異世界転移だ!
今日は一時退院の日だ。
朝家に帰って、昼からは学校に行く予定だ。
ベッドから出て、そして久しぶりに病院から出た。
「うわー、ひっさびさに外に出たなー。しかしなんでうちの親はなんで入院していた息子を歩いて帰らせるかねえ。いくら徒歩五分だといってもひどいよね」
そんな愚痴を言いながら家に向かっていると、
「おい、兄ちゃん!にげろーー!!」
「は?」
後ろからの声を聴いて振り向くと、ものすごいスピードでトラックが突っ込んできていた。そして俺の意識は途絶えた。
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「ん?ここはどこだ?あれ、トラックは?」
目が覚めると、真っ白い空間だった。何を言っているかわからないと思うが…いやいや、今考えるべきことはそんなことではないだろう。周囲を見渡してみると、何もない空間に一人の少女がいた。金色の髪をツインテールにした、碧眼の美少女だ。
「やっと目が覚めたの?じゃあこれから説明するから黙って聞いてなさいよ」
小娘がいけしゃあしゃあと何か言い始めた。
「誰が小娘よ!私は女神なのよ、もっとうやまいなさいよ!」
「うえ!?あれ、今俺声に出したか?確かに自称女神の痛い子がなんかしゃべってるなー、とは思ってたけど」
「自称ってなによ、自称って!私の女神パワーを持ってすればあんたの考えてることくらいお見通しなのよ!」
女神パワー(笑)。トラックにせっかく美少女に出会えたと思ったらまさかの電波か……
「はいはい、それで女神さまが俺なんかに何の用ですか?まさか異世界転移なんて言いませんよね?」
「あら、よくわかってるじゃない、さすがここに来ただけはあるわね。そのとうりよ、あなたにはこれから異世界に行ってもらうわ」
「ン?ナンダッテ?」
「最近、私の世界の人口がどんどん減ってきているのよ。だからそっちから人をもらおうと思ってね。けど、いきなりたくさん送るのもどうかと思ってまずは三人、そっちの世界の異世界に行きたいと思っていた人をランダムに送ることにしたのよ」
ん?俺別に異世界に行きたいなんて…あっ!昨日のあれか!うわ、下手なこと考えるんじゃなかったよ。
「それで、今から行ってもらうのはいわゆる剣と魔法のファンタジー世界ね。ステータスやスキルなんかもある世界よ。だけど、ただ送るだけだとすぐにおだぶつになるだろうから、特別に私から一つスキルをなんでも与えてあげるわ。まあ、チートってやつよ」
え?なんでも?じゃあ俺の長年の願いだったアレもかなうのか?
「じゃあ健康な体がほしい!」
「え、そんなのでいいの?もっとこう、強くなりたいー!とかハーレムを築きたいー!とかそういうのを求めてるんじゃないの?」
ははは、強くなっていったい何の意味があるんだよ、それにハーレムなんて実際にはそんな楽しいものじゃないだろ。第一、俺モテないし。
「そうよねー、そう考えるのが一番よね。気に入ったわ、あんたには全員に渡している『女神さまセレクト異世界用三種のスキル』のほかにも、私の加護を渡してあげるわ!」
「おお!ありがとうございます?」
「ええそうよ、感謝しなさい。これであんたの異世界生活もばっちりよ!じゃ、そろそろおくるわね、向こうについたら『ステータス』って言いなさい。それでステータスが見えるから」
そしてまた、俺の意識は途絶えた。
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目が覚めると森の中だった。おかしい、周りに人工物が全くないぞ。あの女神はいったいどんなところに送ったんだ…
まあ気にしても仕方がない、まずはあれだな、
『ステータス』
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名前:リョウガ・タナカ 17歳 人族
職業:なし 状態:正常
レベル:1 HP100 MP100
力15 防御10
敏捷10 魔力10
スキル 通常:なし
ユニーク:言語理解 アイテムボックス 魔法適正
EXユニーク:健康体
加護:女神の加護
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なるほど…うん、なるほどなんていうほど特殊なことはないね。
おそらくユニークスキルが女神の言っていた『三種のスキル』で、EXユニークが、俺がほしがったスキルなんだろう。
さて、次はもっと大切なことだ。この森からどうやって抜けるか。
「まあ、歩きまわるしかないわな。しゃあない適当に進んでくか。」
歩き続けること約一時間。ついに、ついに人がいそうなところを見つけた!
見た目は完全に小屋だが、割と綺麗で人がいるって言われても全く違和感のない家だ。
「すみませーん!どなたかいらしゃいますかー!」
すると、中から男性が出てきた。
「……何の用だ。」
「この森で遭難してしまいまして、今晩泊めていただけないものかと。」
すると男性は少し思案するような顔をして、
「……まあいい、泊まっていけ。」
「ありがとうございます!」
いきなり押し寄せて泊めてくれるなんてこの人はいい人に違いない!
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話を聞くと、この人はアレンさんといって、双子の兄弟のガレンさんと一緒にこの森で暮らしているそうだ。夕飯は、ガレンさんの狩ってきたイノシシの肉をいただいた。めちゃくちゃ美味いってわけではなかったけど、男料理って感じで割と美味かった。
「いやー、最初はどうなるかと思ったけど案外何とかなったな。これも女神さまの加護のおかげってやつかね。」
そう思いながら、俺は眠りについた。
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「ラッキーだったな、こんな臨時収入ができるなんてよ。」
「ああ、しかも珍しい黒髪黒眼の若い男だからな。結構いい値段になるんじゃねえか?」
「だろうな、ほんと、運が良かったぜ。」