5th 義理の姉
受付の目の前まで来たコウは何故か一歩下がったぐらいの所で止まった。
すると受付嬢のミカさんがそれに気付いて声をかけた。
ミカ「どうかされました?」
コウは下を向いて荒ぶる息を殺しながら答えた。
コウ「いや、あのーその…」
ミカは不思議そうにコウの顔を覗き込んだ。
コウもその視線に気付き顔を上げた。
ミカ「あっ!やっぱり!」
コウ「はい?なんですか?」
ミカ「ナガセコウさんですよね?」
コウは三度ぐらい瞬きをして驚きながらもかなり喜んだ。
コウ「俺の事知ってるんすか!?」
ミカはコウが余りにも喜んでいた事に少し引き気味に答えた。
ミカ「え…まぁ。旦那の弟がよく旦那に話していたみたいで。」
コウ「旦那ね…」
超喜んでいたコウは旦那って聞いてかなり落ち込んでまるで蚊の声の様な声で言った。
ミカ「はい?どうかされました?」
コウはまた、下を向いて黙ってしまった。
それを見かねたシュンはミカに質問をした。
シュン「旦那の弟とはどういう事でしょうか?」
ミカは突然話し掛けられ少し戸惑っている。
ミカ「えっ?あなたは?」
シュン「あーすいません。イシザキですイシザキシュンです。」
ミカ「あぁ!あなたが」
黙っていたコウが顔を上げた。
コウ「シュンの事も知ってるのよ。おい!シュン俺の邪魔をするな俺は今ミカさ…」
シュン「あなたは一体?」
コウ「だから人の話は最後まで聞けって!」
ミカ「私は遠藤美香です!タケル君の義理の姉です。」
「えっ!?」
2人は目を丸くして驚いた。
シュン「って事は」
ミカ「はい。タケル君のお兄さんのヤマト(遠藤大和)さんと婚約してます。」
コウは歯を食いしばって凄く悔しそうである。
コウ「ふざけんなよ。こんなきれいなお姉さんが居るなんて…タケルはなんて幸せ者なんだっ!」
シュンは「そこかよ!」ってツッコミを入れたいところだったが、敢えてスルーして話を続けた。
シュン「なるほど。そうでしたか。なら都合がいいです」
ミカ「都合がいいとはどういう事でしょう?」
コウ「実はタケルが行方不明らしいんですよ。だからまぁミカさんならなにか知ってるかと…」
するとミカは数秒黙って周囲を気にしながら小さな声で言った。
ミカ「タケル君と関係があるか分からないのですが、ちょっと気になる事があるんですよ。だけどここじゃ話しにくいのでまた場所を改めてお話しませんか?」
シュン「わかりました。」
シュンは携帯を取り出して、番号教えて貰えませんか?と言おうとしたら横からコウが乗り出してきた。
コウ「何番ですか?080?090?」
目をギラギラさせながら番号を聞き出しているコウに少し戸惑いながらもミカは番号を教えた。
コウ「うぉーあざっす!今ワン切りしたの俺です!コウくんって登録しといて下さい!」
この時のコウのテンションは完全に異常であった。
シュン「じゃあまた後で。」
シュンは軽く挨拶をして帰ろうとしたが、コウは一向に動こうとしない。
ミカ「はいわかりました。じゃあ後でコウさんに連絡しますね!」
コウ「コウさんじゃなくて、コウくんでいいですって!」
ミカ「ぁ…あ、はい。」
シュンはこのままだとらちがあかないと思い、無理やりコウを引っ張り出した。
コウ「おいっ。邪魔するなよー。もうちょいでコウくんって呼んでもらえるところだったのに。」
するとずっと待って居たのか入り口付近にユウイチが居た。
ユウイチ「お前ら遅いぞ。」
コウ「いやいや、負け犬は黙ってろ。」
突然の挑発にムッとしたがなにかあったのだと察した。
ユウイチ「お前まさかミカさんとなにかあったのか?」
シュン「なにもない。行くぞ」
シュンはくだらない争いをしてる二人に呆れながらも一人でスタスタと工場の門へと歩いて行った。
その間もコウはユウイチにずっと自慢し続けユウイチは素直にふてくされていた。
コウ「シュンちゃん待ってよー。一人で行くなよー」
3人は工場の外に出た。
ユウイチ「ところでさ、本当にさっきミカさんとなんの話してたのさ?」
コウ「だーかーらお食事の約束だってぇ」
ユウイチ「なにそれ本当?ねー本当?」
羨ましそうにシュンに視線を向けるユウイチだったがシュンは冷静に視線を外して話を変えた。
シュン「そんなことよりこの後はどうするんだコウ?なにもないなら帰るぞ俺は。」
惚気た態度だったコウの表情が一変した。
コウ「おっと本題を忘れるとこだったぜ。マルヤマの墓参りだったな。」
シュン「あぁ。そうだったか…」
ユウイチはなんの話かさっぱりわからないままどうしていいかわからずにいた。
コウ「じゃあ行くか。」
特になんの挨拶もなく二人は歩き出し、ユウイチは一人置いてかれた。
一瞬固まっていたユウイチだが、さすがに久々の再会でこれはないと思い追いかけた。
ユウイチ「おいおいお前ら待てよ。」
コウ「ん?」
少し息を荒立てているユウイチに対してコウは凄く興味無さそうに首だけ振り向いた。
シュンに至っては完全にスルー。
ユウイチ「お前ら久々の再会なのに冷たすぎないか?」
コウ「じゃあ着いて来れば?いいよなシュン。」
シュン「好きにすればいい。」
ユウイチの冷静なツッコミにも動じることなく二人は歩みを進めた。
ユウイチもこれ以上ツッコム事なく黙って着いて行った。
歩く事10分3人は地元の霊園に着いた。
霊園の一画のマルヤマの墓の前で静かに手を合わせて線香を上げた。
コウ「花とか買って来なかったけどいいよな?」
シュン「こういうのは気持ちが一番重要なんだよ」
コウ「だよな。マルヤマも今頃俺ら見て呆れて笑ってるだろうな。〈花ぐらい買ってきてくださいよ先輩〉とか言ってな。」
二人は小さく笑った。それはどこか懐かしさを感じたからだろう。
ユウイチ「マルヤマってあの一個下のだよね?」
コウ「お前はあんま面識無かったよな?」
ユウイチ「あぁ。いつ死んだんだ?」
コウ「四年前に他のチームに殺られた。俺もその時は居なかったんだがひどかったらしいぜ…。」




