……そういうことですか」
アリスとユキには俺のことについて教えているから、さっきの言葉で分かったのだろう。
「俺は好きだったな、焼飯」
うん、久しぶりに食べるけど、やっぱり美味しい。
「…………なるほど、料理ですか。これを使えばお父さんを…籠絡…」
ん?ユキがあんまし食べてないけど、体調でも悪いのかな?
「んっ!美味しいね、お兄ちゃん!!」
「そうだな、なんで人気無いんだろうなー」
やっぱり美味い。アリスの様子からしても、元日本人の贔屓目ってことは無いだろうに。
まあいっか。少なくとも、俺はこの店を利用することを今決めたし。
「ごちそうさん。美味かった。また来るよ」
「そうか!続ける自信出てきたよ。ありがとな!」
料金は三人で銀貨二枚だった。
日本円で約二千円。結構お手頃である。
******
翌朝、しっかりと準備をして、北の城門に向かう。
「やっと来たか!リョーガ!!」
うわっ、居たのはいいけどうるさっ!
なんでこんな朝っぱらから大声出すんだよ……
「うるさいバロン。もっと静かにして」
「あぁ!?せっかくの探索だぞ?もっと気合を入れろよ!!」
探索って言っても、ちょっと前にやってるし、狙いは死竜だし……
「ほらっ!さっさと行くぞ!!」
「はいはい」
北の森は相変わらず鬱蒼としており、不気味な雰囲気を纏っていた。
「リョーガ、前に来た時と違うことはあるか?」
「いや、分からないな。二人は?」
そう言って、アリスとユキを見る。
「なにか強いのがいるの」
「ですね。かなり強いです」
流石。俺は何も感じなかったよ……
「ダメじゃねぇか……」
「うるせぇよ」
二人の優秀さは今更なんだよ。
森の中で、俺達は三体の腐ったオークと対峙していた。
「相変わらずグロイな。バロン、どうする?」
「せっかく3体も居るんだ。お前達一人一人の戦い方で倒してみろ」
「あいよー」
まずは、俺が動く。
アイテムボックスから千刃ナイフを取り出し、刃を分裂させる。
そのまま、それをオークに飛ばし、オークを切り刻む。
「らくしょー」
と、呟きながらバロンに目をやると、やつは唖然としている。
なぜだ。
「おいリョーガ……。そりゃ魔導具か?」
そういや、魔導具は貴重なものなんだよな。いつも気にせず使ってたから完全に忘れてたよ。
「まあ、そうだけど。気にすんな。大したもんじゃないから」
「いや、大したもんじゃ無いって……ありえないだろ……」
「ねえ、まだやっちゃダメ?」
アリスが可愛く尋ねてくる。内容はまあ、あれだけど。
「いや、良いよ。やっちゃって」
「うん!【アイシクルバレット】!」
アリスが魔法を唱えると、周囲に握りこぶしより一回り小さい氷の塊がいくつか浮かぶ。
そして、それはそのままオークへと向かい――
「凄いな……」
「うちのアリスは可愛くて強いのよ?」
氷の塊がぶつかったところからオークの体は壊死していく。
そして、ついには全身ボロボロになって、崩れ落ちた。
またもバロンは唖然としている。
「最後はユキだな。頑張れよ?」
「任せてください」
そう言って、ユキは腰にはいた刀を抜く。
「行きます!【断界】」
オークから二メートルほど離れた場所で、ユキが刀を振るう。
「おいリョーガ。嬢ちゃんは何をやってんだ?」
「まあ見てろって」
「見てろって……」
次の瞬間、袈裟斬りされたようにオークの体が二つに分かれる。
「なっ!?」
三度、バロンが驚く。
「お疲れ、ユキ」
「あまり手応えがなかったです……」
そらそうでしょうね。あなた達強すぎるから……
「どうだ?満足したか、バロン」
すると、バロンはようやく意識を取り戻し、
「想像以上だよ!!お前ら三人とも規格外過ぎるわ!!」
と、叫んだのだった。




