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エロゲ世界の悪役公爵子息に転生したけど、聖女を救うと世界が滅ぶらしい  作者: 海鳴雫


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第4話 断罪される悪役

 異変は、学園全体に広がるほどのものではなかった。


 だが、確実に“気づく者”は増えていた。


「最近、体調を崩す生徒が多くないか?」


「魔力測定の数値が安定しない者がいるらしい」


 教師たちの会話が、廊下の端で交わされる。


 原因不明。

 偶然。

 疲労の蓄積。


 そう結論づけられようとしている空気の中で、俺だけが分かっていた。


 偶然じゃない。

 全部、繋がっている。


 そして――その中心にいるのが、誰かも。


 次の授業は実技だった。


 模擬戦形式で、複数人が魔法を使い合う。

 原作でも、聖女が目立つイベントのひとつだ。


 案の定、事故が起きた。


 制御を誤った生徒が、魔力を暴走させる。

 炎が走り、悲鳴が上がる。


「下がって!」


 リリアが駆け出した。


 迷いのない動き。

 それが、余計に周囲の期待を煽る。


 癒しの光が広がり、炎は消えた。

 負傷者は救われ、歓声が上がる。


 ――だが。


「止めろ」


 俺は、はっきりと声を上げた。


 リリアの動きが止まる。

 教師たちも、周囲の生徒も、俺を見る。


「これ以上、彼女に癒しを使わせるな」


 静まり返る実技場。


「グラントヴァル公爵子息、何を言っている」


 教師の声は、明らかに苛立っていた。


「彼女は正しい行動をした。負傷者を救っただけだ」


「正しいかどうかは、今じゃない」


「今でなくて、いつだ!」


 声が荒くなる。


 勇者が、一歩前に出た。


「君は何がしたいんだ」


 真っ直ぐな目。

 疑いではなく、怒り。


「人が傷ついているのに、助けるなと言うのか」


 周囲の視線が、完全に俺を敵として捉えた。


 それでいい。


「助けるなとは言っていない」


 ゆっくりと言葉を選ぶ。


「無限に助けられると思うな、と言っている」


 ざわめきが広がる。


「彼女は聖女だぞ」


「使命を果たしているだけだ」


「公爵家だからって、言い過ぎだ」


 聞き慣れた反発。

 想定通りだ。


 リリアが、俺を見つめていた。


「……私が、間違っていると?」


 静かな問いだった。


 責めるでも、怒るでもない。

 ただ、確認するような声。


 俺は、視線を逸らさなかった。


「君は間違っていない」


 一瞬、周囲が戸惑う。


「だからこそ、止まれない。それが問題だ」


 リリアは、目を伏せた。


「私は……選ばれた存在です」


 その言葉に、空気が固まる。


「この力を使わない方が、間違いです」


 誰かが、頷いた。

 誰かが、拍手しかけた。


 その瞬間だった。


「――もう十分だ」


 別の教師が、前に出る。


「グラントヴァル公爵子息。あなたの発言は、学園の秩序を乱している」


 予想していた流れだ。


「聖女の活動を妨害し、混乱を招いた」


「俺は事実を――」


「事実かどうかは、我々が判断する」


 遮られる。


「あなたは権力を背景に、特定の生徒を萎縮させた」


 その言葉で、完全に空気が決まった。


 断罪。


 まだ正式ではないが、立場は明確だ。


 悪役は、俺。


 リリアは、何か言いかけて、結局黙った。


 それでいい。


 彼女に庇わせるわけにはいかない。


 実技は中断され、俺は別室へと呼び出された。


 重い扉が閉まる音が、やけに大きく響く。


 椅子に座り、天井を見上げる。


 ……順調だ。


 嫌われ、誤解され、排除され始めている。


 これでいい。


 これが、この世界での俺の役割だ。


 誰かが、聖女を信じるなら。


 誰かが、勇者を称えるなら。


 その裏で、俺が全部を引き受ける。


 理解されなくても。

 正義でなくても。


 悪役でいることが、正解なら。


 俺は、それを選び続ける。


 それだけだ。


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