ランクアップ試験!――見張りも大変です――
「よし!お前ら、準備はできてるな!
今日は二日目だ。気合入れていけよ!」
俺達の朝は早い。今日は五時起きだ。
そんな俺達にジョンさんの大声は辛い。
「う〜……うるさいの」
アリス様ご立腹である。
「ジョン試験官!俺達は昨日見張りをしていませんが、誰がしたのですか?」
と、シンくんの指摘。
あー、確かにな。俺達もするだろうからね。
「おう!昨晩は俺が一人でやったぞ!
お前らにも今日からはやってもらうからな!」
えー……このおっさん徹夜してるのにこのテンションなのかよ。
流石のシンくんもこの発言には唖然としている。
「そんなことより、早く出発するぞ!!」
だからうるさいってば……
******
結論から言うと、二日目は何も起きなかった。
馬車で草原を走り魔物が出たら狩る。それを繰り返すだけだった。
アリスも魔物には既に興味を失っていたらしく、氷の槍を作り出して一撃で仕留めていた。
戦闘より俺の膝上でまったりする方がすきなようだ。
魔法使いだというエルさんが目を見開いていたが、まあご愛嬌ってやつだね。
「凄いですよ、アリスさん!
まさか無詠唱を使える人がこんなところにいるなんて思いませんでしたよ!」
とまあ二日目の夜なのだが、今日はエルがアリスと話しているようだ。
「そーなの?でも、お兄ちゃんかてないからまだまだなの!」
「えっ……リョーガさんってただのひも男じゃないんですか!?」
ちょっと失礼な言葉が聞こえたね!
いい加減この噂はなんとかしなきゃだね!!
「ん〜?お兄ちゃんはかっこよくてつよくてステキな人なの!」
えっ……ちょっ!流石に恥ずかしい!!
「……なるほど、子供特有の憧れってやつですかね」
小声で言ってるみたいですけど、聞こえてますよエルさん?
まあ、事実なんでしょうけどね!
俺には悩みがあった。
「見張りか……」
今晩の見張りは俺達がする事になった。それはいいのだが、
「今までは魔法で結界はって済ませてたからやったことないんだけど……」
そう、俺達は俗に言う『見張り童貞』って奴なのだ(本当に俗に言うかは知らんけど)。
とにかく、夜遅くまでアリスやユキを起こし続ける訳にはいかない。
(徹夜かー、まあきっとそんなに辛くないよな)
実際、亜神になったあたりから睡眠欲や性欲はかなり減っている気がする。
アリスやユキみたいな美少女相手に何も感じ無いのもそのせいだろう。
いや、ロリコンじゃないから当たり前だけどね。
それに庇護欲はかなり感じているしね。
閑話休題
つまり俺が言いたいのは、徹夜してもなんとかなるよねって事だ。
『…………マスター、そんなに睡眠が大事なら私が代わりに見張りをしましょうか……?』
ち、違うから!睡眠なんて必要ないんだからねっ!
『…………』
すんません調子乗りました。睡眠まじ大事っす。
あと男のツンデレは需要ないですよね……
でも、ソフィアさんだけに負担は掛けたくないし……はっ!そうだ!
俺が一晩神器作って時間潰すから、その間ソフィアさんには雑談に付き合ってもらえないかな?
ソフィアさんには日本の知識もあるからちょっぴりマニアックな会話もできるからね。
ちょっぴりだよ、ほんとだよ?
『マスターの訳の分からない自己弁護は放っておいて、それでは一晩お付き合いしますね♪』
なんだかんだ俺には甘いソフィアさんである。
******
翌朝、最初に起きてきたのはユキだ。
「ふぁぁ〜、あれ〜パパ起きてたの〜??」
ただしめっちゃ子供っぽくなっていた。
なんかトロンとした瞳でこちらを見つめている。
「…………」
『…………』
俺も、ソフィアさんまでも惚けていた。
「……はっ!?お父さん、私今なにか言いましたか!?」
これは聞いてあげないのが優しさだろう。
「ナニモキイテナイヨー、ダイジョウブダヨー」
やべっ、棒読みになっちゃった!
「うわーーん!聞かれたんだーー!!」
ユキは涙声だった。慰めることは出来なかった。
ユキには、今度一緒にあそびにいくと言って、許してもらった。
許しが必要なのか、と考えそうになってしまったが、ユキが喜ぶなら何でもいいだろう。
その話をアリスにすると、
「む〜、アリスもお兄ちゃんとデートするの!」
「いや、デートじゃないんだけどね!?」
「きっと、ユキはデートだと思ってるの!」
いやー、さすがにそれはないでしょ。
父親と出かけるのはデートじゃないって。
「なんであなた達は、馬車の中でいちゃいちゃしてるんですか……」
ゲルドさんに呆れられてしまった。
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