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 仮面舞踏会。

 なにやら怪しげな雰囲気の宴だ。

 これは、おれにとってここが敵の館であるからそう見えるんだろうか?

 いや、そうではないだろう。

 誰も彼もがみな仮面を被り、踊り狂う。

 全てが仮面に隠されているのだから、その中に魔物が混じっていないとどうして言い切れるのだ?

 一緒に来たベンヴォーリオとマーキューシオの姿はもうない。

 おれがこの怪しい雰囲気に呑まれまいとしているうちに、奴らはさっさと呑み込まれてしまったらしい。

 おや、あれはロザライン嬢だ。

 どうしよう、声でもかけようか。

 そう思っていたおれの目の前を、一人の少女が通り過ぎた。

 おや、と思った。

 おそらく、社交界に出たばかりの若い娘だろう。白いドレスの裾はやや短く、うっかりすると幼く見えかねないようなものだ。

 だが、若い娘など、この宴の中にそれこそ掃いて捨てるほどいる。

 それなのに何故か、その少女は目に付いた。

 まるで彼女の周囲だけ、特別な光でも当たっているかのように。

 不思議に思って目で追っていると、彼女は壁の方でそっと仮面を外す所だった。

 その素顔を見て、ぎょっとした。

 稀に見るほどに、美しい娘だった。年の頃は十五か、十六といったところだろうか。髪は少し珍しい赤銅色で、丸い瞳は明るい若草色。柔らかそうな唇に、真っ白な頬。今はまだ蕾のような少女だが、あと二年、いや一年もしないうちにきっと艶やかな貴婦人になるに違いない。あどけない美貌に、そう思わせるだけの気品と華やかさを湛えていた。

 いったい、どこの令嬢だろう。

 もちろんどこの家の令嬢だって、おれにとっては敵方ということに変わりはないが、しかし興味を惹かれる少女だった。

 まだ恋を知らぬげな彼女に、恋を仕掛けてみるのも一興ってものかもしれない。

 見つかればただでは済まないだろうが、それはロザライン嬢だって同じこと。

 それなら、ロザライン嬢ではなく、あの少女に仕掛けてみようか。

 ああ、でも、ああいう年頃の女の子は夢を見ている可能性があるな。

 恋に恋するお年頃、って奴だ。

 そんな少女だったら、手を出すのは考えものだ。

 おれは遊び、向こうは本気、だなんて縁起でもない。

 さて、それにしても、どうしたものだろう。

 このまま放っておくには、いささか印象が強すぎるんだが。

 そう逡巡しているおれの視線の先で、彼女に声をかけている男がいる。あれは……パリスか。

 何を楽しみに生きているのか分からんような男だが、それでも娘たちには人気らしい。芸術を解さないような男のどこが良いのか、おれには全く解らないが。

 少し、様子を見ていようか。

 パリスに対する反応で、彼女がどんな人間か、少しは分かる筈だろうから。

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