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RTAシリーズ

【バグ発生】異世界転生・スローライフRTA 〜連打スキップしたら女神界がサ終してたらしく、ガミさんがミニガンをぶっ放して俺のピンチを救ってくれた話 ※プロモーションは含まれておりません〜

掲載日:2026/05/02


【スローライフ】


効率やスピードを優先する現代社会に対し、

時間やタスクに追われず、精神的に豊かで心地よいペースで生活を楽しむスタイルのこと――。

 

 ※初日


「……さぁ、というわけで。ここはどこなんでしょうか、ガミさん?」


 その日、鬼籍に入ったスローライフ太郎。

 転生して極限まで個性を削った彼の目の前には、

 荒れ果てた田畑と、崩れかけの山小屋だけがあった。


「……」


 太郎の肩に浮かぶ、ガミさんと呼ばれた光る玉は何も語らなかった。


「あの~……ゴメン、ね?」


 本来であれば、ガミさんは太郎にスキルを分け与えてくれるはずの女神様だった。


「……」


 敗因は、太郎が現代日本人であることだった。


 転生のナビゲーションをしてくれている女神様を前にした太郎は、

 プレステであれば×、スイッチであればA、

 XboxであればスイッチでいうBの位置にあるA。

 いわゆる「決定ボタン」を連打。


 その結果、テストプレイの甘かった女神界は見事にバグり、太郎はスキルなしで異世界に転生。

 おまけに女神様までが転生していた。


「……」


 新たに生を受けたガミさんは、光り輝いていた。

 しかし、中身は女である。

 女がそんな簡単に太郎を許すわけもなく、二人の新たな人生はマイナスからのスタートとなった。


「さぁ、現世こそバリバリ働くぞぉ!!」


 前世では、あまり働かなかった太郎は、

 名前を元気太郎にしておけばよかったと悔やむほど、

 元気だけが取り柄だった。


「異世界転生・スローライフ、リアルタイムアタック!! スタートだぜっ!!」


 賢さが低いのは、ご愛敬。


「あらら……雨降ってきちゃった」


 いきなりの雨にも見舞われて、異世界転生・スローライフの初日は散々だった。



 ※


「うおぉぉぉ!!」


 雨であっても、太郎の元気は消えず。


 小屋の中に入った太郎は、

 ガミさんが濡れないよう社を建てるため、

 宣言通りバリバリと。

 二つの意味でバリバリと。

 そこいらじゅうの廃材を素手で剥がし始めていた。


 こうなると、気になるのはガミさんの好感度ポイントです。


「……」


 ダメみたいですね……おや?


 ――コトン。


 太郎の足元に手ノコが落ちた音でした。


 そう。本当は優しい、ガミさんからの施しです。


 こうなると、気になるのは太郎のリアクションですね?


「うおぉぉぉ!!」


 ダメみたいですね。


「うおぉぉぉ!!」


 全然気づかない。

 マジで、ダメです。


「……」


 こういう、めんどくさい女の優しさは

 男側が全神経を集中してもなお、拾えないのはわかっている。

 わかっているけど、そこをなんとかうまくやらないと主人公にはなれないのです。


「うおぉぉぉ!!」


 私情が挟まりましたが、

 互いにズレた優しさが交錯するのは、いつになるやら。

 私も固唾を飲んで、見守りたいと思います。


「うぉぉ……お? これって、ガミさん?」

「……」


 廃材を集め終えた太郎が、ようやく手ノコの存在に気がつきました。


「ありがとう、ガミさん!」

「……」


 おかげで、小さいけれど立派な社が建てられました。


「いいじゃん! はい、お賽銭」

「……」


 まあ、初日はこんなものでいいでしょう。



 ※二日目


「風邪をひいたね」


 翌朝、太郎を襲ったのは体調不良でした。

 ガミさんの社を建てたものの、自分の寝床は満足に確保できなかったことが災いしました。


「……」


 しかし、寝てばかりもいられない。

 太郎は、リアルタイムアタックがしたいのですから。


「おっしゃ、汗かくかぁ。まずはこの地を耕して」


 お母さんから受けた知恵が悪さをしました。

 民間療法で風邪は治りません。


 こんな時、ポカリスウェットのひとつでもあれば……おやおや?


