新たな仲間!
ちくしょう、こんな展開になるならヴィオラの設定をもっと作り込んでおけば良かった……
ヴィオラ「……………………」
「って、いやいやいやいや!!弟子ってなんだよ!?俺は人に教えらるような人間じゃないからな!?」
第一、学校にすらあまり通っていないので、人に何かを教えるといっても、一体どんなに教えればいいのかわからない。
「大丈夫です!!見学させていただくだけで結構ですから!!」
「いや、見学だけって言っても……」
そうやって俺が文句を言い続けていると、
「どうしても……ダメですか?師匠……」
と、ヴィオラが上目遣いと涙声で聞いてきた。
それは反則だ。しかも、ヴィオラの性格上、狙ってやってる訳じゃないのがさらにタチが悪い。
「わかったよっ!ヴィオラは俺の弟子ねっ!!」
半ばやけになって答えると、
「ありがとうございますっ!!」
って、嬉しそうに言ってくれるもんだからやはりヴィオラは憎めないやつだ。
******
ヴィオラが弟子になった日の晩。
「ちょっと予定より早くなったけど、これからは二人にも勉強して貰うことにしたから」
ベッドの橋に腰をかけながら話す。
「お勉強〜?」
「お父さんが教えてくれるんですか?」
「そうそう、やっぱり多少は勉強もできないとダメだからね」
ヴィオラを弟子にしたことで、何かを教えることができるようになる必要があると感じた。
それに、元々二人にもいずれ勉強を教えるつもりだったし、それが少し早くなっただけだと考えればいい。
二人を預かっている以上、そういう面での教育も俺の仕事なのだよ!
さて、実際俺が勉強を教えられるのかというと、何とかなるとは思う。
ろくに通えていなかったが学校だが、成績はかなり良かったのだ。
まあ、病院での暇つぶしにかなり勉強していたからというのもあるが。
授業を受けていなかったので、独学での勉強だったのだが、それが功を奏したのだろう。
さらに、今の俺には万能サポートAIことソフィアさんもいる。
普通に教える分には過剰戦力かも知れない。
「とりあえずは計算が一通りできるまではやってもらうつもりだよ」
「うんっ!頑張るのっ!」
「期待に添えるよう、努力します!」
二人とも、やる気があって大変よろしい。
今どきの学生にこの姿を見せたいものよ。
ちなみに、計算、つまりは数学を教える教科に選んだ理由は、想像できるだろうけど消去法だ。
国語や英語は教える意味が無いし、理科はまだ早い。社会に至ってはそもそも俺も知らない。
ソフィアさんなら知っているかもしれないが、はるか大昔のことから入るわけにもいかないし。
そうそう、教えてみた感想なんだが、俺、案外教師に向いているかもしれない。
生徒の熱心さも良かったんだけどね。
翌朝、
「今日もヴィオラと作業したいんだけど、いい?」
「もちろんいいの〜!」
「私も、もっとヴィオラさんと仲良くなりたいです!」
二人も乗り気のようだし、今日は本格的に師匠としての活動をしてみよう。
まあ、職人歴はおそらくヴィオラのが圧倒的に長いから、師匠ってのも烏滸がましいと思うんだけどね。
ヴィオラには俺の部屋に来てもらった。
ヴィオラを部屋に上げる時に、女将さんに「わかってる」という目を向けられたが、おそらくあの人はわかってない。
「師匠!よろしくお願いします!!」
「おう、やっていくか!」
正直、師匠なんてのは力不足な気もするが、期待されている以上できる限りのことをすると決めた。
「じゃあまずはヴィオラが魔導具を作ってみて」
「はいっ!!」
素材は事前に俺が一通り用意している。
これで大丈夫は心配だったが、充分すぎるそうだ。
「まずは、劣飛竜の牙を――」
とまあ、ヴィオラの作業を見てたのだが、
「待って、そこは加工が甘い。というか、それ以前にうさぎの革よりゴブリンの革の方がいい」
「えっ!?でもゴブリンの革は見た目が……」
「それこそ加工のしかた。一度炙れば色が良くなる」
「そうなんですか!?」
師匠としてのの仕事、ありました……
元々俺は実験好きな人間だから、素材をより良く使用する方法をいろいろ考えているのだが、ヴィオラはそういう事をあまりしていなかったらしい。
ただ、やはり発想は素晴らしいものを持っているらしく、面白いものを作ってくれた。
「できました!名付けてドレスアッパーです!!」
このドレスアッパーははや着替えができる魔導具らしい。
最初はなんとも微妙な……と思ったのだが、よくよく説明を聞くと、流石はヴィオラという性能である。
なんでも、朝の忙しい時間だろうが、戦闘中だろうが、ドレスアッパーを持って念じれば、簡単に登録している服装に着替えることができるらしい。
これを使えば、戦闘中にいきなり本気の防具に着替えるなんてことも出来るだろう。
今まではそのことを考えていなかったし、戦闘中の装備変更ができるようになる道具は純粋に嬉しい。
彼女の能力は素晴らしいし、これからも師匠と弟子のして、更に友人として良い関係を築いていきたいものである。




