これじゃない系文化チート!前編
まーた1話じゃ終わらなかったよ。
どうしてくれようぞ。
Cランクに上がってから早くもひと月経過した。
俺は、いつものようにアリスとユキを連れてギルドに来ていた。
すると、ギルドにいたグレルという男から突然話しかけられた。
「頼む、リョーガ!俺に女の子を紹介してくれ!」
手を合わせながら頭を下げるグレルに対し、俺は困惑する。
「お、おう。よくわからんが今は忙しいからまた後でな」
グレルは、「じゃあ後で話を聞いてくれ!」と言ってどこかに走っていった。
アリスとユキは二人で楽しそうに話している。
「で、あれは一体どういうことだ?」
その日の昼下がり。依頼をこなし、アリスとユキに断ってから、グレルに会いに来た。
「そのまんまの意味だよ。いつも女の子をはべらせてるお前なら、何人か紹介くらいできるだろ!」
おい、はべらせてるってなんだよ。
「言っておくがアリスもユキも俺にとって家族ではあるが恋人では無いぞ。はべらせてるとか言うなよ」
「そうなのか?二人ともお前にぞっこんみたいだが?」
「兄や父親としてな。……ってか、恋人が欲しいなら合コンでもすりゃいいだろ?」
この発言がいけなかった。
「合コンって何だ?」
「ん?あぁ、ここらでは無いのかな?俺の故郷にあったイベント?みたいなもんだよ」
「へえ、一体何するんだ?」
「俺は参加したことないからよく知らんが、恋人が欲しい数人の男女が一緒に食事なんかをしたりして、あわよくばそのままーなんて感じかな?」
俺が説明を進めていくにつれて、だんだんと目が輝いていくグレル。
「いいじゃないか!やろうぜ、それ!!」
「おっ、おう……」
正直そこまで興味を持たれるとは思ってなかった。
合コンなんてもちろんやったことないしどうすればいいのかわからんぞ!
「でも、俺人脈はイマイチないよ?」
「大丈夫だ!人は俺が集める。お前は店の確保と段取りを頼む!」
「わ、わかった……それくらいなら――」
「あ、それとお前は強制参加な」
「はあ!?」
かくして、このリベラの街でこの世界で初めての合コンの実行が決定した。
何故か俺も参加することになったが……
******
合コン計画から一週間がたった。
「ついにこの日が来てしまったか……」
グレルから連絡が来たのだ。三日後にする事になったから店の準備を頼む、と。
店はしっかりと調べている。それは問題ないんだが……
「はぁ……憂鬱だ……」
「どうしたの〜?」
「体調でも悪いのですか?」
「いや、何でもないよー」
あと、俺は体調不良にはなりませんよ。
三日後。(ある意味)決戦の日の昼下がり。
俺が用意したのはなかなか小洒落た小さめの喫茶店のような店だ。金貨五枚で貸し切りにしてくれたのでここでする事にした。
「何が嫌かって俺そんなに人と話すのは甘くないんだよなー」
べ、べべ別にコミュ障じゃねぇし!本当だし!!
「おお、やっと来たかリョーガ!なかなかいい店をとったな!!」
やつがいた。グレルだ。
「ああ、それより人はちゃんと集まったのか?」
「おうよ!おまえを入れて男女五人ずつだ」
「わかった。揃ってるのか?」
「当たり前よ!!」
すごいな、こいつら。俺別に時間に遅れたわけじゃ無いんだけどな……
さて、広くはないが綺麗な店内に入ると、既に八人の若者が席に座っていた。
男性側は、チャラそうな金髪の男、オドオドした少年、マッチョな若者の三人とグレル。
グレル含め、全員そこそこ以上のイケメンなのだが合コンに参加する必要はあったのだろうか……
女性側は十代前半にしか見えない少女、容姿の似たおそらく双子の少女、妖艶なお姉さん、そしてこの間――具体的にはランクアップ試験の時に出会った魔法使いの女の子、エルさん。
あっ、目が合った。
お互いに見つめ合ったまま固まっている。だがそこに甘い雰囲気など一切無い。
互いにその目だけで考えが読めているようだ、そう……
――なぜお前がいるのか――
俺とエルさんの放つ剣呑な空気に気付くことも無く、グレルが話し始める。
「えー、これからリョーガ主催の『合コン』を開始したいと思います!
それじゃ、まず自己紹介からっ!」
そう言って、やつは俺の方を向く。
えっ、俺?何で俺から!?
いや、恐らくあいつは合コンを知っている俺に自己紹介を始めさせる事で自分が何を話すのかを考える時間を取ろうとしているのだろう。
案外策士な人物である。モテないが。
さてさて、グレルのことは置いておき、自分の自己紹介である。
とはいえ、合コンでの自己紹介など俺に知る由もない。何となくでやってしまおう。
「えー、初めまして。俺はリョーガといいます。つい最近Cランクになったばかりの冒険者です。今日はよろしくお願いします」
自己紹介を終えると、男性陣、特にオドオドした少年から『あっ、そんな感じでいいんだ』という視線を感じるが知ったこっちゃない。
そんな事より、女性陣からは今までのほんわかした視線から打って変わり、狩人が獲物を狙うような、そんな真剣な空気を感じる。
恐ろしい。さっさと帰ってアリスとユキに癒されたい。
そして、自己紹介は続いていく。




