薄暗い月
PM11時の帰り道
通り過ぎる車のライト
不機嫌に浮かぶ赤信号
夜のないコンビニ
今夜は西の空に流星群が
幾筋もの感動の軌跡を描いているはず
見上げた空はぼんやりと明るく
その向こうには闇しかなかった
寂しさを忘れようとして
迷い込んだ光の中には
いつだって均一な風景と
無機質な快適さが待っていた
ぬるい空気が頬をなぞって
疲れ果てて歩く帰り道
今私を照らしているのは
薄暗くなった月
闇に沈む静寂の部屋
リズム打つ水滴
休まない換気扇
全身に響きだす鼓動
田舎の畦道を思い出す
カエルの鳴き声と蛍の灯
見上げた空に浮かぶ星は
明日を照らす光だった
不安から逃れようとして
作り出した灯りの輝き
何を照らすのかを忘れて
ただ無表情で見つめてる
灯りから逃れようとして
見渡した周りを見て気づく
今私がいるこの場所に
逃げ場などないことに
悲しみを優しく包む暗闇
命を燃やす星の瞬き
微かに薫る夕立の跡
引き換えに私は何を得たの
悲しみを見つめたくなくて
灯した光がいつの間にか
新しい悲しみを
心の中に照らし出してた
でも私はここにいる
でも私は逃げ出さない
今私を支えているのは
冷たい夢と暖かい思い出