依頼を受けよう!
後半から視点が変わります
爽やかな朝。昨夜は帰るのがだいぶ遅くなったが、一応早めに起きる事はできたみたいだ。
「おはよう、アリス」
「ふにゅー。おはよーなのー」
アリスは朝に弱い。だがそれもかわいい。
俺達は服を着替えて宿の食堂に向かった。
「おはようございます。女将さん。」
「おはよー!」
「ああ、おはよう。朝食は必要かい?」
「お願いします」
朝食はパンとスープだった。なかなか美味かった。
******
俺達はギルドに向かった。
受付には今日も昨日の受付嬢さんが座っていた。受付嬢はこの人しかいないのだろうか?
「依頼を受けたいのですが、何かいいのはありませんか?」
「あっ、リョーガさん。…えっと、お二人はパーティーを組んでいるんですよね。なら、Fランク向け依頼のゴブリン討伐や、Gランク向け依頼の薬草採取なんかがオススメですね。まあお二人ならもっと難しい依頼でも大丈夫だと思いますけど……」
「いやいや、一応俺達はGランクですから」
本当はSSランク並みの力はあるけどね。
「今日はその二つの依頼を受けさせてもらいますね」
「了解しました。それでは、無事に帰ってきてくださいね」
美人さんにこんな事言われたら落ちる男は多いだろうな……
あっ、また名前を聞き忘れるところだった……
「受付嬢さん、名前を教えてくれませんか?」
「ふぇ!?それは一体……」
うん?どうしたんだろ
「いやー、いつまでも受付嬢さんじゃ分かりにくいかと思いまして」
「……あーはい。私はレナと言います。これからよろしくお願いしますね」
******
俺達は、街から出て近くの平原に来た。
「よしよし、じゃあまずはゴブリンと薬草を探すか」
「薬草はこっちにあるの!」
「おっ、ありがとなアリス」
アリスはエルフとしての感覚なのか、植物がどこにあるのかが大体でわかるらしい。すごいよね。
「薬草はこんなもんで大丈夫だな。後はゴブリンか」
「いっぱい取れたの!」
薬草は約三十本ほど採取することが出来た。依頼内容は薬草五本の採取だったので、これだけ取れば大丈夫だろう。
さて、ゴブリンだがこれはソフィアさんに頼めばいい。あの人ワーカホリックだから、嬉嬉としてやってくれるだろう。
『……不服です。人を変態みたいに言わないでくださいよ、マスター』
いや、だってどんな事頼んだって全く嫌がらずいとも簡単にこなすんだもん。
『当たり前です。私の存在意義はマスターのサポートなんですから』
じゃ、ゴブリンの捜索もお願いね!
『勿論です』
ソフィアさんの協力を得た俺達は、それから二十分程で十体のゴブリンを狩った。
依頼内容はゴブリン五体以上の討伐で、討伐証明部位である耳を持って行かなければならない。
なので、耳を切り取りゴブリンの死体自体はアリスに燃やしてもらった。
******
一通り仕事を終えて街に戻ると、まだ昼前だった。
正直あまり働くのは好きではないので、今日はここまでにして、後は宿に戻ってアリスと遊んだりアイテムを作ったりすることにした。
報酬金は銀貨十枚だった。
――――――――――
はじめまして。私は、レナ・ガリアと言います。
ギルドの受付嬢をしています。
最近、うちのギルドにとんでもない新人が来ました。
その新人はリョーガさんとアリスさんという方です。
彼らがギルドに来た時、ギルド内にいた冒険者の方々は一斉に、彼らに出て行くように言いました。
正直私も、どう見ても子供にしか見えない二人がここに来るのは時期尚早だと思ったので、何も言いませんでした。
すると、最初はただ面倒そうにしていたリョーガさんが、突然低い声でなにか呟きました。
怖かったです。今まで色々な冒険者を見てきましたがあれは格が違いました。自分に向けられたものでもないのに、「この人に逆らうと自分の命は無い」と思わせられました。
二人はギルドに登録しに来たという事だったので、まだ七歳だというアリスさんの試験のために『剛剣』のバロンさんを連れて来ました。
彼はこの町に一人しかいないSランクです。
そんなバロンさんと言い合っていたアリスさんを見て微笑ましく思っていたのですが、試験を初めて、自分が甘かったことに気付きました。
アリスさんは何も無いところから自分の身の丈ほどあろうかという程の巨大な筒を取り出しました。
おそらく『亜空間収納』でしょう。それだけでも驚きですが、アリスさんがその筒をバロンさんに向け何かを叫ぶと、その筒からさながら竜種のブレスの様な光が溢れだしました。
私はそれを呆然と眺める事しか出来ませんでした。
何も知らないバロンさんはお二人のうちで、アリスさんが強いのだと判断しました。
しかし私にはわかりました。
この二人の中で本当に強いのは、リョーガさんであると。
理由は分かりません。あの、絶対的な恐怖のせいかもしれないし、そうではないかも知れません。
そして、この二人が描くであろう物語に少しでも私という存在が入る事があればなんと喜ばしい事だろうか。そう思いました。
余談ですが、その翌日、彼らは薬草の採取とゴブリンの討伐を午前中だけで終わらせてしまいました。
あれは一日でどちらか一つを終わらせればいいものなのに……
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