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エロゲ世界の悪役公爵子息に転生したけど、聖女を救うと世界が滅ぶらしい  作者: 海鳴雫


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第45話 破る理由

 負傷者の容体は、安定している。


 その報告が、学園内に回ったのは翌朝だった。


 命に別状はない。

 治療を受け、数日で復帰できる見込み。


 それでも、空気は軽くならなかった。


 誰も口にはしないが、分かっている。


 防げたかもしれない。


 教員会議は長引いた。


「次に同様の兆候が出た場合、初動部隊を増やす」


「管理対象生徒の行動制限を強化する」


「単独行動は禁止」


 結論は、より厳しい管理だった。


 レオナール・フォン・グラントヴァルは、その決定を静かに聞いていた。


 反論はしない。

 反論しても、通らない。


 理屈としては正しい。


 だが――

 正しさと、最適解は違う。


 部屋に戻ったレオナールは、椅子に腰を下ろし、天井を見上げた。


 前に見た光景が、何度も脳裏に浮かぶ。


 胸の奥が反応した瞬間。

 嫌な予感。

 そして、現実になった被害。


 行けていれば、止められた。


 それは、思い込みではない。


 確信だ。


「……守られる構造は」


 小さく呟く。


「守れない現実を作る」


 管理は、安全のためのものだ。

 だが、自分の場合は違う。


 自分は“観測できる側”だ。


 兆候を、誰よりも早く察知できる。


 それなのに、動けない。


 それは、安全ではない。


 機会損失だ。


 頭の中で、整理する。


 衝動で動くつもりはない。

 無秩序に規則を破る気もない。


 破るとすれば、条件が必要だ。


 一つ。

 被害拡大の兆候があること。


 二つ。

 英雄が対応できない状況であること。


 三つ。

自分が最適解だと判断できること。


 この三つが揃った時だけ。


 それ以外では、動かない。


 ルールを壊すのではない。

 作り直す。


 放課後、エリシアを呼び止めた。


 人目の少ない回廊。


 彼女は、すでに表情で察している。


「……考えた?」


「考えた」


 レオナールは、先ほど整理した条件を、そのまま伝えた。


 エリシアは、黙って聞く。


 途中で口を挟まない。


 最後まで聞いた後、静かに言う。


「反対」


 即答だった。


「危険すぎる」


「分かってる」


 レオナールは否定しない。


「でも、動けないままの方が、危険だ」


 エリシアは、唇を噛む。


「それでも……勝手に消えるのは、嫌」


 レオナールは、少し考えてから言った。


「無断では動かない」


 エリシアが顔を上げる。


「条件が揃った時は、伝える。

 止めてもいい。

 でも……止められなかったら、行く」


 エリシアは、しばらく黙っていた。


 やがて、小さく頷く。


「……必ず戻って」


「約束する」


 取り決めは、更新された。


 守る形が、変わった。


 その夜。


 レオナールは、机の引き出しを開ける。


 小さな道具。

 簡易結界札。

 位置把握用の結晶片。


 目立たないものばかり。


 準備は、派手にしない。


 静かに。


 抜け道の確認。

 巡回の時間。

 監視の癖。


 覚えるだけ。


 まだ、動かない。


 だが、動く未来を前提にする。


 破ると決めたのではない。


 破らざるを得ない未来を、

 受け入れただけだ。


 それが、

 レオナール・フォン・グラントヴァルの選択だった。

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