 ――チャリン、ピッ、コークオン♪ ガコン。


 太郎の枕元で、日本コカ・コーラ株式会社の自販機が音を立てました。

 中から出てきたのは、そう。

 ガミさんが昨日のお賽銭をはたいて買った、アクエリアスでした。


「美味しそうだねぇ。よかったねぇ、ガミさん?」


 はい、だめー。


 察しの悪い太郎の態度に、ガミさんは赤面ならぬ発火。

 その火は周りの木材に燃え移り、みるみるうちに小屋が火の海に包まれました。


「あぶなぁぁい!!」


 元気だけが取り柄の太郎はガミさんとアクエリアスを抱え、

 全身に火傷(やけど)を負いながら、両方を守り切って小屋からの脱出に成功。


 外に出た太郎は大の字に倒れました。


「ごほっ、ごふっ……はぁ……はぁ……」


 風邪に火傷に、家まで失って。

 太郎はボロボロでした。


「…………」


 ガミさんはビカビカでした。


「グヘヘヘヘ……」


 泣きっ面に蜂とはこのこと。

 二人の前に現れたのは、サイコゴブリンの群れです。


「ごほっ、ごほっ……やべぇ……ガミさんだけでも、逃げろぉい……」


 太郎には、胸に抱えたガミさんを宙へと放つ力しか残されていませんでした。


「死んだら、もう一回、転生させてね……今度は、連打しないから……」

「…………」


 ガミさんは考えました。

  (お前の連打のせいで、女神界はサ終してるんですけど。だからもう転生は……まったく、バカなんだから――)


「うぅっ!?」


 世界が光に包まれました。

 あまりの眩しさに、太郎は目を瞑りました。


 太郎が再び目を開くと、そこには……。


「ガ、ガミさん!?」


 M134 7.62mm多銃身機銃。

 通称、ミニガンを抱え込んだ美女の姿がありました。


 ……ダダダダダダダ!!!


 毎分2,000〜6,000発の殺戮兵器は、爆音と共にゴブ畜生どもをジェノサイド。


 せっかくサイコゴブリンとかいう、格上そうなモンスターを登場させたのに、

 近代兵器でもない重火器が大活躍してしまいました。


「……」


 仕事を終えたガミさんは、長い髪をかき上げると、

 太郎の持っていたアクエリを奪い取りました。


「ガミさん……だよね?」


 ガミさんは何も答えず、アクエリを一口飲みました。

 そのあと、彼女は笑いながらボトルを逆さにして、太郎の口の中にアクエリを注ぎ入れました。


「ぬわーーっっ!!」


 世界は理不尽に溢れています。

 ガミさんのアクエリは太郎の風邪と火傷を、あっという間に治してしまったのです。



 ※?日目


「農機も重機も、やっぱりヤンマーがいいかな? ガミさんはどう思う?」


 立派でもなく、広くもない丸太小屋の中で、

 太郎は楽しそうに、旧ヤンマーディーゼルのカタログをめくっていました。

 彼のすぐそばにいたのは、もちろんガミさんです。


「……」


 あれから、ガミさんのイライラは毎日のように続きました。


 洗濯物の下着は毎っ回、裏っ返し。

 枝豆を食べようとして、逆から出して溢す。

 冷蔵庫にケチャップをちゃんと戻さない。マヨネーズは戻せるのに。


 要らないって言っているのに、甘いものばかり買って帰ってくるし。


 もう本当に、何なんだ、コイツは。


「……」


 太郎が無駄に買ってきた、沖縄の甘いアイス。

 ガミさんは今日も、溜め息をつきながら、太郎とアイスを半分こ。


 どうやら二人は、これから先も無駄に時間を過ごすことになりそうです。


 しかし、どうしてでしょう。


「このアイスのウベって何なんだろうね? でも、美味しいね?」

「……」


 太郎の横に座るガミさんの顔は、なぜだかとても楽しそうに見えました。

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