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エロゲ世界の悪役公爵子息に転生したけど、聖女を救うと世界が滅ぶらしい  作者: 海鳴雫


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第55話 再臨界

 ノックは、控えめだった。


「レオナール・フォン・グラントヴァル。

 少し時間をもらえるか」


 教員の声は、穏やかだ。


 だが、その穏やかさが、逆に重い。


 レオナールは、ゆっくりと立ち上がった。


「分かりました」


 教室の空気が、わずかに動く。


 エリシアと、視線が合った。


 言葉は、いらない。


 廊下に出る。


 左右に、教員が一人ずつ。


 護送ではない。

 だが、同行だ。


 面談室へ向かう途中。


 胸の奥が――

 爆ぜた。


「……っ」


 息が詰まる。


 足が、一瞬止まる。


「どうした?」


「……少し、めまいが」


 誤魔化す。


 遠隔観測。


 意識を、外へ。


 像が、歪んでいる。


 北西。

 前回より、さらに広い。


 内部圧、限界突破寸前。


 今にも、噴き出す。


 抑えれば爆発する。

 封じれば連鎖する。


 沈められるのは――

 自分だけ。


 条件①。

 被害拡大の兆候。


 成立。


 条件②。

 英雄は、まだ戻らない。


 成立。


 条件③。

 自分以外では止められない。


 成立。


 選択肢は、ない。


 再び、エリシアを見る。


 彼女は、何も聞かない。


 ただ、頷いた。


 面談室前。


 扉の前で、教員の一人が言う。


「少し話を――」


 言葉の途中で。


 レオナールは、結界札を指で弾いた。


 視認阻害。

 気配遮断。


 同時に、一歩、後退。


 次の瞬間。


「……?」


 教員の視界から、

 レオナールの姿が消えた。


「レオナール!?」


 廊下が、ざわつく。


 だが、もう遅い。


 レオナールは、抜け道へ向かっていた。


 物資搬入口。

 点検通路。

 外壁沿い。


 迷わない。


 冷たい夜気。


 学園の外。


 ――出た。


 背後で、警報が鳴り始める。


「生徒が一名、行方不明!」


「管理対象だ!」


 包囲網が、破れた。


 疑いは、もはや疑いではない。


 レオナールは、走る。


 北西へ。


 胸の奥が、焼ける。


 だが、止まらない。


 彼は、

 呼び出される前に、

 もうそこにはいなかった。


 そして――

 沈めに行く。

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