表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エロゲ世界の悪役公爵子息に転生したけど、聖女を救うと世界が滅ぶらしい  作者: 海鳴雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/73

第66話 三者対峙

 森は静まり返っていた。


 だが、静寂は均衡ではない。

 圧が、三方向からぶつかり合っている。


 制圧班の結界が、半円を描いて迫る。

 無駄のない展開。逃走経路を削る配置。


 その内側に、レオナール。

 さらに少し離れた位置に、黒装束の女。


 距離は近い。

 だが、並んではいない。


「レオナール・フォン・グラントヴァル」


 制圧班の声が響く。


「独自処理は構造崩壊の危険を孕む。

 管理下に戻れ」


 秩序の声だった。


 歪みは制御対象。

 勝手な沈静は、全体の均衡を崩す。


 女がわずかに口を開く。


「管理は停滞を生む。

 遅い判断は損失を拡大させる」


 合理の声。


 世界は資源。

 回収し、切り分け、使える形で残す。


 レオナールは、二人の言葉を受け止める。


 胸の奥が、鈍く脈打つ。


「止めないと壊れる」


 短い。


 だが、それが全てだった。


 理屈ではない。

 選択だ。


「管理下に戻れば、負荷は分散できる」


「あなたは壊れるわ」


 制圧班と女の言葉が、同時に重なる。


 事実だ。


 レオナールは自覚している。


 固定歪みは、限界に近い。


 ――あと二回。


 沈めれば、二回。


 それ以上は、持たない。


 視界の端がわずかに滲む。


 制圧班の結界が一段強まる。


 圧が膝に乗る。


 レオナールの身体が、わずかに沈む。


 その瞬間、外周の圧が乱れた。


 女が干渉した。


 完全な援護ではない。


 だが、拘束の精度を落とすには十分。


「決めなさい」


 女が言う。


「管理されるか。

 利用されるか」


 制圧班の結界が収束する。


「従わない場合、拘束する」


 三つの正しさが、同時に押し寄せる。


 レオナールは、息を整えた。


「俺は止める」


 それだけだ。


 正義でも、合理でもない。


「あと二回だ」


 誰に向けた言葉でもない。


 だが、女は理解した。


「……愚かね」


 否定ではない。


 評価だ。


 次の瞬間、女が結界の縁を鋭く切り裂く。


 制圧班の陣形が一瞬だけ崩れる。


 レオナールはその隙を突き、森の奥へ跳ぶ。


 追跡圏が再展開される。


 女は逆方向へ離脱。


 制圧班は再編成に入る。


 森に残ったのは、重い空気だけ。


 正しさは三つあった。


 だが。


 レオナールの道は、一つしかなかった。


 そして、その先に残された回数は――


 あと、二回。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