タヌキとコウモリ
コウモリさんとタヌキくん
「コウモリさんは、夜の方が好き──?」
とある森の奥深く。
洞窟の近くの木に、逆さまで掴まっているコウモリにタヌキは訊いた。
「ん? そうだな、夜の方が好きとか、そういうのはないな。生まれつき、朝は苦手なんだ。だから、夜にしか活動出来ない──」
そう言ってコウモリはまん丸のお月様を羽で示すと、
「……太陽は、あんな感じなのか?」
とタヌキに訊ねる。
「うーん。太陽は、もっとピカピカーって、あったかいよ」
「そうなのか……」
「うん。コウモリさんは、太陽見たことないの?」
とタヌキはコウモリを見上げる。
コウモリは頷いて、
「いつも寝てるからな」
と答える。
それを聞いて、タヌキは何を思ったのか提案した。
「じゃあ、ボクが太陽を見せてあげるよ」
「できるのか?」
「任せて! でも、もう眠いから、今度ね」
「ああ。わかった──おやすみ」
コウモリは笑って、大きなあくびをしたタヌキに向かって言った。
*
それから日にちが経ち、また満月の夜。
コウモリはいつものように、枝に掴まっていた。
「……いないな」
この頃、タヌキの姿を見ていなかった。
「どうしたんだろう……」
風邪でも引いたのだろうか、とコウモリが考えていると、カサカサと草の陰から音がした。
そこを集中して見ていると、タネキが出てきた。
「ピカピカー! コウモリさんお待たせ! 遅くなったけど、これが太陽だよ!」
タネキは花と葉っぱを編んで作った輪っかを顔にはめて、ピカピカーと言いながらくるくる回って見せた。
「えっと……、タヌキ?」
とコウモリが少し考えてから呼ぶと、タヌキは回るのを止めて、しゅんとなって言った。
「……ごめん、コウモリさん。太陽見せるって言ったのに、全然ダメだった……。葉っぱに描いてみたり、太陽を作ってみようとして、木の実とか色々集めてみたんだけど、どれもダメだった……ごめん──」
「……それでそうなったのか」
「うん……」
とタヌキは尻尾を持ってしょんぼりする。
そんなタヌキを見ると、コウモリは申し訳なくなってくる。
「……タヌキ──」
「うん……」
「太陽って言うのは、ピカピカ光ってるんだろ? ならそんな暗い顔するなよ。お前が今、太陽なんだろ? それに、こっち来てみろ」
とコウモリは羽でタヌキを手招く。
タヌキはコウモリに向かって行き、首を傾げる。
「……なに?」
「こうやって見れば──」
ちょうど立たせた所は、お月様からの光がタヌキを照らすにはちょうどよかった。
顔にはめた花と葉っぱの輪っかが、ピカピカと光って見える。
「ピカピカしてる」
「ほんと?」
「あぁ──太陽も、こんな感じなのか?」
「うん! 本当はもっとピカピカーってしてるけど、こんな感じなんだよ!」
とタヌキはにっこり笑って言った。
「そうか──」
コウモリはピカピカ光る花と葉っぱの輪っかと、笑顔のタヌキを見て、見たことはないが、太陽とはこんな感じなのだなと思うのだった──
こんなやりとりをしていたら、微笑ましいと思います。
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