飛べるきがする。
表現力とか燃やすゴミだろ?
昨年、肺気胸を患った先輩は
入院中に、留年して僕と同学年になり同じクラスになると宣言した。
新学期、先輩に運があったのか無かったのか、宣言通り見事僕と同学年になり、同じクラスになってみせた。
四月半ばの澄んだまま青に溶ける空の下、今日も先輩と屋上で昼休みを過ごしている。
「ねぇ、真琴君。」
「なんですか?先輩」
「空はどうして青いのかな?
あ、今日の俺のパンツは青じゃないよ」
今日も今日とて先輩はいい感じにぶっとんでいる。
何が転落することを想定して作ったのか、疑問を持たずにはいられない転落防止の柵に肘をつき、今にも剥がれそうな塗装を爪の伸びた指で遊びながら記憶をほじくり返して答える。
「空中のゴミと太陽の光がぶつかるからでしょ?
これ中学で習う範囲ですよ」
「んーんんん?」
フルーツサンドをほうばりながら適当に相づちを打つ先輩。リスみたいで可愛い。
「興味ないなら聞かないでくださいよ、あと口にクリームついてますよ。」
「あ、ほんとだー
じゃあどうやって鳥は飛べるようになったと思う?」
小さな口の端に付着するクリームを細く白い指ですくい、僕の口にぶっさし、舐めとるように無言で物理的な指示をする。甘い。
「・・・気合いですか?」
「ちがうよー鳥はね、信じてたんだよ、自分は飛べるって。
そしたらね、飛べるようになったの。
信じるものは救われるってやつ」
「そんなチンケな理由で飛べるようになったら人間は飛行機なんか開発してませんよ。」
「チンケかーそうだねー、君は生身で空を飛びたいとは思わないの?」
「僕は今の人間の性能には満足してます。」
「にゃるほど、それは今晩のお誘いと見た」
この人は、ほんとに突拍子のないことを言い出す。こういうところ嫌いじゃない。が、
「今晩はバイトなので」
「やーんつれないなぁ」
「で、どうして鳥は飛べるようになったんですか?」
「よくぞ聞いてくださった」
フルーツサンドを完食し終わり食後のコーヒー牛乳150mlを平らげた先輩は得意げな顔でコホンと咳払いをし、続けた。
「鳥類はね、人間が生まれる前はトカゲだったって言うじゃない。
そのトカゲのなかのある一匹は、自分は空を飛べるって思い込んでたの。
そしてある日、木から空に羽ばたこうとしたの。
もちろん、飛べずに死んじゃうんだ。でも、その思い込みは遺伝子にも組み込まれてて、そのトカゲの子孫はみんな自分は飛べるって信じて木から飛び降りて死んだの。
そんな惨事を繰り返し続けたそのトカゲの一族はね、数え切れないほどの犠牲を代償に数百万年かけてやっと飛べるようになったの。
どう?トカゲ一族の一世一代のチャレンジ物語は。真琴君からしたらチンケなお話?」
「いえ、全僕が涙しました。」
久しぶりに先輩からの嫌味を頂戴して、全身に鳥肌が侵食し、危うく鳥になりかけた僕は骨髄反射に身を任せて返事をしてみる。
「何かもの言いたげだね」
普段からのにやけ面をさらににやつかせながら、食後のウォーキングを兼ねてか 、屋上唯一の屋根に付属された扉付近に作成された日陰まで歩を進めながら、更なる感想を僕に求める。
「最終的に飛べたことを歓喜し涙するか、犠牲が多すぎたと嘆き涙するか、は人それぞれだと思います。」
「俺は君の意見を聞いてるんだよ、
君は犠牲を覚悟して自分の願望を叶えることに賛成?反対?」
「・・・賛成です。
何かを成し遂げるための犠牲は付き物ですから。ただ、その犠牲が大きなすぎるのはどうかと思いますが」
「うん、真琴君らしい答えだね」
先輩はそういうと眉をひそめて微笑みながらケホケホと咳をした。
僕にはその笑顔がとてもさみしげに見えた。
購読ありがとうございました。
購読って使い方あってんのかな?
とりあえず最後まで読んでくれてありがとうございました。
さぞ読み苦しかったでしょう
だって3年ぶりぐらいに小説書いたんだもん
私は、かなり馬鹿なので、空が青い理由とか鳥が飛べるまでの経緯とかはデタラメです。記憶の片隅でホコリ被ってたので信憑性ゼロです。
今後のために治すべき点とかの指摘ください!
あと、色々向上のためのコメント←
続き書くか書かないか迷ってるんすよ
おなしゃす
だって3年ぶりぐらいに小説書いたんだもん