魔道具屋さんに行こう!後編
ちょっとあとの話に問題ができたので、アリスのステータスを修正しました
最後にたどり着いた魔道具屋は『魔道具ヴィオラ』という店だった。
外観はボロボロで老舗的といいますか、廃墟寸前と言いますか……
これ大丈夫か……?
『マスターの世界ではこんな店の方が案外いい物があるんじゃないですか?』
こんな店って言っちゃってるよこの子……
「まっ、入ってみればわかるか!」
******
入ってみると中は意外にも……というと失礼だが、なかなかに綺麗だった。
そして驚く事に、
「い、いらっひゃいませ!!」
店員は、十五歳くらいの少女だった。
元来、魔道具職人になるには、並大抵ではない努力が必要だ。
だから、多くの魔道具職人は五十を超えている。
「へぇ、ずいぶん若い職人だな」
「わかるんですか!?」
「わかるよ、もちろん」
一見、ただの可憐な少女だが、手は職人のそれだ。
すげぇな、一体何歳の頃から魔道具を作ってんだよ……
「何か、オススメの魔道具はあるか?」
「はっ、はい!こちらですっ!!」
少女が指し示したのは、黒い石だった……
「なんだこりゃ……?」
ほんと何だこれ?真っ黒な石……なのか?
困った時は鑑定するに限るな!
『放魔石』・・・触れたものの持つ魔素を発散させ続ける石。この石に魔力を流すと、周囲の魔素を分解し石を介して魔力を流したものに返却する。
「なんじゃこりゃ……」
全く意味が分からない。魔力を循環させるのか?
「あのー……私が作った魔道具、どうでしたか?」
少女が怯えながら尋ねてくる。
「君、名前は?」
「ヴィオラです!ヴィオラ・イムルです!!」
「そうか、俺はリョーガ・タナカだ。今日はもう遅いし、明日また来るからそれまでこの石は置いておいてくれないか?」
「ふぁい!わかりました!」
緊張し過ぎじゃないか?
******
翌朝、俺はアリスと共に『魔道具ヴィオラ』を訪れた。
「ここにすごい魔道具があったの?」
「ああ、んでそれをアリスに使ってもらいたいんだよ」
「まかせるの!お兄ちゃんのためなら何でもするの!」
ああ、アリスはいい子だなぁ。でも、何でもは俺以外には言っちゃダメだよ?
――――ドンドン!
「はいっ!開いてますよ!!」
ノックをすると中から元気な声が帰ってきた。
「おはよう」
「おはようなの!」
「おはようございます!ってそちらは……?」
アリスは昨日は来てなかったからね。
「この子はアリス。俺の妹だよ」
「ああっ!妹さんでしたか!よろしくお願いしますね」
「うん!よろしくね!」
見るとヴィオラの頬が緩んでいる。
アリスのかわいさにやられたのだろう。
「さてと、早速だがあの石を貸してもらえないか」
「はい、これですね」
アリスを連れてきたのには理由がある。
もとより、魔力を扱うということに関しては、アリスは俺より上手なのだ。
そんなアリスならばこの意味のわからない石がどんな効果を及ぼすか理解できるかもしれないという事だ。
「じゃあ、この石に魔力を流してくれるか?」
「まかせてっ!」
そう言ってアリスが魔力を流し始めると周囲の魔素が活発になり始めた。
「おぉ!なるほど……これは使えるな!!」
おそらくこの石の力は自分と周囲の魔素の合成。
それによって自然に近い魔力使用が可能になるというものだろう。
「これスゴイの!まほうがかんたんに使えるの!」
ああ、そりゃ魔法の発動媒体としても優秀だよな。
となると問題は、何でこんなのが作れる人がこんな寂れた店をやっているのかだが……
ふふふ、今日の俺はカンが優れている。
おそらくヴィオラはここでは無い遠くの出身だが、そのあまりの才能に嫉妬され、このリベラで隠居生活を送っているのだろう。
俺は、ヴィオラの肩に手を置き、
「苦労してるんだな……」
と言った。
すると彼女は、きょとんとした後、
「分かってくれますか!そうなんですよ!誰も私が作ったものを買ってくれなくて……。本当に大変なんですよ!!」
訂正。カンが優れているなんて嘘。
あれが売れないのか……。魔法の発動媒体しとても優秀で、魔道具の材料にもなりそうな超素材なのに。
「よし、これ買うわ!」
「ホントですか!?有難うございます!!」
「あるだけ売ってくれ!」
「はい!」
うんうん、いい笑顔だね。
少し待っていると、ヴィオラは放魔石を袋に包んで持ってきてくれた。
「ありがとな。代金は?」
「合計で金貨二枚です」
「はいよ。金貨二枚ね」
そして店を出ようとしたとき、ふと思った。
『彼女なら加護をうまく使ってくれる』
そして俺は、ヴィオラに初めて加護を与えた。
『魔導機神の加護』・・・魔導具や機械を司る亜神の加護。魔導具が作成可能になる。
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